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【絵本レビュー】 『くらやみこわいよ』

作者:レモニー・スニケット
絵:ジョン・クラッセン
訳:蜂飼耳
出版社:
岩崎書店
発行日:2013年4月

『くらやみこわいよ』のあらすじ:

ラズロは、くらやみが こわい。くらやみは あるひ、「みせたいものが あるんだ」と、ラズロによびかけてきた。ラズロは こえに みちびかれ、いえの ちかしつへ……。


『くらやみこわいよ』を読んだ感想:

暗闇が怖い、というのは子供にとって人生で一番最初に自覚する恐怖ではないでしょうか。私も子供の頃暗闇が怖くて、夜寝る時もいつも小さなランプをつけて寝ていました。おやすみをして両親が出て行った後の静けさと、暗闇に慣れた目に映る不気味な影がとても怖かったのを覚えています。

「落ちるから」という理由で、小学生の私にはクイーンサイズのベッドが与えられていました。そんな大きなベッドの真ん中に一人で横たわっていると、両サイドも足元もとても遠く見え、突然なんだか黒い不気味な空間に思えてきました。ベッドの淵に近づくと、ベッドの下の暗闇から手が伸びてきて引き摺り込まれてしまうという恐怖に駆られ、私はできるだけ寝返りを打たないようにしていました。夜中にふとしたことで目が覚め片足がベッドから飛び出していると、血の気が引き、慌てて足を引っ込めたものでした。

だから、夜中にトイレに行くのはなかなかのチャレンジでした。私の部屋は後付けだったようで、縁側からと父の部屋からとドアが二つありました。雨戸の閉まっている縁側は、私がピアノの練習をする時以外使うことのなかったリビングにつながっていましたが、夜は誰もその部屋にいることがなく、真っ暗で静まり返っていました。特に縁側は、どこまでも続く底なしのトンネルのように見えて、とても夜中に一人でそこに足を踏み入れる勇気はありませんでした。寝る前にはいつも、怖いものが入ってこないようにしっかりドアを閉めて、何度も何度も隙間なくしまっているか確かめたものでした。

もう一つのドアは、父の部屋に続いていて、父がよくそこで寝ていたので、少しは怖さも和らぎましたが、問題はそこから廊下に出た後でした。父の部屋を出ると玄関に出ます。そこから右に家の奥のお風呂場へと向かう廊下が伸びています。真っ暗な廊下の突き当たりの壁から何かが出てくるような気がして、私は絶対に右を見ないようにして真っ正面にあるトイレに駆け込みました。

暗闇を怖がる典型的な子供と思えるかもしれませんが、私は今でもあの廊下の奥はどこか別の場所に繋がっていたと思っています。というのも、当時うちで飼っていた猫と廊下で遊んでいると、急に毛を逆立て、背中を丸めて唸り始めることがよくあったからです。そんな時猫のプーはその突き当たりの壁を、ギラギラした目で睨んでいました。当時ですでに既に築三十五年くらい経っていた古い家だったので、本当に何かいたのかもしれません。もしかしたらプーが守っていてくれたおかげで、私が実際に何かを見るということもなかったのかもしれませんね。

そんな私も今は、真っ暗な部屋でないと寝られないので、遮光カーテンまでして寝ていますが、うちの怖がり六歳児のためにセンサーのランプを廊下につけています。一人で寝られるようになったら、彼のところにも暗闇お化けが来るのでしょうか。


『くらやみこわいよ』の作者紹介:

レモニー・スニケット
1970年、米カリフォルニア州生まれの作家、脚本家、アコーディオン奏者。本名はダニエル・ハンドラー。レモニー・スニケットの名前で発表した「世にも不幸なできごと」シリーズ(草思社)で知られる。ハンドラーの小説The Basic EightとWatch Your Mouthはゴシック風のコメディであり、やや大人向けの内容である。ハンドラーの脚本には2003年の映画Rick、Kill the Poorがある。アコーディオン演奏家としては、マグネティック・フィールズのアルバム69 Love Songsでの演奏が最も有名。


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