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高校1年 秋①茜刺す帰路照らされど

ついに大会の日が来た。

自信は、ない。

地区大会は2日に分かれて開催される。

合宿で知り合った友達の舞台を観るのも初めてだ。

とてもワクワクしつつ

とても緊張していた。


まずはリハーサル。

短いリハーサルの時間で、広い舞台を駆け巡る。

これは詩的な世界。

盛り上がりはなくていい。

ただ観客の記憶に残る演技力が求められるというだけの舞台なのだ。

足りないのは脚本でもなんでもない、自分自身の力。

そんなことを思いながら、リハーサルを終えた。

そして様々な高校の上演が始まる。

合宿で同じグループだった仲間の舞台が、悉くレベルが高くて萎縮する。

彼らはあの環境で毎日過ごしてるのか。

すごい。

でも、悔しい。

何が負けてるとかはない。

でも、今のままでは勝ち残れないことが、様々な高校の舞台を観る度に身に染みた。

ちくやん部長の話によると、僕らの地区は超激戦区。

ブロック大会(東北とか、関東とか)はもちろん、全国大会にも顔を出す高校がひしめいていて、

県大会に出れる上位3校は毎年ほぼ固定らしい。

僕の高校はかれこれ20年近く、地区大会も突破できていないのだと知った。

無理ゲーやないかい。

でも、不思議と落ち込みはしなかった。

今は遠いかもしれない。

ただ、来年はわからない。

それに今年、ミラクルが起きて拍手喝采なんてこともあるかもしれない。

諦めるのは早すぎる。

そして迎えた本番。

正直言って、上演中の記憶はほぼない。

セリフをちゃんと言えていたのかもわからない。

気付いたら終わっていた。

僕たちは、ミラクルの「ミ」の文字も見ることなく例年通り地区大会でその姿を消した。

大会に向けた舞台というのは、前にも書いたように

文化祭→地区大会→県大会→ブロック大会→全国大会(高文祭)→国立劇場

と、最大6回の上演チャンスが生まれる。

最後まで何回も上演される舞台を作りたいなぁ。

そんなことを思いながら、帰路に着いた。

彼女が貸してくれた椎名林檎のアルバムが、やけに響いた

今は遠い。

でも、やはり来年はわからない。


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