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高校3年 春④最高に盛り上げたはずなのにすべてを掻っ攫われた男

演劇の合同合宿2日目。

午前中は振付のチェックやフォーメーションなど簡単に練習をして、午後からは発表。

最新のホールでがっつり照明、音響が揃う中パフォーマンスが出来る。

サイコーじゃん。


会場を歩いていると、ふと去年の先生と、去年同じチームだったホリジを見つけた。

挨拶してまた機会があったら教えてくださいね!という話をしていたら、先生が悪い顔をし始めた。

「去年の振り付け覚えてる?あれでステージジャックしようぜ!」

作戦としてはこうだ。

先生の今年の教え子たちのステージが終わったら、音響に頼んで去年の曲をかけてもらう。

そして、今年のプログラムと全然関係ない3人がそれぞれステージに駆け上がって踊ろうじゃないか、と。

めちゃくちゃ楽しそう!


順番的にまずは僕のチームのダンス。

その後にこの先生のチームが踊って、直後にステージジャック。

楽しみがすぎる。

僕はワクワクしながら、訪れる自分の出番を待った。


まずは自分の番。

去年と違ってフォーメーションがかなり複雑。

そしてディズニーのパレードみたいなダンスは見た目以上に大きく動かないと映えない。

音楽が流れる。

一気に血液が全身に流れ込むのがわかる。

身体が熱くなる。

トゥータッチをして音楽が止まる。

あらためて観客を観る。

今回は必死すぎて客席を見る余裕がなかったが、会場から割れんばかりの拍手が起きる。

ダンスサイコー!

イェェェェエエエ!!!

テンションマックスで舞台を降りる。

そして、この後が僕にとって今日一番の山場。

スケジュールにないダンスで、ステージジャック。

なんか気持ちが高まって胸がハフハフしてる。

もはやドキドキじゃない。浮ついた感じもあって、ハフハフ。

すぐに、先生のチームのダンスが始まる。

終わる頃を見計らって、ホリジと共に客席からステージに向かって走る。

ステージに上がってる先生と握手をしてスタート!

今度は客席までがっつり見える。

あれ?さっき出てた人じゃない?みたいな顔をしてる人もいれば、

意図を理解して声援を送ってくれる人もいる。

一瞬で終わるショーケースだった。

でも、ここまでに一番の歓声を浴びたのは間違いなく突如現れたこの3人だった。

割れんばかりの拍手を頂戴する。

ダンスサイコーーーー!!!

マジでサイコーーーー!!!


将来はダンサーという選択肢もある、、、のか?

なんて浮ついた気持ちを抱きながらも、客席に戻って、合宿のステージを最後まで見届けた。


ちなみにその後、高木ブー似のながぶーのいた演技チームは

ステージの上でくじを引いて、それに沿った演技をしなければならないという即興演劇(エチュード)の発表の中
「合コンで相手をお持ち帰りする」

という鬼のようなシチュエーションを引いてしまい、さらに役名を書いたクジを引いたところ
「イケメン」

だったので、コミュ症気味な高木ブー似の自称イケメンがひたすら女の子たち(しかもリアルなギャル率高め)を口説くという

面白すぎるステージを披露した上に、彼は女の子への口説き文句に

「俺と箱根旅行に行こうぜ?」という渋すぎるチョイスをハイトーンボイスでかましたことで、僕のステージを塗り替えるこの日一番の拍手と爆笑をさらっていった。

ずるい。

ずるすぎるよ。

ちなみにその後ながぶーは、年下のギャル達に「箱根さん」とあだ名をつけられて「キャラがかわいい」とめちゃくちゃ人気者になっていた。

うらやましい。

ダンス踊っててもこんなにモテたことないのに!

と思いながらも、部長のMとあまりに悔しいから邪魔してやろうと思い立って

「おいおいながぶーモテモテやーん!」

と茶化しに行くと

「あれー、ダンスのお兄さんじゃーん!」

とギャル達に声をかけられた。

ダンスやっててよかった。

ながぶーと友達でよかった。

生きててよかった。

ありがとう、ながぶー。


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