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浅生鴨の短編Z

月に二本の短編を掲載します。一篇ずつでも購入できますが、マガジンをご購読いただくと、ほんの少し割引になります。あとコメントは励みになります。誤字脱字の指摘も喜んで!(あまり喜ばな…
僕は締切りがないとぜんぜん書かないので、短篇集の担当編集者から「noteで連載しろ!」と強制されて…
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2022年9月の記事一覧

完璧な対策

 シューッと空気を吐き出す音を立てながら、左右からスライドしてきたドアが中央で静かにぶつ…

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浅生鴨
1年前
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思い出して鳴る

 オフィスの奥まった位置にある部長席で、くるりくるりと椅子を細かく左右に回転させながら、…

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浅生鴨
1年前
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何があってもダメ

 デスクの上に書類を叩きつけるように置いたあと、乱暴に椅子を引き、ドカと大きな音を立てて…

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浅生鴨
1年前
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相手の迷惑も考えて

 昼休みがそろそろ終わるので、教室の中は人いきれでムッとしていた。冷房がないのでどうして…

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浅生鴨
1年前
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どこからでも切れます

 薬罐の底がカンカンと高い音を立てながら細かく振動すると、やがて緩んだ蓋の隙間から小さな…

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浅生鴨
2年前
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時代とともに

 菱代が掃除機のスイッチを切ったのは玄関のチャイムが鳴った気がしたからで、はいはいと誰に…

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浅生鴨
2年前
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やっぱり春だから

 コインランドリーのベンチに腰をかけ、洗濯と乾燥を終えたばかりの靴下を履こうとしたところで、ふと指先に硬いものが触れた。よく見ると履き口に小さく白い粒状のものがいくつかついている。 「なんだよこりゃ」  洗濯機でついた砂なのか、硬くなった糸玉なのかはわからないが、とにかく気になる。飯尾拓也は履き口を大きく開いて、白い粒を指で擦り取ろうした。その瞬間。  キョキョキョッ。  靴下が妙な鳴き声を上げてぐにゃりと体を捻った。そのまま拓也の手から逃げようとする。 「おいちょっと待て」

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たった今、壊れたのだ

 デスクの前で表情を強張らせたまま、井塚は身じろぎもせずに固まっていた。眉間には皺が寄り…

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浅生鴨
2年前
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一人前などない

 二人ぶんの大きな荷物を抱えて息を切らしている青谷凪亮子を後目に、丸古三千男はさっさと足…

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浅生鴨
2年前
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