おおぐま座運動星団

 ええと、このコラムは、主に星空についてのあまり重要でない話について書いていきます。

 というわけで星座である。

 星座というのは人間が勝手に作ったものである。自然発生したものではない。であるからして、その作っている星がお互いに関係あるということはあまりない。まあ、たまたま2,3個の星が関連があるとしても、それはまあそれだけのことである。たまたま同じ方向に見えているだけだ、そう考えて差し支えないのが星座というやつだ。

 とはいえ、例外もいくつかある。

 もちろん、とある星座に属しているすべての星が関係ある、などということはさすがにない。ないのだが、目立つ星の多くが含まれる、というくらいなら事例はあるのだ。

 そんな事例の一つが、北斗七星である。北斗七星といえば、春の代表的な星の並びのひとつである。ここは間違ってはいけない、星の並び、である。星座、ではない。星座としては、おおぐま座という星座の一部にあたるんだけれど、その一部が目を引くので、北斗七星として成立しているというわけだ。わりと世界のどこでもこの並びは目を引くものだったようで、いろんなところでこの部分だけが抜き出されている。まあ、あまり回りに明るい星がない場所だからということもあると思う。

 この北斗七星、まあ7つの明るい星を結ぶと、ひしゃくのようになるわけだ。「おおぐま座」としては、熊のしっぽにあたる。で、この7つのうち、両はじの2つを除く5つが、一緒に生まれた星なのである。これらは、おおぐま座運動星団、という星団を構成している。

 さあ何やら用語が出てきたが、星の集まりのことを星団という。字の通りですね。

 星団といっても種類がある。散開星団と呼ばれる星団のメンバーは、ほぼ同時に生まれた星がまとまっている、若い集団だと考えられている。あまり定型がなくて、星がちらばっているから「散開」である。わかりやすい。英語だとopen cluster。clusterは星団のことだが、広がっているからopenである。わかりやすい。

 散開星団の有名どころだと、「すばる」がある。もうとっくにシーズンオフだけど。星というのは、まとまって一か所で生まれると考えられている。なので、生まれたばかりの星はまとまって見えるわけだ。これが散開星団である。

 さて疑問がある方もいるだろう。おおぐま座「運動星団」の話じゃなかったのかと。なんでおめえは散開星団なる集団の話をしているのか。

 はい。でももう少し散開星団の話が続きます。

 散開星団として生まれた星たちは、いつまでもそのようにとどまっているわけではない。長期的にはばらばらになってしまう。やけに高齢の散開星団というのもあるので、たまたま崩壊しないまま長くとどまる星団というのもあるにはあるのだが、まあ大抵はそうである。だから、散開星団を作っている星は若い星、ということが多い。

 なぜ散開星団が崩れていってしまうかと言うと、要するに、他の星と遭遇するからである。散開星団というのはごくごくゆるい重力的なつながりだから、その外側から重力的に相互作用が働けばいともかんたんに崩れてしまう。太陽も昔は、一緒に生まれた仲間がいたのだろうか?そうかもしれないが、それはもう文字通り宇宙空間に埋もれてしまってわからない。

 さて、そのことを踏まえて、崩れかかっている途中の段階の星団のことを考えてみる。

 もともとコンパクトにまとまって星団となっていたはずの星は大きく広がって、星団としてのまとまりは失われつつあるような状態のことだ。どれくらい散らばっているかにもよるけれど、例えば北斗七星は多くの星座と同じくらいの大きさがあるわけで、それは普通は星の集まりには見えない。

 でも、かすかな手がかりはある。

 生まれが一緒なので、星として動く方向が一緒なのだ。

 星は宇宙空間に静止しているわけではない。恒星というくらいで、動かないような印象があるのは、たんに非常に遠方にあるため、それとわからないだけである。なので、高精度の観測をすれば位置の変化は分かる。これを固有運動という。

 星団を作る星は、固有運動がほぼ似通っている。ほぼ、というのはもちろん、外部の影響で多少のばらつきはあり、それゆえに拡散しはじめているからなわけだけど。

 そのため、散らばり始めた星団はいっけんして星団のように見えなくても、固有運動が同じということで元々は同じ星団のメンバーだったということが分かる。

 こういう星団は散開星団のなれのはてのようなものである。これが、運動星団、と呼ばれるものだ。

 おおぐま座運動星団は、だいたい5億歳くらいと思われている。北斗七星の真ん中の5つのほかにも全天にいくつかこのメンバーの星が散らばっている。

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