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大学1年 夏⑥イベント出演と免許センターの衝撃

元演劇部と現役演劇部によるデコボコダンスチーム"ダニエルカーターズ"2回目のイベント出演の日がきた。

前回は高校生バンドばかりだったけど、今回は社会人バンドのイベント。

僕たちは圧倒的に最年少だった。

大学で培った"こわい先輩にかわいがられる後輩スキル"をフルに発揮して、出演者たちと仲良くなっていく。

他の出演者のリハーサルを見る。

なんていうか、当たり前なんだけどバンドばっかり。

ダンサーがまったくいなくて緊張感が増す。

若干気落ちしてるのを悟ったのか、主催のイベント担当のお姉さんが僕たちのところに来て

「リハもめちゃくちゃ良かったし、本番楽しみにしてるね!」

と勇気づけてくれる。

わざわざ僕らに声をかけてくれたお姉さんの期待に応えるべく、やったろうやないかい!

リハーサルを終えると、僕らは外に出て振り付けやフォーメーションのチェックを繰り返し行う。

どんどん緊張していく。

でも、改めてダニーとカーターを見る。

めちゃくちゃ楽しそうだ。

そう。楽しいのが僕らの持ち味。

とにかく楽しもう。


いよいよ本番の時間が近づいてきた。

僕らはオープニングアクトとしてイベントを盛り上げるのが役目。

身体は大きく。

そして笑顔で楽しく踊る!

それだけを3人で心がけてステージに上がる。

スタートの時間だから観客はさほど多くはない。

前で観ている人もいれば、横や後ろによりかかってる人もいる。

真ん中がいないのがなんとも悲しいが、いつかは演劇の大会の時みたいに1000人ホールパンパンなところで踊りたいなと思う余裕があるほどにステージの最中は頭が澄み渡っていた。

全員の合わせるところが終わり、それぞれのソロパート。

いつも以上に身体が伸びる気がした。

最後に全員で揃えるパート。

ライブハウス特有の爆音にのって流れるリズムが身体の中まで入ってくるのがわかる。

身体が動く。

いつも以上にアップダウンが激しく取れているのが自分でよくわかる。

アドレナリンがドバドバ流れまくっているのを感じながら、ステージを終えた。

フロアからはまばらな、しかしバックステージ側からは大きな拍手が聴こえる。

"ありがとうございましたー!"

若手感をフルに押し出した、部活みたいな挨拶をしてステージを降りた。


バンドの演奏が始まって、フロアで演奏を聴いていると、いくつかのバンドマンの方からイベントのオファーをもらった。

でも、僕はもう北海道に戻らなきゃいけないことを伝えると、とても残念がってくれた。

こうやってたくさんの方から評価をもらえたことが、とにかく嬉しかった。


お互い成長して、また踊ろう!

こうやって、ダニエルカーターズの夏は終わりを迎えた。

そして、あっという間に自動車免許の取得もいよいよ佳境。

元気な受付のおばちゃん(兼友達のお母さん)に日々見守られながら、教習所を無事卒業して試験に臨む。

試験場は地元の中でも中心部からはずれのほうにある地域。

まあまあ遠い。

朝から筆記試験。

最近は早起きだったので、朝から頭もフル回転だ。

そうとは知らずに教習所のグレーな機械で勉強しまくってたので、テストはとりあえずバッチリこなした。

合格発表を待ちながら、ふと周りを見渡すと年下のいとこが目の前を通り過ぎていった。

え!なんで!?

と思いながら声をかける。

なんか、久々に見たらヤンキーみたいな見た目してんな。

眉毛も細くてダボダボのジャージ着て、髪も茶髪でさ。

でも話し方は昔のまんま、柔らかくて腰が低かった。

こいつはちょっとヤンチャな人が多い高校に通ってたから、派手な見た目はそこでの処世術なんだろう。

話を聞くと、どうも原チャリの免許を取りに来たとのこと。

今はわかんないけど、当時は原チャリは当日の筆記試験だけで取れるめちゃくちゃ簡単な免許で、費用も1万円くらい。

高校生で免許持ちは英雄扱いだ。

こいつもそれを目論んできたんだろう。

実は僕も大学入学前に原チャリの免許は取得していた。

試験受かるといいなぁとドキドキしてる様子だったから

"絶対受かるよ〜!心配すんなって!"

と肩を押す。

テキストを買った直後に母親とも話してたけどこれで落ちる人いるのか?ってくらい簡単なもんだばかりだった。

車の免許の方が引っ掛けが多くていやらしい。

あんなん落ちるやついないって〜。とひたすら茶化す。

お、そろそろ時間だ!

彼の合格発表を一緒に見る。

なかった。

受験番号が。


なんか、ごめん。


そして僕は自分の受験番号が発表され、自分の番号を確認するとそっと いとこを置いて写真撮影に向かった。

なんか、ほんとごめん。


こうして、僕の夏休みは終わりを告げた。

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