見出し画像

死神を乗せたお話

普段は心霊のお話はあまりしませんが、夏も終わりになってきたので1つ、想い出に残っている体験を書いていきます。

あれは、私が20代前半の時でした。青森の2月はまだまだ雪もあり寒い季節でした。
当時、祖父母と両親と私の5人で住んでいました。(父は単身赴任していたので実際には4人)
祖父は食事の介助が必要で、1日5食消化に良いものを用意しなければいけない状態でした。祖母は退院してから1週間程しか経っておらず毎日体調が悪く何をするにも介助が必要でした。そんな祖父母を毎日お世話するのが私の役割でした。
お世話と言っても夜は自由時間が出来るので、祖父母が寝てから父が置いて行った車でドライブに出たり、買い物に出かけたりしていました。

その日も、夜に車を走らせていました。
帰宅するかと思いエンジンをかけると、妙な感覚を覚えました。私以外に誰かがいるのです。バックミラーを見ると助手席の後ろの席に真っ黒い人型の何かが乗っていました。
怖い…と思いましたが、それよりも黒い人型を見るのが初めてだったので「なにこの人…」というクエスチョンが頭の中を占めていました。
動かないし話しかけてもこない黒いモノを乗せて家までの道中を走ります。

この黒いのはいつまで乗ってるんだろう?
え、もしかして一緒にお家まで帰ることになる?
お家に入れたくはないんですけど?と、脳内ではずっと色々考えていました。チラチラとバックミラーを見ては、まだいる黒いヤツを確認しひたすら車を走らせます。家に着くまであと少しという時にふと、本当にふと黒いヤツは消えました。
あれ?乗せてたのに、消えた…
嬉しいけど、どこに降りて行ったんだろう…
怖かったなぁと思いながら家に着き、あの黒いヤツの気配もないまま夜を過ごし眠りにつきました。

朝、寝ていると祖父の声が聞こえました。
「おーい、ババが変だ」
どうしたんだろうと思い祖母の部屋に行くと、祖父が扉の前で立ち止まっています。私はひょいっと部屋の中に入ると、心肺停止状態の祖母がベットの上で倒れていました。
パニックになったもののすぐ救急車を呼び、諦めて座っている祖父の代わりに、母と父に電話をかけながら、救急隊員が来るまで心臓マッサージをしていました。
結果、そのまま祖母は還らぬ人となりました。
お通夜で不思議な音が鳴るなど色々ありましたが、その現象を見てふとあの黒いヤツを思い出しました。

亡くなる前日にわざわざ私の運転する車に乗り込み、目的地まで悠々と来て、時間まで身をひそめていた黒いヤツ。なんで顔が見えないのか、どうして黒いモヤのように着ている服が分からないのか…ヤツが死神だからだ。死神という概念のような死の運命が人型になって見えていたのだ。理由もないのにそうだと感じました。
私が死神を家まで連れてきてしまった、その事実に誰にも言えない責任を感じた。

あの時から3年が経ち、祖父の病状が悪化していました。祖父は朝に度々「黒い夢をみた」「怖い夢をみた」と言っていましたが、それから2週間も経たずにあれよあれよと祖母の元へと逝ってしまいました。
その時は黒いヤツは見えませんでしたが、着実に祖父の近くへとあの黒い死神は歩み寄っていたのでしょう。

顔も性別も服も黒く見えず、少し下を向いた黒い何かを見たら、あなたの近くに死が迫っているかもしれません。

そんな、冬の心霊体験でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?