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古代の時間計測について

さて、占星術の大前提のうち、時代、文化、哲学、宗教、精神性に一切左右されず、常に普遍的な観測基準とされた要素はなんでしょう。「星の光」「天球と惑星の運動」「観測地」そして「時間」です。
この四つには共通点があります。いずれも科学の発展で計測がより正確になったことです。今日、時間計測は正確なうえにとても簡単です。携帯電話やスマートフォンの登場で、私たちは常に正確な時間を「持ち歩ける」ようになりました。二十数年ほど前まで、僕は正確な天体観測の指標に117(時報)やNHKラジオ放送時報を使っていました。デジタル時計も狂うからです。たった二十数年で進化する分野ですが、いにしえの時代(古くて6,000-8,000年前ですが)、人々はどのように時間を測っていたのでしょう。

本稿はアカデミックな論文の要約です。2023年6月10日に行うミニ講座「占星術時計の使い方」の補足資料として考えていましたが、講座の方針をより易しく実用的な内容とするため、noteで提供することにしました。

古代メソポタミアの水時計

原文:1999 Brown, Walker & Fermor The Water Clock in Mesopotamia
著者:ブラウン、ウォーカー、フェルモア (1999)

古代メソポタミアにおける水時計の歴史、構造、使用法、その技術的進歩と社会的影響の研究。水時計は、時を測定するための最も古い技術の1つで、古代メソポタミアの天文学、農業、政治、宗教など、あらゆる分野の時間管理で中心的な役割を果たし、さらには後の文明や時計技術の発展に大きな影響を与えた。

発祥と初期の構造
水時計は紀元前4000年頃にシュメルで初めて開発されたとされています。一定の速度で水が流れ出る器具を用いて、時間の経過を測定するものでした。最初の水時計は非常に単純な構造で、水を供給する容器と、水位を測定する目盛りを備えていました。やがて時代が進むにつれて、より精密な機構が開発されていきます。

メソポタミアにおける水時計の進化
シュメル時代の水時計の研究、そしてバビロニアおよびアッシリア時代の技術進歩を調査しています。この時代の水時計は、より複雑な機構を備え、精度が向上しました。例えば、継ぎ目のない陶器製の容器、流れ出る水の速度を制御する調節機構が開発され水位の上昇と下降をより正確に測定する目盛りも改良されました。

水時計がメソポタミア社会に与えた影響
当然水時計は、農業、宗教、および政治活動を管理するために広く使用されました。例えば農作業、宗教的儀式の開始や終了時刻、法廷での弁論時間、公的会議のスケジュール管理など。さらに、メソポタミアの王たちによる政府行政効率の向上、役人の勤務時間管理と監視を実現したと述べられています。

天文観測
古代メソポタミアの天文学者による、水時計を利用した夜間の星や惑星の動きの記録。天文学的な予測や暦の作成への活用。こうした観測は、季節や農作業サイクルを調査理解し、洪水や干ばつなどの自然災害に備えるためにも重要でした。

教育や科学的研究
学者は、水時計で実験や観測のタイミングを管理し、研究の正確性を確保。水時計の技術革新は、数学、物理学、および工学の分野での知識の発展に寄与したとあります。

メソポタミアの水時計が周辺地域や後の時代の技術に与えた影響
エジプト、ギリシャ、ローマ帝国などの古代文明では、メソポタミアの水時計の概念や技術が採用され、さらに発展させました。これにより、時計技術の進化が促進され、現代の機械式時計や電子時計の発展へとつながります。

要点

・水時計は紀元前4000年頃にシュメールで初めて開発され、古代メソポタミアの重要な時間測定装置だった。
・シュメール、バビロニア、アッシリア時代を通じて、水時計の技術は進化し、精度が向上した。
・水時計は農業、宗教、政治活動のタイミング管理に使用され、社会の様々な側面に影響を与えた。
・天文学的観測においても、水時計は夜間の星や惑星の動きの記録に役立ち、暦の作成や季節の理解に重要であった。
・水時計は教育や科学的研究においても重要であり、実験や観測のタイミング管理に活用された。
・メソポタミアの水時計技術は、エジプト、ギリシャ、ローマ帝国などの古代文明に影響を与え、時計技術の進化を促進した。
・水時計の技術革新は、数学、物理学、および工学の分野での知識の発展に寄与した。

バビロニアの水時計:天文学的実験の証拠

原文:The Design of Babylonian Waterclocks: Astronomical and Experimental Evidence, by John Steele
著者:ジョン・スティール(2000)

ジョン・スティールはメソポタミア天文学/占星術の考古学的研究で知られる学者です。本論文はバビロニアの水時計の設計、その構造と機能、天文学的および実験的証拠に基づく研究考察。結論として、バビロニアの水時計の設計が天文学的および実験的証拠に基づいて精密に調整されたと述べています。水時計は一定量の水が流れ落ちることで時間の経過を測定するものですから、流れる水の速度やその制御による正確さが重要だったのです。

バビロニア後期、日食のタイミングを計るために使われた水時計設計の仮説
論文中から引用

天文学的データや観測、実験に基づいて改良された
水時計の設計者は、太陽の出入りや月の満ち欠けなどの天文学的現象を観測し、それらを元に水時計の性能を調整し、さらに観測データを用いて、水の流れや圧力を制御する機構を開発し、水時計の精度向上に努めたとあります。

実験的証拠に基づいて改良されたことも指摘しています。設計者たちは、異なる形状や大きさの容器を使用して実験を行い、最適な水時計の形状やサイズを割り出していたというのです。さらに、水の流れや圧力を制御するための機構を実験し、最適な設計を追求しました。

高い精度と信頼:当時の社会において重要な位置
宗教的な儀式のタイミング、政治的な会議の日程、商取引における時間測定、天文学者たちは星や惑星の観測を行い、そのデータをもとに暦の作成や天文学的予測を行いました。水時計はあらゆる社会活動を支え、古代バビロニア社会の発展に寄与し、さらにはエジプトやギリシャ、ローマなどの古代文明に伝播し、発展を遂げました。

要点

・バビロニアの水時計の設計は、天文学的観測に基づいて精巧に計算され、調整されていた。
・水時計の技術は、天文学的データや観測に基づいて改良された。
・バビロニアの水時計は、実験的証拠に基づいて改良され、最適な形状やサイズが決められた。
・宗教的儀式のタイミング、政治的会議のスケジューリング、商取引における時間の測定など、さまざまな目的で使用されていた。
・天文学者たちは、水時計を用いて星や惑星の観測を行い、暦の作成や天文学的予測を行った。
・バビロニアの水時計技術は、周辺地域や後の時代の技術に影響を与え、時計技術の進化を促進した。

1時間の歴史: 時計と近代的時間秩序


A History of the Hour: Clocks and Modern Temporal Orders
ゲルハルト・ドールン=ヴァン・ロッサム(1996)

時間測定の歴史と時計技術の発展についての研究。古代文明から現代社会に至るまでの時間の概念の変化と時計技術の進化を詳細に追跡し、それらが社会や文化、政治、経済に与えた影響について述べています。

古代文明での時間測定方法と時計技術の初期の発展
古代エジプトやメソポタミアの太陽時計や水時計、ローマ帝国の日時計や蝋燭時計などが紹介されています。また、これらの古代の時計が、時間の経過を測定するための基本的な技術を提供し、後の時計技術の発展基盤を築いたと指摘。

中世ヨーロッパにおける時計技術の発展
機械式時計が発明され、教会や修道院、市庁舎などの公共の場で使用されるようになりました。著者は、これらの機械式時計が、時間の経過をより正確に測定し、社会生活のスケジューリングや時間管理に大きな影響を与えたことを強調しています。

近代時計技術の発展
懐中時計や腕時計、電気時計、原子時計などが開発され、時間測定はさらに正確になり、鉄道や工場労働、通信技術の発展に伴って、時間管理やスケジューリングの重要性も増しました。

現代社会における時間の概念と時計技術の役割
現代の時間管理が個人の生活や社会全体に与える影響を分析し、効率性や生産性の追求という視点でも時間がいかに価値観や生活スタイル、またストレスに影響を与えているかについても述べています。

要点

・古代から現代に至るまでの時間の概念と時計技術の進化
・古代の時計技術が後の時代の発展基盤
・中世ヨーロッパの機械式時計が社会生活の時間管理に大きく影響
・近代の時計技術がさらに正確な時間測定を可能にし、時間管理が重要性を増す
・現代の時間概念と時計技術が与える価値観や生活スタイルへの影響

補足:時計の科学 人と時間の5000年の歴史

織田一朗(2017)

「日時計」から始まり、周期を人工的につくる「機械時計」の誕生、「クオーツ時計」、そして「原子時計」まで時計の歴史を解説。古代の時計については第1章「時間の発見」に詳しいです。

ご案内「占星術時計の使い方」

ホラリー占星術や医療占星術で重視される「惑星時間(プラネタリー・アワー)」についてその仕組み、使い方を紹介します。

タイトル画像提供 virtosmedia 123RF Free Images


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