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高校3年 秋①いいの?コレ、ほんてんいいの?

秋に入る。

恒例の体育祭。

うちのクラスは女子がとにかく強い。

パワフルだし、パワフルだし、

なんていうかパワフル。

一緒にいるとわかんないけど、後輩の女子たちからはめちゃくちゃ怖がられてる先輩の集まるクラスらしかった。(オタクの皆様を除く)

だから、体育祭は特に気合いが入っていたし、優勝候補とも呼ばれていた。

でも、男子も負けちゃいられない。

帰宅部だったのに、脚が速すぎて顧問から無理やり陸上部に入れさせられて初めて出た大会で勝ち上がった結果、未経験にして県大会で入賞してしまった副会長を筆頭に

テニス部のうのっちや、

野球部のディズニー、

元バレー部の俺に

元超強豪バレー部のエースアタッカーてっちゃん

放送部なのにえぐいほど運動神経抜群の浜崎あゆみオタクな大沼

そして野球部のスタメン、ヤンキー

と、運動能力高めのメンバーがまぁまぁいた。

男子もそこそこいけるのではないか。

そしてクラスの担任は体育教師で剣道部の鬼顧問。

男女優勝をスローガンに張り切ることになった。


体育祭は

ソフトボール

バレーボール

バスケットボール

3つの競技で、全学年くじで決められたトーナメント形式の対戦。

1人2科目出場がルールだったので、バレーボールとバスケットボールに出たかったけど、人数がいなすぎるからとおパンツ会のメンバーはほぼ全員バレーボールとソフトボールに出ることになった。

特にバレー部が2人いるバレーボールは自信があった。


体育祭の前。

それぞれチームの連携もあるから練習してみよう、という話になった。

教室で着替えるのは女子の特権みたいになってたので、僕たちは体育館の横にあった柔道場でいつもジャージに着替えていたのだが

前の授業の片付けをしていて若干みんなから遅れて柔道場に着いた時、僕は異変に気付いた。

しょーちゃんと、キヨぽんが、寝ている。

いや、正確には寝たふりだったけど。

そして、それを見た僕は受験勉強が続いて頭がおかしくなっていたこともあって

なぜか、こんな言葉を方言丸出しで叫びながら2人に向かって全力ダッシュした。

「いいの?これ、ほんてんいいの?」

誰がどう見てもあまりに意味不明な状況。

2人からすると、目を瞑っていたら、変な方言とダッシュで迫ってくる足音が突然響いている。

耐えられなくなった2人は爆笑しながら目を覚ます。

が、僕はかまわずスライディングしながら2人を捕まえてジャージを脱がせにかかる。

なぜか僕にズボンを脱がされた2人、そして2人に脱がされた僕。

この、あまりに意味わからなさすぎる状況がツボに入ってしまった僕らは、

それからジャージに着替えるチャンスが起きるたびに柔道場で同じようなことをひたすら繰り返していた。


古き良き伝統を持つ真面目な我が高校で、3年に奇人が3人いるらしい。

そんな噂が下級生に出回っていると知ったのは、それからわりとすぐだった。

穴があっても入らなくてもいい。

ここまできたらとことん奇人でいこう。

俺はしょーちゃんとキヨぽんと3人で心に誓った。


そして迎えた体育祭当日。

僕らが散々頑張ったバレーボールは、準決勝で演劇部元部長でママさんバレー出身のM率いる隣のクラスに負けてしまう。

ソフトボールは、誰もやったことがなくてそもそも投手すらいなかったけど、副会長が

「普通に打つより恐怖を押し殺してバントやった方が当たるぞ!」

と言い出したことから、面白そうという理由でなぜか全員全打席バントで挑み、一回戦で一年生チームにボコボコにされておわった笑

クラスの女子チームは全校2位。

筋肉ダルマな担任は大喜びしていた。


打ち上げでカラオケに行った。

普段物静かなあそうたまきこーじが血管浮き立たせながらポルノグラフィティのサウダージを歌い出して熱気は最高潮。

その後、副会長がなぜかcharaのやさしい気持ちを歌った。

めちゃくちゃうまかった。

イケメンで歌も歌えるとか、ズルくね?


僕らは青春というものを謳歌していた。

形の見えないものはそれがそうだと実感できないものだが、それでも僕らはいま青春していることを誰よりもよく理解していた。

青春時代が果たしていつ終わるのかは教科書にも載っていない。

不確定な時期を不満足で終わらせないように、毎日を必死で生きていた。

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