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キッチンカー開業と成功の手引き【99.9%の失敗を防ぐ方法】

目次 ​

●まえがき
●参考資料・URL
1.初期経費
(1)実際にいくらかかった?
(2)借入先はどこ?
(3)クラウドファンディングはどうなの?
2.資格・保険・各所手続き
(1)開業届と確定申告
(2)食品衛生責任者講習
(3)営業許可証
(4)仕込み場所の確保とHACCP
(5)車両の任意保険とPL保険
3.キッチンカー作製
(1)キッチンカーのスタイル
(2)作製で注意すべきこと
(3)積載する什器について
【オススメ業者】
4.商品・価格を決める
(1)現場の作業工程が少なく、簡単な商品
(2)流行りモノを真似する
(3)独自性があり差別化する商品
(4)利益を生む商品
(5)客単価を上げる商品
【オススメ業者】
5.広告とは行動させること
(1)広告を定義しよう
(2)お客様を熱狂的なファンにするまで
(3)AISASで効果的な広告を出そう
(4)広告は広告にならない
6.インターネット集客
(1)お客様はULSSASの奴隷
(2)ホームページがTOP営業マン
(3)Googleは猟奇的ストーカー
(4)Facebookは織田信長
(5)Instagramしか勝たん
(6)Twitterは地味なスピードスター
(7)LINE公式でLTVを高める
7.出店先確保
(1)他のキッチンカーの真似をする
(2)トライ&エラー
(3)出店先でのサービスのコツ
(4)イベントに参加してなんぼ
(5)仲介会社に登録する?
8.ブランディングで魅了する
(1)ブランディングとは何か
(2)プロダクトブランディング
(3)ストアブランディング
(4)オンラインブランディング
(5)エンターティンメントブランディング
●おわりに


まえがき

 キッチンカーがここ10年で大変な人気になってきている。人気というのは、お客様や出店依頼をしたい人(イベント主催者等)からの需要はもちろんのこと、「キッチンカーをやってみたい」という供給する側の数も相当増えてきている。 そして、2020年のコロナ騒動により、キッチンカーはかつてのムーディ勝山のごとく、うなぎのぼりに人気者となった。はたして、この人気は「右から左へ受け流す」形で秒速で過ぎ去っていくのか。この激戦のキッチンカー時代を生き抜いていくにはどうしたらよいのだろうか。

といったキッチンカー時代ではあるが、僕の正直な意見を申し上げたい。キッチンカーはかなりの需要はあるにもかかわらず、

「キッチンカーを供給する側の質は低い」

結果としてキッチンカー開業から3年で70%が姿を消しているようだ。

 なぜか考えてみた。
 キッチンカーは飲食業であるにも関わらず、プロの料理人はやりたがらない。常にやりたがるのは素人。しかも初期費用が小さいため開業する敷居がとてつもなく低い。これがキッチンカーの質が低い最大の理由であると僕は思っている。言い換えれば、キッチンカーは強者がいない、「ブルーオーシャン(競争率が低く、未開拓)」な分野でもあるということ。つまり、しっかり戦略をもってやれば、一強になれるはずである。

 飲食業は本来ものすごく難しい。僕はニュージーランドで飲食業の経営の仕事をしていたとき、「飲食業は絶対にやってはいけない職業だ」と肌で感じた。僕が属していた会社は、大都市のオークランドで人気の大衆向けレストランと居酒屋を買収した。それらの経営を見直し、再現性を持たせて、多店舗化しようしていた。どちらの店舗も現地の誰が見ても人気店であった。しかし、PL(収支計算書)を見て僕は驚愕した。確かに売上は良い。しかし、利益率は物凄く低い。薄利多売とはこのことだった。しかも、働いているスタッフは疲弊し、スタッフの満足度も低かった。そんな飲食店の現実や裏側をみて、僕は結論を出した。

料理が一流でも決してうまくいかない。

質の良いマーケティング(販売戦略)の知識と実践がとても重要だ。

と。そして、日本に帰国した時は飲食業以外のことで起業しようと心に誓ったのを今でも鮮明に覚えている。
 だが、人生は不思議なもので、帰国直前のニュージーランド縦断の旅で、僕は度肝を抜かれた。旅先で何気なく買ったフライドポテト。それを食べたとき、僕は一瞬で決断した。

「本物のフライドポテトを日本で流行らせよう」


【フライドポテトへの想いを語った動画はコチラ☝】

 【起業までのストーリーはコチラ☝東洋経済オンライン2021,9】

 そうして現在、僕は飲食業を生業としている。2019年4月北海道にて、アソンブロッソ北海道を開業した。キッチンカーから始まり、たった一年で、実店舗、提携店、フランチャイズキッチンカー(愛知県名古屋)を展開することができた。2020年のコロナウイルスにも負けそうになりながらも、2021年は順調に売上を伸ばし、同年12月にはフランチャイズキッチンカーが東京にもオープン。
 これらの業績はキッチンカーという業態が功を奏していると僕は思っている。それどころか、全国の百貨店の催事出店、シンガポールへの輸出など、着々と僕の作るハンドカットフライズ(フライドポテト)の波紋が広がりつつある。

 本書「キッチンカー開業の手引き2.0」は、惜しみもなく僕の実践から生まれた考えや知識が綴られた超具体的手法である。この内容の通り進めることができるならば、あなたのキッチンカー開業の失敗の99%を防ぐことができる。残りの1%は不運によるものだということにしよう。
 でも大丈夫。ここまで読んでくれたあなたはきっと強運の持ち主だ、だって僕と出会うことができたのだから。

本書を書くにあたり参考にした資料・URLを先に記載しておこう。


参考URL・参考資料


・YouTubeキッチンカー&マーケティング【アソブロ通信局】https://www.youtube.com/channel/UCcVYazRUithrKU9QZ8U_5xw

・UR-Uオンラインビジネススクール
https://www.ur-uni.com/

・神田昌典『あなたの会社が90日で儲かる!』
 フォレスト出版,1999年12月

・ドルー・エリック・ホイットマン『現代広告の心理技術101』
 ダイレクト出版,2011年12月

・ニール・イヤール,ライアン・フーバー『Hookedハマるしかけ』
 翔泳社,2014年5月

・田所雅之『入門 起業の科学』日経BP,2019年3月

・日経デジタルマーケティング『マーケテイング基礎読本増補改訂版』
 日経BP,2017年4月

・ダニエル・ピンク『モチベーション3.0』講談社,2015年11月

・西野亮廣『新・魔法のコンパス』角川文庫,2019年5月

・アニンディア・ゴーシュ『スマホで買ってしまう9つの理由Tap』
 日経BP,2018年11月

・高桑隆『飲食店経営の数字が分かるマネジメント』同友館,2008年3月


1.初期経費


(1) 実際にいくらかかった?
 初期の借入額は450万円。経費については約320万円。ざっくり項目としては「キッチンカー」「資格・保険」「什器」「販促品」である。これに合わせて初月の「食材費・包材費」がかかってくる。ランニングコストも考慮して、約400万円あればキッチンカーの開業が可能であるかと思う(表1を参照)。

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(2) 借入先はどこ?
 借入先は「日本政策金融公庫」「地域の信用金庫」が良いだろう。色々と制度があるが、無担保・無保証で借りられ、金利も2%以下に抑えることができる。参考までにアソンブロッソは日本政策金融公庫は1.7%、信用金庫は1.1%の金利である。(あくまで参考なので全員に該当する数字ではない。)

 その他、地域の「商工会議所」や「よろず支援拠点」に事前に相談するのもよいだろう。無償で開業までに色々と相談に乗ってくれる。他にも開業にあたり各自治体の助成金(返済しなくてよいもの)が該当することがあるので、必ず市役所にも確認を取ろう。よくあるのは、地元食材を生かした商品などを販売する時には、助成金を受けられる可能性がグッとあがる。

 また、なぜ銀行ではなく地域の信用金庫をオススメしているかというと、信用金庫は地銀よりさらに地域に根ざした金融機関だからだ。その地域の色々な業者さんを紹介してくれたり、とても親身に相談に乗ってくれたり、応援もしたりしてくれる。結局のところ飲食業に限らず商売は「人と人の商繋がり」だ。地域のつながりを強くしておくことが商売繁盛の秘訣だ。

 僕の場合はビジネスに強い農家さんを紹介いただいたり、僕の商品「冷凍ハンドカットフライズ」を信用金庫のキャンペーンのプレゼント品に採用してくれたり、信用金庫主催のイベントに呼んでいただいたりと本当に良いことしかない。

(3)クラウドファンディングはどうなの?
 最近流行っているのが、クラウドファンディングだ。僕もこれまでに2回のクラウドファンディングに成功をしている。1回目は開業時(2019,4)2回目は冷凍ハンドカットフライズの商品化の時(2020,5)だ。成功するクラウドファンディング 攻略法についてはここでは割愛する。もしよけれYoutubeに挙げているので見て欲しい。

 結論からいうと、クラウドファンディングはやった方がいい。なぜなら、ノーリスクだからだ。強いて言えば、手間と時間がかかるということだ。時間がもったいないというのであれば、それまでだが、起業するにあたりこのくらいの手間をめんどくさがるのあれば開業自体をやめた方がいいかもしれない。
 ジャンケンに勝ったら100円あげよう。負けたとしても0円、挑戦するのも0円というのであれば、きっとほとんどの人がジャンケンをやるだろう。やらないのはよっぽどの大富豪だ。そんな人は僕の本を手に取ったりはしない。金にモノを言わせてとっくに新規事業に取り組んでいるだろう。でも僕たちは違う、地に足をつけて、頭に知識をつけて、泥臭く道を切り開いていく他に成功への道はない。

 話が長くなったが、クラウドファンディングで資金を集めようと思うのであればそれは大間違だ。「え?お前何言ってんだよ。開業の資金の足しにするんだよ。」という声があちこちから聞こえてくる。もう一度言う。「クラウドファンディングで開業資金を集めることは難しい。」

 では何のためにクラウドファンディングをするのか。大きな目的は、

「ファンづくりのため」

これだけだ。それと、他には「宣伝・広告」と「実績づくり」だ。

 「宣伝・広告」について先に解説する。クラウドファンディングをすることによって話題作りができ、地方メディアに取り上げてもらえやすい。各メディアの記者は、日々ネタを探している。クラウドファンディングはなかなかのネタになる。「クラウドファンディングをするので、記事にしてください」と頼み込んだら、意外と取り上げてくれる。実際に僕はその方法で地方新聞と北海道新聞に掲載していただいた。北海道美唄市という田舎で2日間のプレオープンをしたところ、31万円の売上を作ることができた。それは外ならぬクラウドファンディングのおかげだ。特に新聞は意外とバカにならない。なぜなら、新聞の記事はネットニュースにも連動するので、多くの人の目に留まりやすいのだ。
 特にクラウドファンディングよやるときには「プレスリリース」というものを出すことがあたりまえだ。このプレスリリースがまた凄まじい。分からない人のために簡単に説明しよう。訳すと、「プレス=報道に、リリース=投げる」つまり、自分がこれから何かをするときに様々なメディアやインフルエンサーに対して「これから自分は〇〇なことを始めます!」と宣言するのだ。テレビや雑誌で新店舗のオープンの内容が取り上げられるが、これらは何もメディア側が積極的にそういう情報を探しているのではない。店舗側が「プレスリリース」を出して初めて、メディア側に認知される。認知された後で、その内容を取り上げるかどうかを決めて行くのだ。日夜、各メディアに大量のプレスリリースが届くことは言うまでもない。
 ではどうやってそのプレスリリースを出すのかというと、

「PRTIMES」 https://prtimes.jp/

ここの会社が一括でやってくれる。この会社がプレスリリースにおいては、ほぼ一強だ。ここに有料でお願いするのだ。あなたはただ自分の事業内容の分かる記事を書いて出稿するだけだ。
 他にもプレスリリースを出すことによるメリットがある。プレスリリースを出すと、あなたのホームページなどのURLが色々なところに貼付されることになるので、GoogleにおいてあなたのURLが検索されやすくなるのだ。この辺については後でも触れるので、この辺にしておこう。

 続いては「実績づくり」ついて。「クラウドファンディングに成功した」となると、それがちょっとした権威性に繋がるので、色々なところで、「クラウドファンディングに成功!」ということができる。なんだかんだ分かりやすい実績があると人間は「すごいな」と簡単に思ってしまうのだ。これを「錯覚資産」なんて言ったりもする。賢い大学を出たとか、メディアに取り上げられたとか、そういう誰もが分かりやすい実績があるだけで、プラスの評価を受けやすい。そう思ってもらえるだけでビジネスは上手く回りやすくなる。

 これらはあくまで副次的な効果にすぎない。最も大切なのは「ファンづくり」ができること。多くの人はクラウドファンディングでいくらお金を集め、いくら利益を残したかということに執着をするが、そこに目を向けている以上は絶対にキッチンカー経営はうまくいかないだろう。というかどんなビジネスだってうまくはいかない。目先の売上や利益よりも遥かに大切なものがある。それはこういう考え方だ。

LTV(Life Time Value)=生涯顧客価値

 つまり、一人のお客様が、死ぬまでにいくらのお金をあなたのお店に使ってくれたかという事だ。新規のお客様を一回こっきりの来店で終わらせず、いかに2回3回とお店に来ていただけるかということにフォーカスしてお店作りをしていく必要がある。では、どうしてクラウドファンディングをするとLTVの向上が見込めるのだろうか。

 考えてみてほしい。もしあなたが、何かのクラウドファンディングに出資したとしたら。あなたはきっと初孫を溺愛するかの如く、そのプロジェクトを応援するだろう。孫を喜ばせるためなら多少の金銭的支援を惜しまない。そして孫バカになり、孫を自慢して回ることだろう。つまり、出資してくれた支援者はあなたの熱狂的なお客様になり、口コミをしてくれる広告塔にもなってくれるということだ。これがクラウドファンディングをやる最大のメリットだ。
 さぁとりあえず、Makuake(大手クラウドファンディングの会社)のアカウントを開設して、色々なプロジェクトを覗いてみよう。

【Makuakeサイト】
https://www.makuake.com/

【ASOMBROSOマクアケ過去プロジェクト】


2.資格・保険・各所手続き


 資格・保険・各所手続きに関しては主に4つある。実際に自分でやらなければならないのは3つ。

・開業届-税務署
・食品衛生責任者講習受講-保健所
・営業許可証-車屋が代行
・仕込み場所の確保(実店舗がある方は問題ない)
・車両の任意保険とPL(生産物賠償責任)保険

(1) 開業届と確定申告
 開業届を税務署に提出することをオススメする。必要なものは印鑑くらいで、数分で終わる。特に提出の義務はないが、提出した方が確定申告の時に節税ができる。
 確定申告については、開業届を提出すれば青色申告(以下、「青色」)、そうでなければ白色申告(以下、「白色」)となる。確定申告についても少し詳しく見ていこう。

●青色申告と白色申告
結論からいうと「青色申告」一択である。ここではメリットを2つ挙げておこう。
① 青色申告特別控除
青色では最大65万円の特別控除が受けられる。白色申告にはない。
つまり、売上が100万円の場合、

青色:100万円から65万円分が差し引かれ、最終的に35万円分の所得に対し て税金が課せられる。

白色:そのまま100万円分の所得としてに税金が課せられる。

という具合だ。もちろん所得が低い方が納める税金も少なくなる。

② 赤字の繰り越し
 最終的に損失が出た場合でも翌年以降3年間赤字の繰り越しが可能となる。また、開業届提出から2年間はお客様からいただいた消費税を申告する義務がない(2023年からインボイス制度が始まると話は変わる)。本来お客様から預かった消費税は国に払わなければならないが、消費税分の売上もそのままもらえるのだ。まずは個人事業主で2年間、消費税をしっかりといただいておこう。その後、法人化をすればさらに2年間は消費税を納めなくても良いことになる。つまり最大4年間は消費税をいただくことができるのだ。

●確定申告の仕方が分からないとき
 そんな時は、商工会議所に相談しよう。会計士にお願いするよりも安くやってくれる。もちろん月々の売上と項目別の経費を帳簿につけておく必要がある。経費の項目については以下の通りに分けておけば、概ね問題はないだろう。

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※手書きで大変だという人に向けて、別途エクセルで簡単に入力できる損益計算書(PL)を提供することもできるのでLINEから連絡ください。

【PLの解説はコチラ☝】

 確定申告のためだけでなく、このPLをデータとして蓄積しておくことも大切なことである。どこに経費が掛かり過ぎているか、原価率はどうなのか、利益率を高めるにはどうするべきか、など経営に関しての分析をすることができる。また、過去の出店先での売上を参考に、仕入れを最適化することもできるという訳だ。月々の帳簿さえしっかりつけておけば、毎年なまはげののようにやってくる確定申告にもしっかり対応が可能だ。その帳簿を持って商工会議所に駆け込もう。

 商工会議所で確定申告を有料で依頼するのが嫌だという人や、自分で学びながら確定申告をしたいという人は「やよいの青色申告」というインターネット上で確定申告書類の作成ができるサービスを使おう。1年目は完全無料で使用ができる。2年目以降は8000円(税抜)で利用契約ができる。この会計ソフトはシェア率も高いので、操作方法が分からないときにはGoogleやYouTubeで簡単に調べられる。

【やよいの青色確定申告オンライン】
https://www.yayoi-kk.co.jp/lp/aoiro/

(2) 食品衛生責任者講習
 各自治体の保健所で講習を受けなければならない。年に数回開かれているので、事前に調べて申し込みしよう。講習は各自治体ごとに行われるが、自分が住む地域以外の保健所で受講することも可能だ。
 この講習の修了なしは営業許可を申請することはできない。ただし、調理師免許を持っている場合は講習を受ける必要はない。費用は6000円程度。

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