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みっちゃんとカフェラテ


むかし、カフェで働いていたことがある。
開店前の準備が早く終わってほんの一息つけるときに、味見とフォームミルクを作る練習と称して、カフェラテを作って飲んでいた。

カフェに行くと、バリスタさんがシュシュシュシュー!と蒸気の吹き出る音を立てて作業していることがあるが、あれはミルクを温めている音だ。

温め具合によって、また蒸気の入れ具合によってミルクが変わる。
雑にやってしまうと空気が入り過ぎてぶくぶく大きな泡ができてしまう。良い具合に温まり、細かいもっちりとした泡、フォームミルクになるのが成功パターン。フォームドミルク foamed milkというのがほんとうかな。

成功したもっちりむくむくの泡をエスプレッソの上に乗せるとカプチーノ。カフェラテの場合は、むくむく泡だてずに温めたスチームミルクをエスプレッソに注ぐ。ミルクは熱くし過ぎない。牛乳の甘さ、風味が損なわれてしまうから。と教わった。
わたしの好みはもっちりまで行かない、とろりとした柔らかめのフォームミルク。それと落としたてのエスプレッソとのコンビネーションは最高だ。

そして、今でも思い出す、一緒に働いていたみっちゃんのこと。
みっちゃんはテキパキとしていて、明るくて、ねちっこいところもあったりするけど、仕事はとても早くて丁寧で、美味しいものが大好き。わたしより半年先に入っていて、最初にカフェラテを作って飲ませてくれたのもみっちゃんだ。

ベーカリーから届く焼き立てのクロワッサンや、パン・オ・ショコラ、ベリーを乗せたデニッシュ、贅沢に四層に重ねたクロック・ムシュ。
パンの香ばしさを感じながら、トレイいっぱいに並べると必ず乗り切らないものが数個出る。
スタッフの間では、大きな声で言えないけど、それは食べてよし!ということになっていて、ときには店長も一緒に食べることもあった。

その日も一息タイムに2人でカフェラテと共に焼き立てパンを食し、満足してすっかりきれいに片付けて、あと5分で開店だ今日もがんばるぞ的な気分になっていたとき、シフトにアサインされていない店長が入ってきた。
なぜだか焦ったみっちゃんが、いつもよりいっそう元気よく「おはようございます!なにか食べましょうよ〜」と店長を誘う。

書類に目を通しながら気怠そうに、おはよーと言いながら入ってきた店長だったが、答えたひとことは、

「もう食っただろ?」

振り向いたみっちゃんの口のまわりにはクロワッサン・アマンドのかけらと粉砂糖。

あれっバレました〜?と笑うみっちゃんにつられて、店長と大笑いしながらお店の入口を開けに行った。



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