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【絵本レビュー】 『三びきのこぶた』

作者:イギリスの昔話
絵:山田三郎
訳:瀬田貞二
出版社:福音館書店
発行日:1967年4月

『三びきのこぶた』のあらすじ:

貧しいこぶたの3兄弟が、それぞれの家を作ることになりました。最初のこぶたはワラで、2番目のこぶたは木の枝で家を作りました。しかし、オオカミがやってきて2つの家はふきとばされ、2匹のこぶたは食べられてしまいます。3番目のこぶたはレンガで家を作りました。レンガは重くて丈夫なので、オオカミがきてもへっちゃらです。さらに3番目のこぶたは、知恵をしぼってオオカミを退治しようと考えます。オオカミ退治はうまくいくのでしょうか?

『三びきのこぶた』を読んだ感想:

私より先におばあちゃんに読んでもらっていた息子が、全部内容を教えてくれました。でも私が知っている内容とは違う気がしました。息子と読んでみると、やっぱり違います。面白いなと思ったのは、三番目のこぶたのオオカミのあしらい方でした。しつこいオオカミと正面衝突することなくするりとかわしていく姿が見事だな、と思いました。

私が大学生の時、飲み会がまだ全盛期で新入生の歓迎一気飲みも行われていました。四歳上のいとこは入学直後急性アルコール中毒で病院にも運ばれていたので、私はそういうことが自分にも起こりうるという心配はしていました。特に私は父譲りの筋金入りの下戸なのです。高校の間に新聞などでできる限りの情報は集めたつもりでいました。そしていよいよ初の飲み会を迎えたのです。

大学で入ったクラブは文系でしたが、歓迎会はやっぱりありました。早速私は根回しを始めました。まだ先輩たちが酔っ払っていないうちに席を周りビールを注ぎながら言ったんです、
「私の身体、お酒が消化できないんです。」
「え、そんなの慣れじゃないの?」
「いえ、父も同じですから。」
「飲むとどうなるの?」
「フィルターなしで血管に直接アルコールが入る感じでしょうか。」
「へえ」

こんな会話を話せそうな先輩たちにしました。下準備完了です。するとこんなアナウンスが聞こえてきました。
「新入生は前のテーブルへ。これから歓迎の一気飲みを始めたいと思います。」
いよいよです。私は他の新入生たちと一緒に前に行きました。テーブルの上にはグラス十杯のビールが並んでいました。一人十杯です。各新入生の後ろには先輩が一人ずつたち、その手にはゴミ袋が用意されています。ビールを流し込んで吐き気がきたらそこに出して、飲み続けるというルールでした。私は抗議もせずにその列に加わりました。私の後ろには三年生の「怖くて大酒飲み」と言われている女の先輩が立ちました。でもこの人も私が根回しをしていた先輩たちの一人だったのです。私は一か八かの賭けに出ました。

一、二、三の掛け声で私たちの一気飲みが始まりました。

私はゴクゴクと一定のリズムを保って飲みました。一杯目は終了。すでに頭の後ろで血管がドクドクと脈打っているのが感じられます。二杯目に入りました。横からは「うっ」と言ってゴミ袋のお世話になっている同級生の様子が聞こえてきました。私は首のあたりの血管が波打ち始めたのを感じながら、一体何倍飲めばいいのかなと考えていました。すると、
「〇〇やめていいよ」
後ろから声がしました。怖いことで知られていたその先輩が私を止めたのです。
「おい〇〇、お前の顔すげえ赤いぞ」
焦ったような声がテーブルの前にいる先輩たちの中からも聞こえてきました。ちょっと戸惑っていると、後ろにいたK先輩が私を押しのけ、残っていたグラスを全部開けてしまいました。「ずるいぞ〜」という声も上がりましたが、K先輩は「うっせえな」(女性です)と言ってヘラヘラ笑うだけでした。

こうして私はオオカミたちからうまく逃げることができました。その代わり、完全に伸びてしまったり歩けなくなった同級生を一晩中面倒見ることになりましたけどね。そんなこと、ビールの一気飲みで病院に運ばれることを考えたら、なんでもありませんよね。

その後の飲み会もこんな調子で切り抜けました。乾杯で入れたビールのグラスを持ち歩いて一晩明かしたこともありました。「今日は気分が悪いから」と言って飲み会に行かなかったことも何回かありました。このトリックはある先輩から教えてもらったものです。ある日のクラブ中、気分が悪いからそのあとの飲み会には行かないという先輩がいました。私も行きたくなかったので、なんと言おうか考えていたところでした。それでその先輩にさりげなく近寄って聞いてみました。「気分が悪い」というので具合が悪いのかと思ったら、「虫の居所が悪い」ので憂さ晴らしにビリヤードをしに行くというではないですか。真正面に向き合って戦わずにかわす方法がある、ということを教えてもらったのです。私にはぴったりのやり方なので、今でも必要な時には使います。

このこぶたを見ていて、まさか大学の一気飲み大会を思い出すとは思いませんでしたけどね。


『三びきのこぶた』の翻訳者紹介:

瀬田貞二
1916年、東京・本郷に生まれる。東京帝国大学で国文学を専攻。戦後、「児童百科辞典」(平凡社)の企画編集者をふりだしに、児童文学の評論、創作、翻訳などにいくつもの大きな仕事をのこした。絵本の代表作に『きょうはなんのひ?』(福音館書店)があげられる。ライフワークのひとつに「落穂ひろい 日本の子どもの文化をめぐる人びと」(福音館書店)がある。1979年逝去。


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