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TCGケース開発記録#2 | 試作第1号完成

ネジ無し、磁石無しのカードケース開発の記録兼備忘録。
カードサプライ、TCG収集の面白さが少しでも伝わると嬉しいです。


プロトタイプ設計

茶筒に着想を得てカードケースを作ると決めたものの、茶筒って何だ?という話です。ゆっくりと沈み、ゆっくりと外れる。これがどういう構造なのか?を形にせねばなりません。カードの厚みは大体0.4ミリです。そのため茶筒ほどの深さを取ることは無理、当たり前です。

じゃあどうするか?と考え抜いた末の形、編み出した初期稿がこちら。
非常にわかりづらいのですが、下パーツを"凹形状の受け"に、上パーツを"凸形状差し込み"にして見ました。ファラオの棺のような、なんかそういう感じです。

アクリルケース初期稿


ただ結論から言うとこの初期稿が形になることはありませんでした。製造上、作るのが非常に手間がかかるからです。
パーツ上下の"噛み合わせ"を茶筒のようにしようとすると、上部と下部の噛み合わせ具合が「付かず離れず」の絶妙な加減にしなければなりません。

それをするためには、バフ(磨き)をかけて調整し一つ一つ職人が調整しないといけないのですが、この形状は凹部と凸部の四方、合計8面の加工・磨きが必要になります。1面当たり数分×8面 (正確には前面の斜めカットもあるので12面)が職人の労働時間になり、機械の稼働を含めると、1個作るのに美品の旧裏かえんリザードン1枚くらいかかってしまうのです(誰がわかる)。
カードよりもケースの方がはるかに高くなってしまっては本末転倒。ということで、設計変更することになります。

アクリルの板をレーザーカットするだけならいざ知らず、複雑な形状の透明品を作るにはめちゃくちゃコストがかかる、ということを初めて知ったのがこの時。改めてカードサプライメーカーへのリスペクトが湧きました。

再設計、そして試作1号完成!

そんなわけで再設計したモデルがこちら。

上下の両方を凹凸形状にするととんでもない手間がかかるので、上パーツはシンプルな板形状に、下パーツを凹部として"受ける"形にすることでバフの手間を半分にすることにしました。上下のパーツをすり合わせることは依然として必要ではあるものの、上パーツはアクリル板のレーザーカットで対応できるようになりました。

これで現実的な金額感に、、

実際の請求書抜粋

に、に、に、2万4千円(税込)!!!!!!!
、、えっと良品の旧裏かえんリザードン1枚くらいするんですがそれは。。。(誰がわかる)

実は下パーツの凹形状の作り方が問題なのです。量産時はQCDを考慮し、金型製造するのですが今はプロトタイプでワンオフです。
なので、この形状を金型無しに再現しようとするとアクリルブロックを切削し磨いて作り上げる必要があります。
それは文字どおり職人の手作りであり、噛み合わせの調整など諸々含めてこの金額になってしまうのです(と伺いました)。

ただ、もはや後に引けなくなってしまっている私はこの見積もりを受けて試作1号の製造を行うことにしました。こうして晴れて?試作1号が完成したのです。

試作第1号のディスプレイイメージ

試作第1号は現在の最終形と微妙な点で仕様が違っていますがそれは最終形の記録回で触れるとして。ディスプレイイメージはこんな感じです。

  • ネジや磁石の留め具が無いので借景のように後ろを見通せるようなディスプレイや撮影が楽しめます。

  • 持ってみるとトロフィーに入っているみたいで気に入ったカードが最高に映えます(贔屓目あり)。

  • 上下のアクリルブロックはゆっくりと締まりゆっくりと外れて、ドライバーなどの器具も要らずいい感じに噛み合います。

1号が出来上がった段階で大分満足した私は同じ趣味の人の手に渡って欲しくなり、同志を増やしたくなり、量産・販売を目論見ます。

ただ、この時点では長い戦いの始まりであることを知る由もなく、これから透明品製造の難しさ、販売の難しさにぶち当たることになるわけですが、それはちょっとだけ先の回で。

次回「量産コストと品質問題」に続きます。

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