これからの中学校の進路指導って…
昨年担任をして卒業させた女子生徒Aが中学校に訪問してきた。
要件は、ちがう高校に転学したいので情報が欲しいということだった。
Aはサッカーが好きだった。だから女子サッカー部の強豪校に進学した。だけど、そのサッカー部が合わなかった。1学期と夏休みは何とか頑張ったが、2学期から不登校状態に。学校に行けなくなった…。
Aと会った後、昨年の進路懇談で、冗談交じりで言った会話を思い出した。
「Aの性格で強豪校でやっていけるかあ?メンタル強せなな~!!」
「大丈夫!!サッカーやりたいねん!!」
あの時、止めておけばよかったのか…。
後悔が残ったが、A自身が決めた進路。これもまたAの人生にとっては必要なことなのかもなと思い、定期的に連絡をとって、これからの再出発を一緒に考えていく決意をした。
今回のAの場合は、積極的に捉えやすい。自分でやりたいことを見つけ、進路先を決断。この失敗で「自分がどんな人間か」気づきがあったのだとA自身が思えれば、これから前へも進めるはずだ。
こんなことがこの10年間で何回もある。転学したい、編入したい、辞めたい、卒業生たちはいろんな相談にくる。もちろん、Aのような積極的な捉え方も出来ない場面も多い。その度に思う。
「進路指導って何なのだろうか…」
全日制の高校に進学させることが進路指導ではない。高等学校だけでも定時制や通信制、専門学科などたくさんの選択肢がある。他にも、専門学校、海外の学校、就職など、自分の人生を考えていくうえで、義務教育の中学校を卒業したら、いろんな選択肢があって当然だ。
むしろ、情報も人も国境を軽々と越えていける現代社会。ダイバーシティという言葉が日本においても一般化してきたこの時代は、生徒たちが生きる生活環境も多様化してきている。それぞれの多様な進路の選択肢があるべきで、高校に行くことが全てではない。
だとすれば、進路指導の捉え方を変えなければならない。
<これまでの進路指導>
高校進学を目指して、3年間勉強をする。
より良い点数をとるために、テスト前は勉強しなければならない。
より良い成績をとるために、出された提出物は必ず出さないといけない。
3年生の進路懇談では、「お前はこれまで頑張って来なかったからここの高校しか行けない」などと言われ、3年間の頑張りを評価される。
そもそも勉強や学びは、自分自身を磨き上げるためにするもので、他人と比較されるためにするのではない。自分の人生をより充実させ、切り開くことが目的のはずなのに、全く的外れだ。
<これからの進路指導>
「自分ってどんな性格なんだろう?」
「自分にはどんなスタイルが合ってるんだろう?」
「自分の好きなこと、得意なことって何だろう?」
これまでのさまざまな体験を振り返らせて考える。そして、中学校生活を通して深めていく。そのためには、自分とはちがう多様な出会いがなければならない。
そんな出会いを重ねて、自分のことについて深めた3年生の進路懇談では、
「私は演劇したいから、養成所に行きたいんです」
「英語を勉強したいから、留学します」
「定時制で勉強しながら、すし職人になるためにアルバイトから頑張ります」
「私の性格には〇〇高校が合ってると思うので、ここに進学したいです」
いろんなパターンがあるが、自分で進路を積極的に捉えられるような懇談になるべきだ。そのためには、教科指導の在り方、テストの在り方、評価の在り方、学級の在り方、部活動の在り方など、教師側も幅広く見方を変えていかなくてはいけない。さらに、たくさんのシステム的な課題もある。
でも…
公立中学校は多様な環境、多様な個性と出会わせることができる。多様性との出会いの中で、自分自身を確立し、自分の人生を切り開くヒントをたくさん与えられる。
誰一人取り残さない教育活動ができる公教育はまだまだ変化できる。
進路指導の在り方について、これからも模索し続けながら、公教育の可能性を広げていきたい。
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