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桜パラレルワールド


天気予報のコーナーで桜前線の北上ぐあいを見て、追いかけて一緒に北へ北へと移動したら、あと1ヶ月くらいは桜の中に居られるんだなと考える。


除雪車がとおる道までの家からすぐの細いところは、毎朝自分たちで雪かき。毎朝だよ。しないと通れないしょ。長い長い冬のあと、桜が咲くと、やっと。やっとだなと思うよね。春を待つ北の国のひとたちの気持ちは、そりゃもう切ないものがあるのさぁ。
雪深い北海道の町に住む伯父のことばだ。



ベランダから見えるのはスコンと晴れた青空なのに、雪。
と思ったら、桜の花びらが舞っていた。
今日は風が強いから、だいぶ散ってしまうだろう。

何回も見てきたこの季節のおなじみの光景なのに、見入ってしまう。花びらの行方を目で追ってしまう。
惜しげも無く散る中を、出来るだけきれいな色のを拾って、手のひらで友だちと比べあって、交換こ。白くて本当にうっすらとピンク色なんだなと気づいた。
チャイムが鳴って、潰さないようにやさしく両手で覆って気をつけて走って帰る。


何回も、何年も、咲いては散り、咲いては散り、めぐる季節を教えてくれるのはあのときと同じ桜だ。


教室で手のひらを開いてみたときに、たくさん拾ったのに数枚しか残っていなかったあのときの、桜。
いま窓の外を舞っているのは、きっとわたしの手の中から行ってしまったひとひら。ひらひらと。

ひらひら。




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