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大学1年 夏⑨クラブデビューで夜更かししたら大人の階段登った気がした男

プロ予備軍の人たちとの合同練習をこなし、めちゃくちゃにダメ出しされながら食らいついていき

ついに迎えたクラブイベントの日。

初めてのクラブ。

初めてのメンバー。

初めて出演するイベント。

昂まらないわけがない

ちなみに、この日はアメリカのとある有名番組でアジア人初のグランドチャンピオンになった超人気ダンサーが来るとのことで、クラブも超満員だった。

イベントには僕たちだけでなく、先生たちはもちろん北海道の有名ダンサーが勢揃いしていた。

初めてのクラブでのリハ。

オープン前に音のチェックや立ち位置、足場の踏み込み感なんかを確認してフォーメーションと靴を決める。

クラブの音はとにかく耳が潰れそうなほど爆音。ここまでの爆音は正直苦手だと思った。

でも、興奮が全身を包み込む。

リハを見るだけでもめちゃくちゃ勉強になる。

様々なジャンルを生で見れる良い機会だった。

それまで嫌いだったヒップホップだったけど、ダンスを踊るためには深く学ぼうと買ったコンピレーションアルバムに入っていたケツメイシの"CLUBへ"が脳内再生される。


北海道中の有名ダンサーのほか、アメリカ帰りの有名ダンサーたちのショータイムを間近で見られる貴重な機会。

出るだけじゃない価値がそこにはあった。


このイベントはDJタイムから始まり、ダンスショーケース1部、DJタイム、そしてライブ、ダンスショーケース2部、DJタイムとなっていた。

知名度が高いほどに出番が後の方になっていく。

僕らは2部の最初。

2部のラストは今回のスペシャルゲストで、その前が僕らの先生だった。

初出場の僕が1部ではなく2部で出られたのは、僕と横T先輩以外のメンバーがプロ育成コースで長らくダンサーとして活動している実績があるためらしかった。

改めて、すごいメンバーとチームを組ませてもらってるんだなと実感する。


外で最後の練習をして、出番近くになってまたクラブに戻る。

ステージ裏の控え室に入る。

出番を待つ出演者でパンパン。

真っ暗であんまり見えないけどなんかすごい人たちがいっぱいなんだろうなと、少し気後れする。

メンバーで同い年の女の子が、出番の前に手を握ってくれた。

アフロヘアで唇厚めで黒人みたいな女の子。

これまで僕の周りには全くいないタイプの女子だったし、なにより"仲間"として見てたから女性としての魅力を感じたことはなかったけど、この時は不覚にもドキッとしてしまった。

変な緊張から急に解き放たれて、一気に冷静になる。

そうだ!これから僕はサイコーのショータイムを見せなきゃいけないんだ!

DJタイムが終わり、MCの人が2部の開始のアナウンスを告げる。

いよいよ僕らの出番。

ステージの真裏で待機。

突如爆音が流れ始める。

ビートに合わせて1人ずつ出ていく。

爆音で音楽が流れているのに、低めのステージからはお客さんの叫び声のような歓声が一気に拡がるのがわかる。

僕らのダンスは、当時NYで流行っていた最新スタイルのヒップホップ。

新譜好きなヒップホップファンが熱狂的な声をあげる。

その声に反応するように、僕らのバウンスもより大きくなっていく。

あと少しで終わっちゃう。もっと踊りたいなぁ。

そんなことを思いながら、ラストまで駆け抜けた。

ステージが終わる。

僕らのデビューは、観客から大歓声で迎え入れられた。

興奮の冷めぬまま、2部の残りのショーケースを観にフロアに戻る。

終わってからも観客からめちゃくちゃ声をかけられて揉みくちゃだった。

嬉しい。

ただただ、嬉しい。


そして程よい紅潮の中、いよいよスペシャルゲスト。


 圧巻だった。


衣装も

振付も

表現力も

圧倒的だった。


2部にでていたこれまでの出演者もかなり高いレベルにいたけど

スペシャルゲストは明らかに違うステージにいた。

いつか追いつきたいなぁ。

そんなことを思いながら、食い入るようにステージを見つめた。


こうして、僕のクラブデビューは興奮に包まれながら終わった。

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