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【絵本レビュー】 『十二支のおはなし』

作者:内田麟太郎
絵:山本孝
出版社:岩崎書店
発行日:2002年12月

十二支のおはなし』のあらすじ:

お正月に神様のところへあいさつに行くことになった動物たち。ちゃっかりもののねずみは牛の背にのり、門の前で一足先にゴールイン。一番最初はねずみ年になった…。


十二支のおはなし』を読んだ感想:

よく知られた十二支のお話ですね。

最近はヨーロッパでも十二支が少し知られるようになって、「来年は寅年だね」とか「私は酉年です」なんて言う声も時々聞かれます。

私は卯年なので、うさぎにはなんとなく親近感を感じています。可愛いというより、とても近しい存在という感じですね。

小学校では飼育係になったこともあります。休み時間に裏庭にある飼育小屋へ行って、クローバーなどをうさぎにあげるのが楽しみでした。

ある日の休み時間、廊下を数人の子供たちが叫びながら走っていました。
「うさぎが赤ちゃんを産んでるぞ!近づいちゃダメだぞ!」
そんなことを言われたら、見たくなりますよね。裏庭へ通じる出口から見ると、飼育小屋はすでに子供達で囲まれていました。先生が二人こやに中に入っていて、飼育係の子達が図工の時に着るスモックを両手で広げ、小屋を隠していました。それでも他の子達はうさぎの赤ちゃんを一目見ようとジリジリ詰め寄っていきます。

先生が大きな声で言いました。
「うさぎが怯えて赤ちゃんを食べてしまうから近づくんじゃない!」

食べてしまう。。。
私はその言葉にショックを受けました。先生の言葉がかなりリアルに頭の中で描写され、少し怖くなりました。
その時、「あ〜、うさぎのあかちゃん!」誰かが叫びました。
子供達からはどよめきが沸き起こり、飼育係の子供たちはさらに真っ赤な顔をして他の子供たちを教室へ帰そうと叫んでいました。

すると先生が一人小屋から出てきてすごく真剣な声で言いました。
「みんな、今すぐ教室へ戻りなさい!赤ちゃんが死んでしまうぞ!」
子供達は急にしんと黙り込み、六年生たちが下級生を促して教室に戻りました。先生たちは小屋の中でうさぎを助け続け、飼育係の子達はスモックを広げてはいるものの中を見ないように顔を外へ向けていました。

結局何羽の子うさぎが生まれたのか知りませんでした。私たちはそのあと数日飼育小屋に行くことは禁止され、そのあと見に行ったらすでに毛の生えそろった数匹の小さなうさぎがいたことは覚えています。

生まれた子供を守るために食べる。自分の子供を食べなければならないうさぎの親の気持ち、なかなか想像するのが難しいです。


十二支のおはなし』の作者紹介:

内田麟太郎
1918年12月15日生まれ。福井県出身。岡田三郎助、中谷泰、丸木俊に師事。 代表作に絵本「あめのひのおるすばん」(至光社)、「戦火のなかの子どもたち」(岩崎書店)、「おふろでちゃぷちゃぷ」(松谷みよ子 文 童心社)、「ことりのくるひ」(至光社) 挿絵の作品で「窓ぎわのトットちゃん」(黒柳徹子 著 講談社)などがある。 1950年 紙芝居「お母さんの話」(稲庭桂子 文 教育紙芝居研究所)で 文部大臣賞、1959年 紙芝居「お月さまいくつ」(稲庭桂子 文 童心社)で 厚生大臣賞、 1973年「ことりのくるひ」(至光社)でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。 1956年 小学館児童文化賞受賞。1974年逝去。

 
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