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井上陽水と宮沢賢治(1) 雨ニモマケズはワカンナイのよ

宮沢賢治

宮沢賢治(1896-1933)は岩手県花巻生まれの詩人・童話作家です。わずか37年の人生で、膨大な作品を残し、国民的作家として知られています。
子供の頃、宮沢賢治の『雨ニモマケズ』、『よだかの星』、『注文の多い料理店』などを読みました。しかし、大人になると賢治とは無縁の生活が長く続きました。もちろん、賢治が嫌いというわけではなく、ただ単に童話や詩とは疎遠な日々が続いただけのことです。

思いがけない『ワカンナイ』

賢治との再会は昭和五十七年(1982年)に意外な形で訪れました。それは賢治の作品ではなく、なんと、井上陽水の作品でした。曲のタイトルは『ワカンナイ』。賢治の『雨ニモマケズ』への、陽水からのアンサーソングと言える一曲です。

賢治の作品を読むと、簡単に理解することができないものが多いように感じます。幸い、『雨ニモマケズ』は平易な言葉で書かれているので、理解するのは簡単です。ただ、あまりにもストイックな世界観には驚かされました。そのせいか、陽水も「君の言葉は誰にもワカンナイ」と歌っています。

なぜ「ワカンナイ」なのか?

陽水の曲のタイトルは『ワカンナイ』です。なぜ「わからない」ではなく「ワカンナイ」なのか、少し不思議に思っていました。その後、賢治の童話『種山ケ原』を読んでいたら、面白い言葉を見つけました。それは「わがんなぃ」という言葉です。これは岩手の方言なので音が濁っていますが、普通に言えば「わかんない」です。陽水も「わがんなぃ」という言葉を見て、曲のタイトルを「ワカンナイ」にしたのかもしれませんね。カタカナ表記にしたところにセンスの良さを感じます。

賢治は今の時代をどう思うのか?

陽水は『ワカンナイ』の曲の中で「君の時代が今ではワカンナイ」と歌っています。賢治が精力的に作品を書いていたのは1920年代後半、大正時代です。今から100年前、岩手の花巻の雰囲気はわかりません。また、賢治の心象を理解するのも難しいことです。ただ、逆の立場で考えると、賢治に「君たちの時代はわがんなぃ」と言われるかもしれませんね。
まあ、いつの時代もワカンナイのでしょう

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