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【絵本レビュー】 『もしもぼくのせいがのびたら』

作者/絵:にしまきかやこ
出版社:こぐま社
発行日:2010年11月

『もしもぼくのせいがのびたら』のあらすじ:

「たろうはこの頃急に背がのびたんじゃないかな。」お父さんが言うのを聞いて、たろうはベッドの中で考えます。もしもぼくのせいがのびたら…。大きくなりたい、もっと大きくなりたい…子どもたちの素直な気持ちをそのままのびのびと描いた絵本。

『もしもぼくのせいがのびたら』を読んだ感想:

「これ食べたらぼく大きくなるよ」
最近のうちの4歳児の口癖です。一口食べ物を口に入れるたびに椅子に立ち上がって、どのくらい大きくなったかを確認したがるので、時にかなり面倒です。週に1、2回ビデオチャットで話す実家の母にも、
「どんなに大きくなったか見て」
「ほんとだ〜、大きいじゃん」とおばあちゃんにおだてられて息子のウハウハ度は増します。あなたも言いなさい、とでも言うような目をして私を見るのです。

「大きくなったらね。。。」
息子は嬉しそうに大きくなった時の話をしてくれます。小さくて可愛らしいままでしばらくいてくれたらいいのに、と願う母はなかなか息子の夢話に便乗できないのです。大きくなったら、こんな風に手を繋いだり、色々お話ししてくれなくなっちゃうんでしょ、とすでにふてくされた気分にさえなってしまいます。

私は子供の頃、大人と子供とは違う生き物だと思っていました。大人はいつだって大人で、子供はいつまでも子供。「大きくなったら何になりたい」という質問に私は答えられたためしがありませんでした。だって、子供は子供のままですもの。クラスの子が「花屋」とか「野球選手」なんて言っているのを聞きながら、なんて夢を見ているんだろうと私は不思議に思ったものです。

それでも色々な人に聞かれたので唯一考え付いたのが、「男の子になること」でした。とてもお転婆だった私は、事あるごとに「女の子なんだから」と言われることに飽き飽きしていて、その結果考え付いたのが「男の子」だったのでしょう。男の子になれば道路に寝転がって遊んでいても怒られないし、腰まで届くような長い髪を梳かされるという拷問もないし、サッカーをして足の爪を割ったって叱られない、だろうから男の子って楽だと思ったんですね。なので、あえて言えば、子供の時の夢は花屋でも幼稚園の先生でもなく、男の子です。

でも小学校に入ったら、男子は忘れ物をすると鞭でミミズ腫れができるまで叩かれたし、寒い冬でも制服の半ズボンを履いていなくちゃいけないし、あんまりいいことがなさそうということで、あっさりと夢は消えてしまいました。子供の頃の私は男の子になって何をするつもりだったんでしょう。

今日も息子を幼稚園に迎えに行くと話してくれました。先生はいつも息子にたくさんご飯を持ってくれるんだそうです。それは「いっぱい食べるともっともっと大きくなるから」なんですって。
「ぐんぐん大きくなるといいね」
そう言いながら心の中で声も低く毛むくじゃらな息子を思い描き、もうちょっとこのままがいいよ〜と、まだぷよぷよ感の残る手をくすぐって見るのでした。

『もしもぼくのせいがのびたら』の作者紹介:

にしまきかやこ
1939年、東京に生まれる。東京芸術大学工芸科卒業。学生時代からリトグラフ、エッチングを手がけ、日本版画家協会展新人賞、同奨励賞受賞。絵本の読者である幼い子どもたちの絵を見る目、絵を描く力の確かさに敬意を払い、尊敬を込めて絵本を描き続けている。代表作『わたしのワンピース』は、親子二代にわたるファンも多く、男女を問わず子どもたちに愛されている。『ちいさなきいろいかさ』(もりひさし文/金の星社)で第18回産経児童出版文化賞受賞。『えのすきなねこさん』(童心社)で、第18回講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他作品多数。


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