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今年度4カ月間休んだ担任がクラスで最後に伝えたこと

2/27(木)、首相から大きな決断があった。

全国一斉休校

「えっ…。もう教室で生徒たちと過ごせないの…」

素直にそう思った。

担任にとって、年度末の3月は必ず心のスイッチが入る。1年所属だろうが、2年所属だろうが、3年所属だろうが、子どもたちには、希望をもって次のステップへと向かってほしいから。

僕の場合は、それにプラスして特別な想いがあった。

1か月の時間外勤務、平均200時間。こんな生活が1年ちょっと続いた。そのせいで、今年度は、学年主任、担任、部活動の主顧問であるにも関わらず、働きすぎて、4か月間体調を崩した。子どもたちをはじめ、たくさんの人に、とてもとても迷惑をかけた。

もう一つ。今年度で別の学校へ、転勤になる可能性も大きかった。

だから、

「僕に返せるものがあれば全力で返していかないといけない」

これまでにない強い想いでいた。

そのさなかに、生徒たちと過ごす最後の日が、突然やってきた。

 2/28(金)、所属する市の教育委員会からの通達がくる。首相の発表が急であったため、休校時の体制の詳細を確実に伝えるためにも、休校開始を3/3(火)にすると。土日は不要不急の外出は避けてもらい、3/2(月)は、休校時の体制と最後の学活等も含め、午前中登校させることになった。

 土日の時間が出来た。だから、とりあえず伝えたいことを学級通信にまとめて、みんなに届けようと思った。

僕は基本的に毎日通信を書く。

何気ないことをなんとなく書いている学級通信。

最後は何を書こうか迷った…

4カ月間、学校を空白にしていた僕が、みんなに伝えられることは何か…

みんながみんなのままで、自分に自信を持って、次のステップに向かうために、何を伝えようか…

迷って迷って、決めた。

僕が、休んでいた4カ月間、悩んで悩んで、突き詰め続けた

「幸せ」

について書こうと。

ちょっと中学生にとっては、壮大で難しい話かもしれないけど、今しか伝えられないことだと思ったから、これに決めた。

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<今年度最後の学級通信>

「みんなに考えてほしい「幸せ」についての3つの質問」

 1年間の締めくくりとして、〇組のみんなにどんなことを書こうか…とてもとても迷いました。考え抜いた結果、「幸せ」について、3つの質問を残そうと思いました。4ヶ月間体調を崩したからこそ書ける文章だし、今の僕にしか伝えられないことかなと思ったからです。少し壮大で難しいかもしれませんが、保護者の方と一緒に、最後まで読んでくれるとうれしいです。

1つ目の質問です。


 「幸せな人生を送りたいですか?」

みんなはこの質問にどう答えるでしょうか。まさか、「いいえ」と答える人はいませんよね?(笑)

では、2つ目の質問。


 「あなたが考える幸せな人生ってどのような人生ですか?」

これ、今、具体的に答えれますか? 意外と難しくないですか?
実は、僕も最近やっと答えられるようになりました。

僕にとっての「幸せ」を伝えてみたいと思います。2つあります。

1つ目は、家族と過ごす時間を大切にしたいということです。今は2人の娘と奥さんの4人家族です。毎日小学校や保育園の話を聞くことが楽しいです。上の娘は友だち関係、学校の勉強とかで悩んでいて色々話してくれますが、あんまり細かいことは言わず、「がんばれ~」と言ってます。下の娘は、楽しく毎日遊びまくっています。一人でお人形ごっことか言って1時間以上遊びます。よく一人で遊べるなと思いながら、ほのぼの見ています。奥さんは最近、右手首をケガしてしまい、家事ができません。代わりに僕がすることになっているのですが、これが大変で、奥さんの偉大さを感じています…笑

2つ目は、中学校教師という仕事に、自分の強みを全面に出して全力を注ぎたいということです。実は体調を崩した4ヶ月間、仕事を変えようかとても悩みました。機会があれば、みんなに悩んでいた時の話がゆっくり出来たらと思っていたのですが、時間が無かったですね。結論だけいうと、みんなが幸せに生きていくための学びに少しでも自分が関わっていたいと思ったから、仕事を変えるのはやめました。「仕事だからやらなければならない」「お金を稼がなくてはいけない」という意識ではなくて、みんなとともに過ごす時間自体が「僕にとっての幸せ」なんです。4ヶ月間休んで復帰したからこそ感じます。復帰後は、とてもとても短かったけど、みんなと過ごせた時間が、本当に楽しかったし幸せだったと…。

休んで悩んだからこそ、僕にできる仕事はこれしかないと、今は確信しています。

「幸せ」の形って人それぞれです。

例えば、「独身で休みなく仕事しまくってる人」がめちゃめちゃ幸せかもしれない。「定職につかずアルバイトで生活している人」がめちゃめちゃ幸せを感じているかもしれない。

「かしこい高校に通い、有名な大学を卒業、大企業に就職して、結婚して、家を買って、子どもがいて」っていう人生が、ある人にとっては幸せとは感じないかもしれないし、ある人にとっては幸せと感じることなのかもしれない。

どんな形でもいいんです。肝心なことは、その人が幸せと感じられる人生を送っているかどうかです。「幸せの形」を人と比べる必要もありません。

この世に生まれたすべての人に「幸せになる権利」があります。生まれてきた環境、育ってきた環境はちがいますが、みんな一人ひとりの形で、幸せを追求していけるんです。だから〇組のみんなにもあります。みんなには、これから、「幸せ」についていっぱい考えて考えて、「自分だけにしかない幸せの形」を見つけていってほしいなと思っています。

さて、少し大きな話になってしまいましたが、ここからは具体的な話です。

3つ目、最後の質問です。

「自分だけにしかない幸せを見つけるために、中学生のみんながしなくちゃいけないことは何だと思いますか?」

残りの中学校生活の2年間、みんながそれぞれの幸せを見つけるために、どんなことをしないといけないかということです。一斉休校となって時間が出来ました。少しでもいいから考えてほしいなと思います。

僕なりのアドバイスを2つしておこうと思います。

1つ目は、たくさんの人を知ること

大人や子ども関係なく、いろんな人を知ることが大事です。単なる仲良しではなくて、奥深く知ることです。どんな生活をしていて、どんな性格で、どんなことを感じて、どんなことに悩んでいて…などなど、いろんなことを自分から知ってください。たくさんの人と出会うことで、自分の幸せの形であったり、その人の幸せの形について考えることができます。

僕は、この〇〇中学校に来て、たくさんの生徒たち、たくさんの保護者の方、たくさんの先生方から、いろんな気づきを得ました。そして、僕自身の在り方について、たくさん悩んで悩んで悩んで、悩み抜いた結果、自分らしい幸せの形が見えてきました。

2つ目は、チャレンジャーになること

自分が「良いな!」「したいな!」と思ったことは絶対するべきです。そして、誰かからの頼まれごとは、「嫌だな…」「しんどいな…」と思っても、とりあえずするべきです。

「ダンスしたい」「エレクトーンしたい」「部活動もしたい」「委員会もしたい」「英語しゃべれるようになりたい」「勉強もしなきゃ」、たくさんしたいことを持っている人は、どんどんチャレンジです。

もちろん逆の人もいてイイんですよ。何するにも「面倒くせぇな~」と思ってる人、自分をダメなやつなんて思わないでくださいね。そんなの当たり前ですから。でも、ちょっとでもやってみようかなと思えることがあったら、それに本気で取り組んでみてください。学校の勉強じゃなくてもいいんです。スケボーでも、ゲームでも、YOUTUBEでも、何でもいい。本気で取り組むことで、きっといろんな気づきがあるはずです。

ここで、チャレンジャーになるための大きなポイントを伝えておきます。チャレンジするということは、誰よりも多く失敗するということです。これが意外とダメージ大きいんです。僕は、〇〇中学校でたくさんのチャレンジをしました。それだけに、失敗もたくさんあって、正直、心身ともに限界でした。でも、そのチャレンジがあったから、今の僕がいます。もう一度、教師でがんばろうと思える自分がいるんです。

〇組のみんなには、ぜひ、中学校生活の中で、失敗を恐れない人になってほしい、というか失敗の天才になってしまえ!!

失敗は何も恥ずかしいことじゃない。堂々と失敗しまくったらいいんです!怒られる、叱られることが多い人は、それだけチャレンジが多い証拠なのかもしれませんよ。

DO ! DO!! DO!!! 

行動してみて初めて分かることがたくさんありますから。 

最後に…

4月からのみんなの姿を楽しみにしています。

〇組のみんなが自分自身の幸せに向かって、いろんな人と出会い、いろんな人の「幸せ」について考えて、いっぱいチャレンジして、いっぱい失敗している姿…

想像するだけでワクワクします。

みんなには大きな力があります。失敗は恥ずかしいことじゃない。

自分自身の幸せの形は、絶対に見つかります。

これからもずっとずっと応援しています。

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生徒たちにどこまで届いているのか…

4カ月間を空白にした教師に何の説得力もないか…

本当にこんな通信出していいんだろうか…

正直、僕の心の中は不安が渦巻いていた。

4カ月間の休みに入る前の僕は、こんなリアルな通信を書けるような人じゃなかった。教師として体裁を整えて、世間一般的に通用するような内容しか書けなかった。真面目に仕事をしているけど、実は体裁だけ整えてる心の弱い教師だった。

通信を書き終わって感じた。

「人間って、1回死にかけると強くなるもんだな…」

今、自分が感じていることをリアルに伝える。

今、子どもたちが幸せになることに全力を尽くそうとする姿勢こそが、未来を創っていくことになる。

その過程に関われる教師という仕事に誇りを感じる。

そんなことを感じた、最後の学級通信作成となった。

公教育を担う教師の出会いの数と種類は半端ない。毎日が多様な出会いに溢れている。だからこそ、公教育の可能性は無限大に広がっている。

今まで出会ったすべての人たちに感謝したい。

本当にありがとうございました。

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