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「子どもの主体性」を悪用する醜悪な大人たち

私は20代のころ塾でバイトしていましたが、実は親が「それは子どもの主体性に任せますよ」と言って親の監督責任から逃れるのはあるあるです。例えば、中学受験の学校選びのときに、どんな学校がいいかなど子どもにわかるはずがないのに、親が「この学校は東大に○人入学させているよ。ちょっと家から遠いけど、××鉄道を使えば40分間同じ電車に乗れるから朝寝ながら通学できて楽だよ」と言って、子どもがそれに応じれば、親は「うちの子は、自分の主体性をもって中学を選びました」などと言う場合があります。主体性がどんなことか理解できている大人なら、この例での親の発言は欺瞞だとわかります。

似たようなことが、今批判されているAV新法でも起きています。

AV新法が批判されている理由は、未成年がAVに出演することになったとしても、未成年を守るために出演を取り消せる「未成年取消権」を盛り込むように議論が始まったのですが、骨子案では性交などを行う出演契約を合法だと認めているからです。

私はAV業界には詳しくありませんが、私はもともと主体性に強い興味があり、日本において「主体性」という言葉がどれほどの無理解に基づいて使われているかを知っているので、AV業界でも、冒頭に紹介したような例と似たことが起きているのがわかります。AVに出演させたい業者が未成年の前に現れて、言葉巧みに未成年の考えを誘導して、未成年が「私は出演したい」と言えば、業者は「この未成年は主体性をもってAVに出演したいと述べている。本人の了解がとれているので、契約を結ぶことができ、合法である」という、きわめて乱暴な帰結にもっていこうとしているのです。

一度AVに出演したら、知り合いだけでなく、ネットを含めたいろんな媒体で映像が拡散され、出演者にとって屈辱的な状況が降りかかるでしょう。未成年に、その長きにわたる被害やリスクが理解できているでしょうか。

契約というのは、メリットとデメリットを本人と相手の双方が理解して、両者の間で落としどころがついたときに結ばれるものです。私が初めて自力で契約を結んだときは、すでに大人でしたが、女ということもあり第一印象で強く出る必要があるなど、かなり気を遣って、頭脳も使って、ようやく結ぶことができました。
(過去記事:https://note.com/astria_psycho/n/n152962b70948
同じことを13歳かそこらの年齢のときにできるかといえば、とても不可能です。

だから、AV業者はもちろん、日本中の大人たちに、「子どもの主体性を言う前に子どもに降りかかりうるあらゆる危険から子どもをガードせよ」と言いたいです。

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