見出し画像

子どもたちは「中学校に行かない」という選択肢も持っている

「学校に行きたくない…」

そんな相談は学期に1回は必ず出てくる。朝起きるのが苦手だったり、人間関係の悩みだったり、人混みや集団生活が苦手だったり、音に敏感だったり、はたまた、全然学校とはちがうところに原因があったり、その理由はさまざまだ。

先日、僕が担任しているクラスのAの保護者からも相談が入った。

Aは3週間前くらいから休みが目立ってきた。

Aの保護者からは、

「体がだるいそうで、今日は体調不良で休ませます」

という電話だった。初期は、「2日間休んで、3日間は登校する」といったリズムが続いた。徐々に多くなっていき、この1週間は1日しか登校できなかった。

学校に登校した日は、いつもと変わらないAの姿がある。授業にも真面目に取り組み、係活動なども積極的にこなし、責任感も強い。

「大丈夫か?」

と軽く声をかけてみても、

「大丈夫!」

といつもの声が返ってくる。生徒対象に最近行った「学校生活アンケート」にも、学校は楽しいという内容が書かれたアンケート結果が返ってきた。

以下、週末のAの保護者の方からの相談だ。

 【相談内容】

  もうどうしたら良いか分からなくて…

  朝起きると身体がだるくて、動けない時がある。

  調子が良ければ、ごはんは食べられる。

  ただ、ひどいときは、一日中食事もとれない状態になってしまう。

  その時は、ベッドからも動けない。

  病院に行っても、何も病的なものはないから大丈夫と言われた。

  学校に行ける日は、本当にパッ起きて、元気よく学校に行く。

  私もよく分からないんです。どうしたら良いでしょうか?

保護者の方も迷われていた。僕の返事はとりあえず、

 【僕がした返事】

  学校に登校できた日は、普通に生活できています。

  ですが、本当は友だち関係で悩んでいるのかもしれません。

  部活動のことで悩んでいるのかもしれません。

  勉強に嫌気がさしているのかもしれない。

  もしかしたら、学校の集団生活に違和感を感じているのかもしれない。

  わからないので、A本人にも、それから周囲にも探りを入れてみます。

  ただ、本当に身体がだるくて、しびれて動けないのかもしれません。

  もう一度病院の方にも行って、診てもらってきてくださいませんか?

  あと、登校の刺激はあまり入れないようにしてもらえませんか?

  焦らないでいきましょう。

  また来週様子をみながら対応を考えましょう。

Aが、なぜ3学期になって登校を渋りだしたのかは、正直まだ分からない。僕の心の中はとても不安だった。でも、しっかりと本気で向き合っていかなくてはいけない。そんな責任感がふつふつ湧いてきた週末になった。

僕は、「不登校」という言葉があまり好きではない。かといって、変わりの言葉があるかと言われると、「登校拒否」も好きではないし、妥当な言葉がスッと出てこない…

何というか、中学校に行けない日、行かない日があっても良いと思っている。極端に言えば、行けない期間、行かない期間が長くなっても良いし、3年間行けない、行かないでも構わないと考えている。それが最悪の結果だとも思っていない。長い人生、遅かれ早かれそんな時期が必ずある。

その代わり僕は、そのような生徒とは全力で関わるし、さまざまなサポートをする。時には毎日のように家に通う。強引に家に上がり込むこともある。放課後の学校に呼んで、教室で何かする時もある。クラスメイトを朝の登校時に家まで迎えに行かせることもあれば、放課後に声をかけに行かせることもある。全く関係のない先生に頼んで会いに行ってもらうこともあるし、お菓子だけを食べに家庭訪問することもある。

もしかしたら、学校に登校出来てる生徒よりも、その生徒のことを考えているかもしれない。誰一人見捨てることのない公教育が僕の信念だから。

公教育は、学校の校舎内、敷地内、学校行事、部活動、授業の中だけで完結するものではない。だから、僕にとって学校に来てるか来ていないかはあまり大きな問題ではない。学校外でも、公教育が担うべきものは与えられるのではないだろうか…

公立中学校の教室の中は社会の縮図だ。現代の日本社会の鏡だ。そこから目を背けたくなることは私たち大人でもあるんだから、子どもたちにだってある。

だから、逃げたっていい。

むしろ、逃げるということは、いろいろ考えている、考えすぎて考えすぎて、もうパンク状態の証拠だ。

とてもよく頑張っている。

だから、

「学校に行かない」

という選択肢があっていい。

その状態を受け入れて、次の道へ進むヒントを僕たち公教育を担う者が差し出さなくてはいけないのだと思う。

「中学校に行かない」=「悪いやつ」「出来ないやつ」「ダメなやつ」

そんな時代の終わりを告げたい。

こんなことを想う今日この頃だ…

  



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?