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すごいぞテイラースウィフトさん

「これが世界か…」公演終了後、自分の横を歩いていた青年が漏らした言葉だ。

偶然お誘いいただいた、エド・シーランのLIVEで洋楽の良さに気づき、それまで全く気にも留めていなかったジャンルだったが、興味が湧いた。その界隈が騒がしいので何かと思ったら、あのテイラー・スウィフトが、来日公演をするというではないか。高校時代、意味もわからずよく聴いていたなと思いながら、これはこの界隈に一気にのめり込める機会になるだろうし、雰囲気だけでも味わおうと思い、リセールで粘った。
3日にかけ計6時間ぐらいだろうか、ステージサイド席ではあるのの、無事公演2日目である2/8のチケットを入手することができた。翌2/9に有給を取得し、石垣島に行く事が決定していたので、前日午後に休む事は、流石に烏滸がましいと思い、定時退社で東京ドームに駆けつけることにした。雰囲気を味わえば良いのでなどとぬかしながら。

迎えた当日、定時に仕事を終わらせ、爆速で東京ドームへ。水道橋着時点で既に18時40分。LIVEは18時から既に始まっている。野球ファンというアドバンテージがあるにも関わらず、57ゲートが分からず、外周通路をウロウロしてしまった。現在地がわからなかったので、覆われていたカーテンをめくって、会場を覗いてみた。
「champagne problems」の演奏中だった。ステージ中央にスポットライトが降り注がれている。黄色いドレスに身を包み、ピアノの弾き語りをしているテイラーの姿があった。あまりの美しさに、その場に立ち尽くしてしまった。
ここは東京ドームなのか?日頃、野球観戦でげんなりした気分で帰る場所とは到底思えなかった。「働け金子」コールが起きた同じ場所にしてはあまりに刺激が強すぎる。

今回のワールドツアーはERAS TOURと称し、時代順に名曲の数々が披露されている。彼女がその名を轟かせる事になったカントリー音楽に始まり、最新曲まで歌いあげる。もちろん日本人には馴染みがある、「we are never ever get back together」や、「shake it off」といったメジャーな曲も披露してくれる。
一曲終わる毎に、ため息が漏れる。もちろん良い意味で。グラミー賞受賞アルバム『Midnights』の曲は開演から3時間弱経ってから披露されるという楽曲層の厚さ。大トリで披露された曲は、「良い事も悪い事も全て自分へ返ってくる」と高らかに歌う「Karma」だ。とてもLIVE映えする曲で、時代を追ってきたツアーの最後に相応しい壮大なラストであった。

楽曲が素晴らしいのは勿論だが、なぜテイラーはここまで支持されるのか。最終日4日目のLIVE終了時。ライトスタンドからはテイラーの退場時の姿を見る事ができる。彼女が姿を見せると、これから巨大なセットの撤去作業をするであろう、整列中の多数の作業員に対して拍手を送っていた。4日間の公演を終えた達成感や安堵感があるであろう瞬間に、この対応ができる人間がどれほどいるだろうか。こういった配慮ができる人間だからこそ、世界中から支持されている所以なのだろう。
3時間15分、45曲。これを4日間やるのだ。しかも恋人が出場するスーパーボールを観戦するためアメリカにとんぼ返り。会社と家を往復しているだけでへばっているのが恥ずかしくなるぐらい、生命としての強さを感じる。この強さに人々は惹かれる。自分も前を向こうと思える。立ち向かっていこうという気にさせてくれる。

以前Mr.ChildrenのLIVEに行った際、ボーカルの桜井和寿が、「音楽とは人間の思い出と共にあり、皆んなの思い出がこちらまで伝わってくる」といったニュアンスの発言をしていたが、テイラーの楽曲にも思い入れがある人間が多くいるだろう。今回のツアーの時代を巡るといったコンセプトが、尚のことそういった感情にさせてくれる。テイラーと一緒に、色濃く記憶が残っている過去に、タイムスリップしたかのように。
人生は音楽と共にあるのだ。人はその時の感情を音楽に託す。やり場のない想いを抱えた時も、アーティストはいつも側にいてそっと寄り添ってくれるのだ。

LIVE終了後、水道橋から離れるのが名残惜しかった。とても時間の進みが早く感じられた。暫くここにいたかった。翌日から旅行という事も忘れ、約1時間意味もなくドームの周りを徘徊してしまうほどだった。
ただの音楽LIVEはない。壮大なショーを観ているような感覚だった。もうこれは世界最高峰のエンターテイメントだ。途中から雰囲気だけ見られれば良いというような、生半可な気持ちで臨むLIVEではなかった。大いに反省している。(テイラー問わず、生半可で参戦して良いLIVEなど存在しないはずだが。)

LIVEでテイラーは「今日の私の目標は、皆んなが今後曲を聴いた時に、今夜の事を思い出すことだ。」と言っていた。2024年2月8日の夜を今後忘れることはないだろう。生きる上での強さと、今後の指針を与えてくれた。現状維持ではダメなんだ、そう駆り立てられるような特別な一夜だった。

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