「ゲノムで解き明かす人類史」別冊日経サイエンス 2024年6月24日発行

人間という生き物はどのように生まれ、社会を作り、技術をつくり、また自ら自身を考えてきたのか?
 「ゲノムで解き明かす人類史」をざっと読んだ。
 日本人の起源について大陸からわたってきた人が朝鮮半島経由とカラフト経由が考えられるが、遺伝子解析が進み、韓国や台湾の人々と縄文人の配列が似ていたり北方のウルチ族の遺伝子が流入している、一度きりでなく各時代での流入があるようで複雑ですっきりしない。
 日本は吹き溜まりのようなところで流入で議論されている。大陸の海岸線部の人々と遺伝子が似ている例もあるらしい。縄文時代も弥生時代も詳しい分析があるので興味ある方は是非。このようなデータを見て大陸の人々を下に見るような風潮も無くなってほしい。
 →天皇家や藤原家の末裔の方の遺伝子を調べたらはっきりするのでしょうか。調べることは絶対なく、たとえ調べても宮内庁的には公表は絶対しないだろうし、ここは天皇家の皆さんも生物研究している人多いのでぜひご自分で研究いただいて論文までまとめていただければ興味深いと思うのですがいかがでしょうか。悪趣味ですね。
 古墳に眠る人々の血縁関係も調べられ父に母のことなる娘二人が同時に埋葬されていた。このことは妻は実家に戻され葬られていたのだろうとも。これは平安時代までも行われていた。
 デニソワ人はいまだに小さな骨しか見つかっておらず骨格は今でも不明とのこと。
 アメリカへの人類拡散の旅は興味深い。今回の報告で目を引いたタイトルは1492年以前に南北アメリカの先住民はヨーロッパ人、アフリカ人と交流はなかったらしい。時折バイキングが10世紀頃から交流があるようなことが話題になるが古いゲノムによる証拠は見つかっていないようだ。
 衝撃的なことは先史ヨーロッパにおいて中東から移動してきた農耕の人々が、狩猟採集の現地人を征服し同化でなく奴隷化していることである。埋葬された墓の人骨の遺伝子調査で分かったことだ。ちゃんと埋葬された人々は農耕で中東から移動してきた人々で埋葬時に墓に投げ込まれたような無理なポーズで埋められていた人は現地人らしいとのこと。狩猟採集民族は農耕民族に征服・隷従・吸収され確かにいなくなったわけですね。もちろん狩猟採集民族を奴隷として扱い彼らの技術を吸収したらしい。まるで今日起きていることみたいでもある。
 ペストとローマの興亡を論じたもの。西暦541年のコンスタンティノープルのユスティニアヌス帝の頃の話。だが調べると5000年ほど前からペストによるパンデミックは度々起こっていたらしい。他の病原菌についても紹介されている。

 このような実証的な記事にはレヴィ=ストロースなどの引用は意外と出てこない。レヴィ=ストロースだってフィールドワークして実証的だが、現代のフィールドワークと考古学的古代の考察では食いつきが悪いのだろうか。それとももっと新しい研究を引用する必要があるため割愛されているのだろうか。

  詳しくは下記リンクから。


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