見出し画像

取材を受けたお話

10月25日、前の職場からメールが届いた。

○○新聞のアキヤマ様という方から、『▢▢紀要』 に執筆された論文の
内容について伺いたい、という問い合わせがありました。
以下直接ご連絡ください。
○○新聞社 アキヤマ様
XXX-XXXX-XXXX

○○新聞社は5大新聞社のひとつだが、アキヤマという人には覚えがない。
性別も不明だし、そもそも本当に新聞社の人なのかもわからない。
前職場に問い直しても、何もわからないので自分で確認してくれと。

あやしくない?
(リンカネの Discord にも書いたけどw)

放置してもよかったんだけど、気にもなった。
『▢▢紀要』 には複数回投稿しているが、どの論文のことなんだろうか?

元指導教官と、信頼できる先輩にお伺いメールを送ってみた。
幸い、先輩がすぐ反応してくれた。

「電話してみればいいんじゃない?」

うーむ。

結局、好奇心に耐えかねて、その番号に電話してみた。
最初、発番号非通知でかけたら繋がらない。
番号通知でかけてもやっぱり出ない。

と思ったら、すぐに折り返しかかってきた。
男性の声だった。

用件を尋ねると、○○新聞社で連載している研究紹介のシリーズで、
私が以前論文に書いたのと同じテーマをとりあげることになった。
ついては、「取材できる人を紹介してもらえないか」 という、
若干失礼な依頼だった。

そういうアキモト氏の口調はなんかしどろもどろというか、挙動不審な
喋り方をする人だな、大丈夫なのかな? というのが率直な感想だった。

とりあえず、即答はむずかしいので、改めてメールなどで回答したいと
伝え、フルネームと部局、メールアドレスを聞き出していったん切った。

部局は、地元の支社だとばかり思っていたら、なんと大阪本社だった。
(知らなかったんだけど、五大新聞社は本社が東京だけじゃないんだね。
そして東北には支社すらないんだね)

電話番号は自分で検索して、大阪本社に電話をかけ、文化部にアキモト氏が
在籍するか問い合わせてみた。
最初いぶかられたものの、事情を話すと、ちゃんと在籍していると教えて
くれた。
ついでに、今席にいるけど代わるかと訊かれたので、いらんと答えたw
(電話口に出たおじさんがコッテコテの関西弁でびっくり!)

とりあえず、詐欺などではないことはわかったので、アキモト氏に改めて
メールした。
折り返し、調査したい内容と、それについて取材できそうな人を紹介して
ほしい旨、返信がきた。
最初の電話でもちょろっと言っていたけど、私の前に某研究者にアプローチ
したけど断られたと言っていた。
それはそうだろう、その方は東京の有名大学の学長で、めちゃくちゃご多忙
なのだ。そもそも学会・研究会にもあまり顔を出されない方だし。

ほかにも3名ほど研究者の名前が挙げていたけど、いずれもテレビにも出る
ような有名人で、しかも広義での研究分野はカバーしているものの、取材
したいといっているテーマの専門家じゃない。
もちろん、大家だからひととおりおもしろい話はしてくれるとは思うけど、
受けてもらえるか保証はできない、というか十中八九むずかしいだろうと
思った。

調査したいという内容について、私なりの見解も添えた。
(実はこの時点で、私にしとけば? と水を向ける意図もあったw)
結果、ぜひ私に取材をさせてほしい、という仕儀に相成り候。

後で思ったのだけど、電話でアキモト氏がしどろもどろになっていたのは、
前職場から私が 「退職した」 と伝えられて、おそらく定年退職して一線から
退いた60代とか70代とかのおばあちゃんを想像していたところに、私の声が
思いのほか若かったので混乱したのかもしれない。
「失礼ですが、現在も研究者でいらっしゃるのですか?」 って訊かれたしw


その後の追加メールで、記事に使う資料写真用に何か持っていないかと問い
合わせがきたが、残念ながら、自分で撮影したものを持ち合わせてはいな
かった。
以前の私だったら、ここで無駄な責任感を発揮して、いろいろ手を尽くした
ことだと思う。
頼られるとバカまじめにがんばっちゃう質だし、根底には 「がっかりされ
たくない」 「評価されたい」 という心理も潜んでなかったとは言い切れない。

けど、取材を申しこまれた時点ですでにある程度認められているわけだし、
ノーギャラで働くには限度があるというか、どこかで線を引く必要があると
思う。
ここから先はあなた方の仕事! 大手新聞社なんだからなんとかできるはず!

これ、婚活ノート塾のリアル会ではるおたんにも話したけど、ベストな対応
だったみたい。
先方だって、万が一私が持っていたらラッキー、くらいに思っていたんだ
ろうし、余計なお世話は焼かない、自己犠牲は払わない!



取材は Teams でということだったんだけど、事前に Teams を試してみた
ところ、画角が広くてなんか気分が悪くなるのと、背景の設定などができ
ないのがいやだったので、できれば zoom にしてほしい、よければこっち
で設定するし、録音データも渡す、と提案して容れてもらう。
(なんでも言ってみるもんだ)



取材当日に初めて顔を見たアキモト氏は、ザ・記者! という感じで、
最初の電話のしどろもどろぶりが嘘のように切れ味が鋭かった。
話の聴き方や、私から記事のキモとなる何かを引き出そうと起爆ボールを
投げてよこすタイミングや強度の冴え具合は、さすが有力紙の記者さん、
であった。
(頭のいい人ってスキ! )



でき上がった記事には、だいぶ苦心したであろうことが見て取れた。
(元指導教官から、話を受けるなら必ず最終稿のチェックをさせてもらえる
よう確約するようにアドバイスもらってたの)
最新の研究成果をふまえつつ、一般向けの内容にするというのは、かなり
骨の折れることだと思う。
きちんと、私が伝えた私なりの見解が盛りこんであって、私が書いた論文も
参考文献として掲載されていた。

当該紙が刊行された3日後くらいには、(私自身、現物をまだ見ていなかった
ので誰にも教えていなかったのに) 研究者仲間が見つけて LINE でグループに
共有してくれた。
みんな視野が広くてアンテナ立てまくってるのね。
ほんと、頭がいい人って大好きだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?