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僕と僕の中を垣間見る3

そういえば君の父親はしばらく入院していたね。
病院の先生に食道癌だって。
もうそんなに長くないって言われていたんだ。
その当時は聞かされてはいなかったけど。

僕は学校の先生に家に帰りなさいと言われた。
その時僕は何故か察したんだ。
車で病院に連れていかれた。
やっぱりお父さんは死んでいた。


君は泣いていない。全く泣いていない。
周りの人たちは皆泣いているのに
君は泣いていない。
どうして?

僕は何故一粒の涙も流していないのだろう?
お母さんは泣いていた。
妹も泣いていた。
親戚で集まった人達も泣いていた。
僕だけが全く泣いていなかったんだ。
物凄く悲しいはずなのに泣いていなかったんだ。


正直思い出したくなかったよ。
今の君の姿は見るに堪えない。
君だけじゃない。家族そのものをだ。

僕はおかしくなっていた。
お父さんが死んだのに全く涙が流れない。
それに引き換え毎晩毎晩お酒を飲んでは酔っぱらって
お母さんは夜通し泣いている。何だかうるさい。
そうじゃない。嫌、僕はもうおかしい。
何を言ってるんだ、僕は?支離滅裂の状態だ。
全く泣かない自分と毎晩飲んでは暴れているお母さんの間で
僕の心は壊れどこかに消えていった・・・


君に伝えたい。
どうしてもこの時の君に伝えたい。
よく見て、君の心はそこにある。
君の大切な心はそこにあるじゃないか!

僕は今もずっと壊れている。
心が壊れたままだ。
普段は学校に行っている。
学校でくだらない話をしていたり、その後は
仲良しの友達の家で皆とゲーム三昧だ。
笑っているよ。笑っている?
笑っていたよ。笑っていた。顔は凄く笑っていた。


君は高校生になったみたいだね。
見てすぐにわかったよ。
いかにもってやつだ。
君はやっぱり心を引きずっていたんだよね。

俺はいわゆる当時でいうヤンキーだ。
通っていた高校は夜学で自分の名前さえ
漢字でフルネームで書ければ誰でも入れるって学校だった。
制服も自由。好き放題。
頭は金髪でパーマをかけて。
煙草をふかしながら道の真ん中を歩るいている。
周りの人間たちが勝手によけていく。面白い。
世の中、バカばっかりだ。


そう、君は高校生の時好き勝手にやっていた。
昼夜は逆転し、人が寝静まっている時に外へ繰り出し
夜通し友達と遊びに行っては朝に帰ってくる。
とても良い生活とはいえなかったね。
でもそんな君にある事件が訪れたんだったね。


俺は原付に乗って走っている。
義理の姉の家に向かう途中だ。
学校やバイトが嫌でいつも逃げていた場所だ。
優しくしてくれる姉さんが大好きだった。

   キキー!ガンッ!

でかい音がなった。
どうした何がどうなった?
俺は天を仰いで・・・いた?




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