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抱かれた記憶


なぜそんな話になったのか、今では思い出せないのだけど、著名人との出会いについて話をしていた。

あのひとは強面だけど、偶然、信号待ちで一緒になり、握手を求めたところ快く応じてくれて笑顔が最高だった。
向こうから歩いてくるひとに同じ会社のスタッフかと思って「お疲れさまです」と声をかけたら、先方もにっこりしながら「お疲れさまです」と返してくれたのだが、よく見たら有名なあのひとだった。
劇場でアンコールの後、明るくなって隣を見たらいつも画面でしか見たことない誰それが座っていたけど、緊張して話しかけられなかったことを後悔している。などなど。

誰もに顔を知られているようなひとでも、人間だもの、信号待ちもするし、お疲れさまですと挨拶もするし、ひとり劇場でアンコールをすることもあるだろう。
それぞれのエピソードがなかなか面白くて、へえ〜ほお〜と言いながらみんなで話していたところ、ニコニコしながら聞いていたモンちゃんが、

「わたし、〇〇元総理に抱かれたことあります」

と言った。
モンちゃんは地元の田舎で唯一のスーパーの次女で、アメリカの大学を卒業した、すらりとした美人だ。
一瞬、みんなが、えっと驚いたのだが、政財界のお偉いさんにはこういう若いきれいな子と一夜を共にできるだけの財力と権力があって、実際耳にするのは初めてだけど、そういう経験しているひとはいるんだろう、いるんだと思ってた。へ、へえ〜へえ〜と全員がへえボタン連打。
ニコニコはそのままで

「地元が一緒なんですよ」

とさらにモンちゃんが言う。
ああ、地元つながり。そういう時にも地元というのは大きな役割を果たしているのか。選挙の手伝いのアルバイトしてたりしたのかな、その時、君もXX町なのか、そうか偶然だな、私もだ。今度一緒に食事でも。の流れから始まったのか。
だだだ大学生の時?いや、大学はアメリカだよね、じゃあ、高校生の時?と誰かが聞いて、うそお!と声が上がり、あ、もしかして最近?とまた誰かが言って、
わたしはいやーんいつの間に?とムンクの叫び状態で顔を赤らめた。


「3歳くらいの時ですかね。なんか写真が残ってて。選挙運動で演説とかした後なのかなあ、抱かれてるんですよね。母親も一緒に写ってるんですけど。」


全員の顔が一瞬ぽかんとした後、大爆笑だった。









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