どこかのどなたかへ

こないだ、仕事中に人事部から、お財布を落としていませんか？と電話があった。
あわててカバンの中を探すとやっぱり無い。
ビルの管理センターに届けられているとのことで、取りに行き、いま無事に手元にある。
落としたというか、その日の朝、ビル内のATMに立ち寄り、そこに置き忘れたらしかった。
誰かが届けてくれていて、財布の中に社員証があり、それで人事部に連絡が入ったらしい。いやいや本当に助かった。
しかし、忘れたことにまったく気づいていなかったのでとても驚いて、気をつけなきゃなあと反省する。

そして、たしかに反省はしたのであるが、その日の帰路の駅構内の長いエスカレーターで、斜め後ろからトントンと肩をたたかれる。
ん？知ってるひとがいたのかなと思いつつ振り返ると、これ落としましたよと言われる。その方の手にはメガネ。メガネ！？あ！わたしのだ。やだすいませんありがとうございます！と御礼を言って受け取る。
このときも気づけておらずで、バッグのポケットに入れていたはずなのに何故落としたのかわからない。そして、またしても知らない方に救われた。

どこのどなたかわからないけれど、本当に感謝しかないのだった。まさに、おかげさまです。
わたしも誰かの忘れ物を見つけたら、ちゃんと届けたり、誰かがなにか落としたときに拾って声をかけられるように、こころに余裕を持たなければ。

めぐりめぐって、いつかあなたの大事なものが戻ってくるように。