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【絵本レビュー】 『どんぐりむらのぱんやさん』

作者/絵:なかやみわ
出版社:学研プラス
発行日:2011年8月

『どんぐりむらのぱんやさん』のあらすじ:


子育てしながら、人気のぱんやさんを切り盛りする
どんぐりパパと、どんぐりママ。
新しいパンを作ろうとがんばりますが、なかなかうまくいきません。
それを見ていたのは、子どもたちのこっぺとくっぺ。
パパとママを助けようと、こっそり新しいパンを作ろうとしますが…。

『どんぐりむらのぱんやさん』を読んだ感想:


子供って親の喜ぶ顔が見たいんだなとつくづく思いました。
朝息子の歯を磨きながら、今日は掃除のお姉さんが来ないことを伝えました。いつも後を追いかけて遊んでいるのでがっかりするかと思っていたので、息子の言葉にハッとしました。
「じゃあ〇〇が掃除してあげる。そうしたらママ嬉しいでしょ」
身体も声も固まってしまって、視線も息子に釘付け。かろうじて聞けたのは、「ママが嬉しいとどんな気持ち?」
「〇〇も嬉しい」と無邪気に笑う息子。

まずい。。。私の頭の中には、すでに一ヶ月続いている第二ロックダウンでいつもイライラして息子に「ちょっと待って」と「あとで」ばかりを繰り返している私自身の姿しか浮かんで来ない。息子はそんな私の表情をずっと見て来たに違いない。あのちっちゃい頭と身体で私をどうやったら喜ばせられるかを考えていたのかと思うと胸が痛み、ショックで身体が一気に冷えた。

そんな朝を迎えた午後にこの絵本を読んだ。パン屋さんで作るパン美味しいね、で終わるのだろうと思っていたら大間違い。子供たちが新作パンに悩むパパとママの代わりに夜中にパンを作るのである。そうすれば週末にみんなで遊園地に行ける。まるで朝の出来事を忘れるなとでも言っているようだった。

子供はいつだって親のことを心配している。そのやり方は不器用で、時に別の失敗を引き起こすけれど、きっと彼らは心底から私たちを助けようとしているに違いない。手伝ってくれるから息子が好きなわけではない。ただただ元気に生きていてくれるだけでいいのだ。でも日々のイライラに流されて、その根本に感謝していないのは私。そんなことを4歳児に気付かされた日。


『どんぐりむらのぱんやさん』の作者紹介:


なかやみわ
1971年、埼玉県生まれ。女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室卒業。企業のデザイナーを経て、絵本作家になる。 主な絵本に「そらまめくん」シリーズ(福音館書店・小学館)、「ばすくん」シリーズ(小学館)、「くれよんのくろくん」シリーズ(童心社)、「どんぐりむら」シリーズ(学研)、「こぐまのくうぴい」シリーズ(ミキハウス)など多数ある。愛くるしく魅力的な登場人物を描いた絵本作品は、子どもたちの絶大な支持を受けている。


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