1990年代の奇跡は再び?生産性向上が示す新たな上昇相場
1990年代半ばに米国経済は生産性の向上により驚異的な成長を遂げました。同時期に株式市場はその恩恵を受けて長期にわたる上昇相場に突入しました。
1990年代のこの出来事はソフトランディングが成功した数少ない事例でもあります。
1994年の再来?生産性向上が新たな上昇相場を生む?
生産性向上からの上昇相場、特にこの動きが明確になってきたのが1994年です。そして最近の米国経済の状況はその頃と共通点が多いことが指摘されています。
以下のニューヨーク・タイムズの記事でもそのことが指摘されています。
以下では1990年代と現在の米国経済の共通点を考察も加えながらまとめています。生産性の向上が株式市場に与える影響を一緒に考えていきましょう。
共通点①経済成長・賃金上昇
1990年代にインターネットの普及によって米国は急速な経済成長とそれに伴う賃金上昇を経験しました。
現在の米国経済においても同様に経済成長と賃金の急速な上昇が見られています。
これらの経済成長の背後には技術革新による生産性の向上があります。
クラウドサービスやコラボレーションツールによってビジネス環境が変革されてきています。(コロナ流行も一つのきっかけになったと考えられます。)
そこに生成AIが導入されたことで、企業は経済活動の効率性をさらに高め、生産出力を増加させることが期待されます。
つまり経済成長の立役者は前回はインターネットでしたが、今回は生成AI技術がその候補になると考えられます。
共通点②生産性の向上
上記のように1990年代においては生産性向上が経済成長の鍵となりました。
現代の米国においても生産性の向上は重要な意味を持っています。
生産性が向上することで、企業はより多くの製品やサービスを少ないリソースで提供できるようになります。
その結果、経済全体の効率性が高まり、この効率性の向上は、賃金の増加・コストの削減、そして最終的には消費者価格の安定に寄与し、インフレ圧力の軽減にも繋がります。
このように見ると、生産性向上はソフトランディング達成のための鍵となることが改めて分かります。
そして実際に米国の労働生産性の向上を示すデータが最近出てきています。
しかし、1990年代には生産性が飛躍的に上昇したと確信されるまでには時間を要したとされます。(1999年頃まで)
このことを踏まえると、現在の米国でもまだ生産性向上についての確信が得られるまでにはもう少し時間を要するかもしれません。
そして生成AI技術が生産性向上に寄与するかの最終的な結論が出るのも、まだ先のことでしょう。
共通点③技術革新
1990年代半ばのインターネットテクノロジーへの投資が生産性向上を促進したように、現在の米国では生成AIを筆頭とする技術が生産性向上を助けると期待されています。
これまでクラウドコンピューティングサービス(AWS, Google Cloud Platform, Microsoft Azure)、コラボレーションツール(Slack, Microsoft Teams, Zoom)、オンライン販売プラットフォーム(Shopify, Etsy)、自動化とAIツール(Salesforce Einstein, IBM Watson)、フィンテックサービス(Square, Stripe, PayPal)などが、ビジネス環境を変革して生産性を高めてきました。
そしてこれらの技術をインフラとして、新たに登場した生成AI技術が実力を発揮できる環境が整っていると言えます。
生成AIの出現は、特にコンテンツ生成とクリエイティブな作業の自動化において、新しいビジネスモデルの誕生と既存の業界の再定義を促しており、経済全体に対する影響は計り知れません。
このような背景から、現代においても技術革新によってさらなる生産性向上が成し遂げられる可能性が高まっています。
共通点④インフレの制御
これまで見てきた1990年代の生産性向上により、賃金上昇とインフレの緩和が同時に進むという、経済にとって理想的な状態が実現しました。
この状態では労働者の実質所得は上昇していきます。
現代の米国においても、技術革新(特に生成AIを含む最新のAI技術)による生産性向上が同様の状況を達成する可能性を秘めています。
言うまでもなく、インフレ制御には中央銀行の役割が不可欠です。利上げによるインフレ抑制の努力が、1990年代と現在に共通する重要な経済政策であることは明らかです。
これに加えて両時代に共通する生産性向上もインフレ圧力を抑制する方向に働く可能性があります。
生産性向上によるインフレ圧力の緩和効果についてもう少し詳しく説明してみます。
生産性向上により企業は効率的な生産プロセスを実現し、より少ないコストで商品やサービスを提供できるようになります。
その結果、企業は価格競争力を保ちつつ、労働者の賃金の上昇を支えることが可能になり、経済全体のインフレが過熱しすぎない状態になります。
最近発表された物価指数は予想をやや上回りましたが、これは強い経済状況による底堅い消費を反映しているという側面もあり、基本的にはインフレの抑制に成功しているものと考えられます。
今後の株式市場への影響
1990年代に見られた生産性の向上は、ソフトランディング達成を演出し、その後の数年間にわたる株式市場の上昇を後押ししました。
その時期と同様の生産性向上の兆しが現在の米国でも見られています。
1994年以降のS&P500を確認すると、1995年2月14日に過去最高値を更新し、
終値の482.55から1995年中の最高値621.69まで28.8%の上昇を見せました。
同期間でNasdaqは1995年3月14日の終値808.24で過去最高値を更新し、1995年中の最高値は1069.79まで32.4%の上昇を達成しました。
その後もS&P500は力強い上昇を見せ、2000年までの間に期間中の最高値1044.91ドルまで、約+217%の上昇を見せました。
また同じ期間にNasdaqは1995年の808.24ドルから期間中の最高値4235.4ドルまで、約+424%もの上昇を達成しました。
これまで振り返ってきた共通点からも米国株市場は再び長期にわたる上昇相場を演じる可能性が高まっていると私は考えています。
皆さんは生成AIなどの新技術が生産性向上を通して今後の米国経済・株式市場にどのような影響をもたらすと思いますか?
労働生産性向上を背景にした上昇相場では、決算を手掛かりにした個別株投資がリターンを生みやすいと言えます。
私はこの本で決算を手掛かりにした米国株の個別株投資を学びました。
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