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「それって食べれる?」

昔、海中を眺める船に乗ったことがある。
スタッフのお姉さんが魚を指さしてお話してくれて、釣りに目覚めた6才のコウは「あれはメバル?」「よく知ってるね!でもあれはカサゴ」とおしゃべりしている。

コウ「カサゴって食べれる?」
スタッフのお姉さん「美味しいよ。あ、あれはイシダイ」
コウ「それって食べれる?」
スタッフのお姉さん「イシダイ美味しいよ!そういえば1週間前、このあたりでイルカが見れたんだよ」
コウ「それって食べれる?」
親「どんだけだよ」

ランチのメニュー表を見ているような感覚で海底を見ているらしいコウだった。
当時のコウは幼稚園児。概ね野菜は好まなかったし、機会があればお腹いっぱいのお菓子を食べたがった。
釣りで釣った魚はフライでよく食べたが、基本的にはその日の気分でご飯を選り好みしていた。

そんなコウも幼稚園、小学生に成長するにつれて少しづつ嫌がらず食べるものが増えていったように思う。「それって食べれる?」の好奇心は「それって美味しい?」につながっている。

こんなこともあった。秋キャンプの夜中にタイが釣れた。帰ってコウがさばいているとタイの口の中から寄生虫タイノエがこんにちわしていた。「これ見たことある!」と"ゆかいないきもの図鑑"を部屋に取りに走った。タイノエは白くて大きなダンゴムシの見た目で平和そうな瞳をしているが、鯛の舌に替わって口の中に鎮座する、ちょっとグロテスクなやつだ。鯛はやっぱりフライで頂いた。釣果以外で買った魚たちを一夜干し、煮つけ、刺身で食べた。昔より美味しいと食べる料理が増えていた。

そして、この前みんなで高知に本場のカツオのたたきを食べに行った。最近はスーパーでカツオのたたきのハズレに何度もあたったせいで長い事ご無沙汰だった。好物なのに。高知県ならば美味しいカツオのたたきがあるに違いないと思っていたところだった。

そして実際大変美味しかった。思った以上に肉厚な切り身は全然臭みがない。塩とポン酢で頂いたが、中学生のコウはポン酢推し。付け合わせの薄い玉葱とシソを合わせるともっと美味しい。赤身の弾力とポン酢の酸味が仲良く永遠に味わえる。

ウツボのから揚げも食べた。むちむちとして最高の美味しさだった。あのむちむちはどこから来るのだろうか。あの強面のウツボから想像もつかない。強面と言えば暗殺者みたいな顔のエソ(夜にやたら釣れる)が頭をよぎった。エソは骨が多いのでツミレにしたらミキサーが死んでしまった悲しい思い出がある。勝手に仲間にしてしまったけどとにかくウツボは美味しい。調べたらウツボも骨が大変らしい。板前さんは偉大だ。

馬刺しも初めて食べた。牛肉を生で食べたらこんな感じかな?以上の感想が出なかったけど、シソと生姜のコラボレーションは最高のタッグだった。しかし優勝はカツオのたたきだ。

「それって食べれるの?」リストが空白になることはないだろう。コウの食べてみたいものといえばチヌとメバチらしい。しかも自分で釣ったもの。チヌ(クロダイ)は海岸でたまに見かけるがメバチはよくわからなかった。コウ曰く「カツオの仲間。」岸釣りの限界を超えなければ無理なやつだ。狙って釣れるようになった魚はあるにはあるが、70センチのコブダイが最大だ。メバチはもっと大きい。初めて食べたコブダイは身がつまってほのかな甘味でごく美味だった。タイの上位互換が来たと思った。コブダイが岸釣りの限界だろうと私は感じているが、きっとコウはまだまだ諦めないだろう。

食べたいと思って食べるものほど元気をもらえる。本場のカツオのたたきは最高に美味しかった。ポン酢はカツオのたたきのためにあるのに違いない。また高知に行きたい。チヌとメバチもきっと美味い。いつか彼らを釣る日が来るに違いない。


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