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【絵本レビュー】 『おさるになるひ』

作者/絵:いとうひろし
出版社:講談社
発行日:1994年1月

『おさるになるひ』のあらすじ:

おさるの少年はもうすぐおにいちゃん。おさるのお母さんからはおさるの赤ちゃん。カエルの妹やウミガメの弟だったら面白いのに、と思うおさるですが……。

『おさるになるひ』を読んだ感想:

生まれる前の記憶があったらいいなと思います。両親がそんな話をしたこともないので、きっと私は前の記憶をすっかり捨ててこの世に生まれてきたのでしょう。いったい私はどこの誰だったのだろう、と考えることがよくありますし、そんなことを想像することも好きです。

本を読みながら息子に聞いてみました。
「どうして君はママの子供だってわかるの?」
「そりゃあわかるよ。」
「覚えてるの?」
「ちがう。」
「じゃあどうして言い切れるの? もしかしたら他にお母さんがいるかもよ。」
「そんなことないよ。だってわかるもん。」

一瞬ちょっと不安そうになったけれど、息子は自信を持って言いました。まあ彼は私の子供の頃の写真と比べても瓜二つなので、赤の他人ですら私が母親だと気付いてしまうでしょうけれど。

ある実験をYouTubeで見たことがあります。子供たちに目隠しをして一人一人ママたちの前に立たせ、自分のママを当てるというものです。ママたちは声を出してはいけません。なんと六人中六人が正解でした。顔や髪の毛を触って確認する子もいれば、手を触っただけの子もいました。息子には意地悪な質問をしたけれど、子供と母親の間には口では説明できない繋がりがあるのでしょう。そう考えると、何千匹もいるペンギンたちが、海から帰ってきた時に自分の子をきちんと見つけられることに納得できます。では、パパとの繋がりは一体どうなんだろうと興味を持ちましたけれどね。

生まれる前の記憶はありませんが、私には人との繋がりに関してある考えがあります。初対面でもスッと心が開ける人っていますよね。なんだか昔から知っているような懐かしさすら覚えます。そしてそんな人と親しくなっていきます。そんな時思うんです、
「この人と前はどんな関係だったんだろう。」
お姉さんみたいと慕ってくれる年下の友達はとっても世話焼きです。もしかしたら前世では私のお兄さんだったのかな。かなり年上なのに落ち着きがなくいつも何かを探している男友達は、困ると連絡してきます。彼は私の息子だったとか?

もちろんこれはただの感覚です。実際私たちの関係がどうだったのかはわからないし、関係していたどうかすら謎です。でも私は今深く関わっている人たちの多くは、きっと前世でも何かしらお世話になった人たちだと信じているのです。そしてこの人生で初めて知り合って深くお付き合いをした人たちは、きっと次の人生でもなんらかの形で関わってくるのではないでしょうか。そう考えると、いつも私を守ってくれようとする息子は、実は私の父親だったのでしょうか。それとも旦那?

こんな風にして私は毎日の人間関係を楽しんでいるのです。



『おさるになるひ』の作者紹介:

いとうひろし
1957年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。独特のユーモラスであたたかみのあ る作風の絵本・挿絵の仕事で活躍中。おもな作品に 「おさるのまいにち」シリーズ(講談社刊、路傍の石幼少年文学賞受賞)、「ルラルさんのにわ」シリーズ(絵本にっぽん賞受賞)「くもくん」(以上ポプラ社刊)、「あぶくアキラのあわの旅」(理論社刊)、「ごきげんなすてご」シリーズ、「ふたりでまいご」「ねこと友だち」「マンホールからこんにちは」「アイスクリームでかんぱい」「あかちゃんのおさんぽ①②」「ねこのなまえ」(以上徳間書店刊)など多数


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