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浅生鴨の短編三〇〇

週に二本(ひと月に八本)の短編を三〇〇本掲載します。一篇ずつでも購入できますが、マガジンをご購読いただくと、ほんの少し割引になります。あとコメントは励みになります。誤字脱字の指摘… もっと読む
僕は締切りがないとぜんぜん書かないので、短篇集の担当編集者から「noteで連載しろ!」と強制されて… もっと詳しく
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#物語

いつもそこにいる

 テーブルにバッグをひょいと投げ出してから、有音は冷蔵庫を開けた。レモンサワーの缶を取り…

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浅生鴨
1年前
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半年後に会いましょう

 やや勾配が険しく足場も悪い林道を抜けると、ゴツゴツとした岩場に出た。山の向こうは空が青…

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浅生鴨
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古いタイプの自動販売機は

 頭上から降り注ぐ強い日差しは天豊の体力を奪い続けていた。額に浮かぶ汗が顔中を濡らし、び…

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浅生鴨
1年前
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食べ物を投げないでください

 霜で薄らと白く染まった公園の隅に集められた男女には、それぞれ小さくて丸い透明の密閉容器…

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浅生鴨
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日乾し

 耳のすぐそばで誰かがコソコソ話をしているような気がして飯尾は飛び起きた。向かいのビルに…

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浅生鴨
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秘密のゲーム

 教室に戻って半袖短パンの体操着の上からジャージを着ると、さっきまでのみじめな自分の姿を…

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浅生鴨
1年前
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自称

 配膳を終えた給仕が音も立てず襖を閉じると個室内に妙な緊張感が宿った。舟盛りとは別に用意された小鍋には既に火がつき、乳白の信楽焼の縁から煮汁が噴いている。  細く美しい竹を使った竿縁天井から続く根岸色の土壁には、赤みの強い伊部焼の器が飾られ、繊細ながらも豪奢な空間を作り出していた。  上座に腰を据え、眼光鋭く肉付きの良い老人こそが、例の丸古会長である。さすがの木寺や伊福と雖も頭を上げるに能わず、ただ床に額を擦るばかりであった。 「上げなさい」  丸古の特徴的な嗄れ声は二人を圧

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ワンコインショップ

 illustrated by スミタ2022 @good_god_gold  店の中に犬がいた。

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浅生鴨
2年前
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クライマックスの部屋

illustrated by スミタ2022 @good_god_gold  照明がなく、また窓もなかったため、金属の擦れ…

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浅生鴨
1年前
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世界を救うもの

illustrated by スミタ2022 @good_god_gold  司令部にけたたましいアラート音が鳴り渡った。…

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浅生鴨
1年前
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九回の裏

illustrated by スミタ2022 @good_god_gold 「いよいよ九回の裏です。解説の丸古さん、これま…

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浅生鴨
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ワンチャン狙いのナンパ

「あのう、その犬、かわいいですね」 illustrated by スミタ2022 @good_god_gold

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浅生鴨
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風は二回吹いた

illustrated by スミタ2022 @good_god_gold  どこまでも続くように見える長い長い上り坂は、…

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浅生鴨
1年前
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広島のおじさん

illustrated by スミタ2022 @good_god_gold  給食後の昼休みに、風介が一冊の雑誌を鞄から取りだし、拓也に渡した。 「これ」  毎月出ているモデルガンの専門雑誌だ。  風介には中学生の兄がいて、その兄からもらった雑誌をこうしてときどき学校へ持ってくるのだ。以前はみんなで回し読みをしていたのだが、いつも最後には拓也が家に持って帰ることになるから、最近は最初から拓也に渡すことにしていた。 「いいじゃん、これ。おーい、みんなで見ようぜ」  拓也に言わ

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