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マドリッドのマドーナ


学生時代、友だちとスペイン安旅行をした。

マドリッドで、私たち3人がガイドブックを見ながら、ベンチで夜ごはんをどうするか、お腹ペコペコだけど、せっかくだから日本にもあるチェーン店はやめようとか、あーでもないこーでもないと話していると、ニコニコしながらおじさんとおじいさんの間くらいのひとが近づいてきて、どこから来たの?大丈夫?と英語で親切に言ってくれたので、どこか安くて美味しいお店をおしえて。と聞いてみた。

そのひとは眉間にしわを寄せ、伸ばした人差し指を鼻に沿って伸ばし、目を閉じて、う〜〜んとひとしきりうなった。
すごく考えてくれている。
いいひとだなあ。

年齢的には知っているお店はきっとたくさんあるだろう。その中から私たちのために選りすぐりのひとつを選ぼうとしてくれている。

なんていいひとなんだ。

考え込むポーズがまるで古畑任三郎みたいだ。
私たちは静かに見つめながら、じっと回答を待った。
そのひとは、おもむろに、ぱああと明るい顔になって顔を上げ、キラキラした瞳で


マドーナを知っているか?


と聞いてきた。

マドーナ。
マドリッドのマドーナ。
きっとスペインはこれぞマドリッド料理と言われるメニューのお店にちがいない。

知らない知らない!ぜひおしえて!
現地の美味しいものが食べたくて、お願いする私たち。
彼は目を丸くして、なに!?マドーナを知らないのか?それはぜひ行った方がいいぞ。いいか、この道をまっすぐ行って信号を右に曲がってすぐ左側にある。安くてうまい。
と親指を立ててウインクした。

ありがとう!今すぐ行ってみる!会えてよかった!
ディナーをエンジョイしろよ!

とお互い笑顔で握手とハグ。
ついでにという感じで、しれっと、でもちゃっかりとほっぺにかなりぶっちゅ〜!と言う感じでキスされて、笑顔ひきつる3人。
でもいいや。手頃な値段で美味しいお店を教えてもらえたのだから。現地の人オススメなんだから、観光客は行かない穴場だろう。
私たち3人が嬉々として信号を右に曲がり、見つけたそのお店は。


マドーナ。


そう。昨夜わたしが行くか迷ったカタカナ6文字のハンバーガーチェーン店。大きな頭文字の看板を見て目が点になった。
日本語との発音というか、もはや発声が違いすぎ。
よく聞いたら、やだそう言ってたね、たしかに。日本にはマドーナが無いと思われたかもと3人で笑ってから、マドーナではなく、近くのカフェでオムレツかなにかを食べた。

そして今日はポテトセット。
はい。揚げたて美味しくて大満足。
食べながら、マドーナのことを思い出していた。


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