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高校1年 春③合宿いったらパントマイム

演劇部には無事入部。

イケメン三年生とかわいい先輩がいる部活、サイコーやん。

そんなことを思いつつ、部活は日々筋トレ、ランニングからスタートして発声練習が定番。

だが、そもそも演劇に1ミリも興味がないあたい。

筋トレやランニングはいいにしてもその他には身が入らない。

入るはずもない。

興味ないんだもの。

でも、イケてる三年生がいるから、とりあえず張り切ってるアピールしよう。

そんなやましい感覚のみで日々をこなしていたが、ある日角刈りメガネの顧問から合同合宿の話が来る。

県内すべての演劇部が集まって、泊まりがけでそれぞれの選択したカリキュラムを学べるらしい。

学校入ってすぐが勉強漬けの合宿だった僕にとって、一日中勉強しなくていい合宿だなんて夢の世界だ。

とりあえず一年生は基礎コース。

ワクワクしながらその日を待った。

合宿直前、ふと部員のあだ名を決めようという話になった。

X JAPANが好きでX日本というバンドを組みました!というボーカルのトシ。

同じくX日本のベーシストで無口なジョニー。

高木ブーにめちゃくちゃ似てて作家志望のナガブー。

ものすごく小さな身体で見た目が昭和の町工場にいそうな社長。

身長高くてガリガリの佐藤。(佐藤だけなぜか佐藤w)

などなど、、、

それぞれあだ名がついていったが、僕だけみんながしっくりくる名前がなかった。

そこで先輩から好きなアーティストを聞かれた際、とあるCMの歌を歌いながら

「及川光博が好き」

と言ったおかげで、ぼくのあだ名はミッチーになった。


合宿当日。

県内から集められた様々なメンバーと15人ほどのグループで僕は基礎コースを受講。

僕のグループではパントマイムをすることになり、映画館で映画を観ている設定でシーンごとに様々なリアクションをしていく。というカリキュラムだった。

僕はその中でカップルで来ている役どころとなり、地元でもトップクラスの女子校の、THEお嬢様!って感じの子とペアを組むことになった。

話をしてみると彼女も空手をやっていたようで、僕のことも知ってくれていた。

THEお嬢様!みたいな感じの人はそれまで苦手意識しかなかったけど、すんごい仲良くなれてめちゃくちゃホッとした。

ホテル貸切での合宿だったのでみんなで集まって夜中までシーンごとにリアクションのバリエーションを増やすために練習を重ねた。

友達もたくさんできた。

中でも、県内トップクラスの進学校にいる秀才だけど発言がいちいち狂ってるだいちゃんと

工業高校で自分で作曲とかもしちゃうspooksとはめちゃくちゃウマがあった。


夜は三年の男の先輩たちと相部屋だった。

毎年恒例らしい告白大会が始まり、僕は三年生のかわいい先輩が好きだと声を大にして発言。

部屋中で歓声が湧き上がっていた。

三年生がやたらと嬉しそうに"頑張れよ!"と言ってくれたのが嬉しかった。

2日目は発表。

わざわざ発表のために千人規模のホールを貸し切られていた。

照明専攻グループが照明をして、音響専攻が効果音やBGMを入れた上で、演技グループはそれぞれの班毎に演技を行い、ダンスグループはダンスを踊る。

そして基礎グループの僕らの班はパントマイムで映画館。

生まれて初めて、映画を観てるリアクションを人前に見せた。

しかもカップルとして。

気まずさがなかったとは言わない。

思春期真っ盛りの男子高校生が、隣にいる女子校のお嬢様と手を繋いじゃったりしちゃうのだから。

でも、

とにかく楽しかった。

自分たちが仕掛けたもので観客が笑い

自分たちに釘付けになってる観客の表情が見える。

僕は演劇の楽しさをようやく理解した。

同時に、これだけ広いホールで声を響かせるためには応援団とは違う発声が必要だということもよくわかった。

千人クラスの会場では、普通の声は響かない。

届かせるための声が必要だと思った。

ちなみにイケメンの先輩と、かわいい先輩はそれぞれのダンスグループでめちゃくちゃかっこいいダンスをステージで発表してて、終わった後にすごい歓声を受けていた。

僕のパントマイムとは比べ物にならなかった。

来年は絶対ダンスやってやる。

僕は心に誓った。


そしてこれから、僕は練習にめちゃくちゃ本気で取り組むようになった。

演劇人、ミッチーの誕生である。

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