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【絵本レビュー】 『もりのなか』

作者/絵:マリー・ホール・エッツ
訳:まさきるりこ
出版社:福音館書店
発行日:1963年12月

『もりのなか』のあらすじ:

ラッパをもって森に散歩にでかけた男の子は、ライオン、ゾウ、クマと、いろいろな動物たちに出会います。男の子はラッパをふきながら、みんなと行列をつくって森を散歩をします。そして森の中で、かくれんぼうをはじめますが、男の子が鬼をしているうちに、動物たちは姿を消していました。

『もりのなか』を読んだ感想:

私の両親はあまりナチュラル派ではなく、私は三十歳近くになるまでキャンプというものをしたことはありませんでした。休日に森を歩くということもなく、せいぜい夏に山へ行き、川で釣りをしたり泳いだりするくらいでした。寝るのはもちろん旅館で、テントの張り方も知らずに育ちました。笑えることに、現在の私のリラックス方法の一つは、YouTubeでキャンプファイアーの動画を見ることなのです。フラっと森へ出かけ、泉の水でコーヒーを作ったりテントを張ってそこで一夜を過ごしたりするのを見て、一人くつろいでいます。

キャンプではないけれど、小学校の時何人かのお父さんたちがオーガナイズして森へ連れて行ってもらったことがあります。確かその子供たちは一緒のボーイスカウトに入っていて、キャンプ場などにも慣れているようでした。その日はBBQをしてみんなで一日森で過ごすというものだったのですが、私にとっては何もかも初めてです。周りには木以外何もないということがとても新鮮でした。一緒に行った母はというと。。。そのあとまたキャンプ場に行こうという話にはならなかったので、これはいい体験という程度だったのかもしれません。

その時動物たちと隠れんぼはしませんでしたが、他の子達とはしました。公園と違って森では隠れるところがあまりないんですよね。木の後ろに隠れるかキャンプ場の水場くらいしかなく、創造力が求められます。でも不思議だなと思ったのは、いつもは話さないような子とも話しやすくなったことでした。オーガナイズをした家族の一人は身体も大きく頭もいいのですが、クラスではあまり目立つ存在ではありませんでした。なんだかいつも別の次元にいるような、ちょっと不思議な男の子でした。でもこの日はなんとなく彼と話す機会が多く、彼がコーヒー味のものが食べられないこと、五人兄弟であることなどを話してくれました。私は一人っ子なので、五人もの兄弟が一つの家にいるなんてと、とてもびっくりしました。森に包まれて気持ちも開いていくのかもしれませんね。

今いるドイツにはたくさん森があります。ベルリンの市内でも大小いくつかの森があって、朝ごはんを食べてからちょっと森へ散歩、なんていう贅沢もできます。森の中には不思議なエネルギーがあって、元気をもらったり、リラックスできたりするので、私は今では森が好きになりました。毛嫌いしていたキャンプにも二年前挑戦しました。森からのちょっとひんやりした冷たい空気が肌から体内に浸透していくような、そうして身体にエネルギーが溜まっていくような、そんな感じがとても好きです。

皆さんは森とどんな関係を持っていますか。

『もりのなか』の作者紹介:

マリー・ホール・エッツ(Marie Hall Ets)
1895年アメリカ ウィスコンシン州生まれ。動物達と親しんだ幼児は、後のエッツに、決定的な影響をあたえる。「セシのポサダの日」(冨山房刊)でコルデコット賞受賞。「海のおばけオーリー」(岩波書店刊)、「もりのなか」(福音館書店刊)などの作品がある。1984年没。


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