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葬式仏教戒名問題について知っておきたいこと

 約一年前、死んだらホトケになる。日本の葬式仏教は素晴らしいという動画を作ったら「戒名料高い、死後にランクあるのおかしい(地獄の沙汰も金次第)!」と言われたので、葬式仏教戒名問題について、一般の方に知っておいて欲しいことをまとめておきます(曹洞宗の名古屋のお寺の一例)。10分もあれば読めると思います(約3千字)。

戒名とは?

 まず戒名とは、曹洞宗の場合、亡くなった方がお葬式で出家受戒(※1)をしてお釈迦様の弟子として死後、成仏するための名前として定着しています。本来は生きてる間に出家して仏弟子としての名前(戒名)を師匠から授かるのが望ましいですが、日本はその形よりも葬式仏教が一般化しました。コレの良し悪しは本題ではないので割愛します。戒名なしのお葬式の依頼も稀にありますが、うちの寺では原則引き受けておりません。

※1:受戒:仏教に帰依する証として戒律を受持すること、またそのための儀式である。 出家、在家の別を問わないものであり、戒律を授ける側からみれば授戒である。

 ちなみに私の場合、すでに出家しているので遊民という名前(免許証参照)が戒名の一部になります。この戒名に、道号、位号、立派な和尚になると院号がついて長い戒名ができあがります。その説明(道号・位号・院号)は大慈和尚の戒名解説動画をみるとよくわかります。この戒名は、宗派によって意味や呼び方も字数もかなり異なります。あくまで曹洞宗の名古屋のお寺の一例としてお聞きください。

戒名料について

 この戒名料は、基本は寄付(布施)になります。うちの寺は平成後期は、一般庶民なら〇〇〇〇信士or信女で10万円以上。少し財産があってお寺にも寄付ができる支援者は〇〇〇〇居士or大姉で50万円以上。ありあまる富があって、お寺の大庇護者として寄付ができる功労者は〇〇院〇〇〇〇居士or大姉。院号で100万円以上の寄付をお願いしておりました(あくまで曹洞宗の名古屋のお寺の平成後期の場合の一例)。

 これを葬儀で納めるのが一般的ですが、葬儀では戒名料とは別に、人が亡くなったときの枕経から通夜・葬儀・初七日までの儀式料がかかります。なので、余計にお金がかかる印象になります。これがうちの寺は、例えば私と父の2人で葬儀を務めると30万円。つまり、信士の戒名をつけてお葬式を行うと40万円(合計)になります。これはあくまで都会のお寺のお布施の結構高いパターンで全国のお寺、地域によって、かなりお布施に違いがあることはご理解ください。現在は私の代になり、少し寄付(戒名料)も下げてお願いしております。お寺によっては、未だにお気持ちでとお布施の金額が明瞭になってない場合もあるかもしれません。

 それで、この戒名のおしりの部分(信士/女・居士・大姉)を位号といいます。この部分でお布施が変わるので、ここまで戒名料と言ってきましたが、うちの寺では位階志納料と呼んでいます。お寺の庇護者としてスポンサーの度合いで位号が変わると理解すると分かり易いです。とてつもない力のある庇護者になると院殿や大居士、〇〇の漢字が増えます。

 例えば漫画ブッダを描いた手塚治虫さんは、伯藝院殿 覚圓蟲聖大居士(はくげいいんでん かくえんじゅしょうだいこじ)という戒名がついています。徳川家康には東照大権現 安国院殿(とうしょうだいごんげん あんこくいんでん)徳蓮社崇譽(誉)道和大居士(とくれん しゃすうよ どうわだいこじ)という恐らく日本人の中で一番長い戒名がついております。

 以上が、戒名料について知っておきたい基本情報。曹洞宗名古屋の都会のお寺の一例でした。

戒名料が高い!

 お待たせしました。それで、この戒名料が高い!についてですが、要するに、強制ではありません。一昔前だと坊主にものを言うなどあり得なくて、先祖代々の流れで戒名料が高くても我慢一択(の泣き寝入り)だったかもしれませんが、現代はそういった権威主義も弱まっているので、檀家さんの希望も幾分か言い易いと思います。ですので、高い寄付を避けたい方は、はっきりと戒名は信士(or信女)でお願いしますと菩提寺の和尚に言いましょう。葬儀料&戒名料で合計40万円も高い場合、葬儀の僧侶を一人にしたり、お布施が少なくて済む他の方法もあるので事前に相談しましょう。

 そう言われても、親の戒名に「居士」がついてるから、自分の代で位号を変えるのは気が引けるという方は、ご自身の意思で大スポンサーとしてお寺と僧侶を庇護していることに胸を張ってほしいです。日本仏教界を支えて下さり、私からも感謝したいですし、そういう方々のお陰で仏教徒ちゃんは誕生しています。

 ちなみに、代替わりで位号が変わってもバチは当たらないし、夫婦で位号が変わると同じ場所にいけないという意見も聞きますが、そういう話も真に受けなくて大丈夫です。アレコレ希望を言って嫌な反応する僧侶だったら、縁を切る準備をした方がいいでしょう。ただ、離団は墓の移動など戒名料以上にお金がかかるのが殆どなので実際は難しい。詳しくは私もTwitter&noteで言及してます。親ガチャならぬ菩提寺ガチャ問題を解決するための参考にして下さい。

 私としては、寄付したくなるような!世の中に推したくなる和尚が溢れる日本仏教界が理想ですが、現実は日本の政界と似ていて、世襲既得権益形骸化僧侶の壁厚し。モノ言う檀家が増えて、そういう現状が少しでも改善されたら嬉しいです(夢)。

 ちなみに、位号は、一度「信士/女」をつけても、後に例えば寄付できるお布施がたまったら「居士」にランクチェンジもできます。それと、うちの寺は、私の給料はここ10年、年収180万(家賃なし)で、頂いた戒名料は殆どが築70年超えのお寺の維持運営、主に再建に備えた貯蓄になってます。税金払えと言う人に対しては、2021年8月2日の動画の57秒以降の画像で言及。お坊さんみんなが戒名料で儲けて私腹を肥やしてるわけではないとご理解頂けると助かります。

死後の世界にランクがあるのはおかしい!

 そして次、死後の世界にランクがあるのはおかしい(地獄の沙汰も金次第)!についてですが、先に説明した通り、戒名は、死後にいける世界の位の違いではありません。そういう誤解は一生残り続けるのも理解しておきたいですが、戒名は、お釈迦様の弟子として出家受戒した名前で、その名前に、私たちが生きてきた証や功績が反映されるので、位号や字数に違いが生じます。戒名は、私たちが生きてる間の運と縁が重なってつけられるもので、死後の世界のランクの話ではないと、ご理解下さい。

 最後にもう一つ、希望する方は、生前に戒名を考えることもできます。詳しくは菩提寺の和尚さまに直接ご相談下さい。菩提寺に相談なしで自分で勝手につくった戒名はmy名といわれ戒名ではないのでお気を付けください。

 長文説明となりましたが、ご自身のお宅のご先祖様をお祀りする菩提寺の和尚と密接に付き合う檀家さんが減れば減るほど日本仏教界は形骸化します。どうか、菩提寺の和尚に言いたいことを言う面倒な檀家さんが増えて、よりよい日本仏教界になりますよう皆さま、ご協力をお願い申し上げます。

 戒名の解説は曹洞宗僧侶大慈さんの動画が大変わかり易いので参考にして下さい。

※追記

 戒名問題まとめたお陰で気づけた。感謝合掌


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