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【絵本レビュー】 『キャベツくんのにちようび』

作者/絵:長新太
出版社:文研出版
発行日:2004年2月

『キャベツくんのにちようび』のあらすじ:

大きなネコ達が、キャベツくんとブタヤマさんを手招きしている。ふたりは、ちょっと恐いけれどついていった。「ブキャッ」
ふたりはすごいものを見せられた。さあ……。


『キャベツくんのにちようび』を読んだ感想:

日曜日に読んだタイムリーな絵本でした。もちろん私の日曜はこんなにシュールではありません。

「うまい話には裏がある」

いらっしゃい いらっしゃい おいしいものが ありますよー

お腹の減っているブタヤマさんを手招きする三匹のネコたち。もう明らかに怪しい三匹なので、それなりの覚悟を持ってついていくのでしょうが、現実はそうではありません。いかにも騙しそうな様子を装っては来てくれないのです。

先日オンラインマーケットで私が売っていたものを買いたいという人がいました。是非買いたいということだったので話を進めていくと、「仕事で行かれないから、配送会社の人を送る」というのです。のんきな私は、「そんなこともできるようになったのか」と大して疑いもせず話をしていきました。

その人が言うには、商品がきちんと受け渡しされるために保険金を払わなければならないが、その金額もその人が受け渡し時に払うと言うのです。でも、配送会社とのやりとりの際に私の方に領収書が来るから、そのコピーを送ってほしいとのことでした。言われたリンクを見てみると、ある大手の配送会社の名前が出ていました。

日本でもセブンイレブンが配達してくれる時代だし、お店ならば配送会社の人が小包を取りに来てくれると聞いたこともあるので、その段階で私はあまり怪しんではいませんでした。ところがそこから言われたリンクへ飛んでみると、クーポンを買うようになっているのです。それが配送会社の人がウチまで来る料金とのこと。それにしても50ユーロは高い気がする。しかも買ったらすぐそのコードを先ほどの配送会社に教えなくてはいけないとか。すぐとは、どのくらいのことを言うのでしょう。

一方、私がモタモタと配送会社のサイトを行ったり来たりしている間も、商品を購入したいと言った人は、「クーポン買えた?」「コード送った?」などとしつこく聞いてきます。配送会社の内容物と価格を書く欄があったので確認のため、購入者に再度連絡。
「何個ほしいのですか?色は?」
それに対して帰って来た答えは、
「すべて終了したらその画面のスクショを送って。それから説明するから。」

でもそれは、一番最初に彼女が買いて来たのと全く同じメッセージでした。私の手は止まりました。
「アヤシイ」
チャットボックスが点灯しています。購入者が「まだか」と言うようにハテナマークを送って来ています。
「ますますアヤシイ」

私はその人に「今会議が始まるから、終わったら連絡し直す」とメッセージして放っておきました。その間も彼女からメッセージが入ります。すべて同じ文章。これは怪しすぎと、私は連絡を無視して午後を過ごしました。でも心臓はばくばく。

それから一時間ほどして、今度は別の商品んい興味のある人から連絡がありました。「まだありますよ」と言うと、「今から(今度は別の)配送会社を送る」と言うメッセージ。
「またか」
私は立て続けに来たことが怖くなって、その人のプロフィールをチェックしてみました。さっきの人との共通点を発見。二人とも同じ都市を訪ねたことがあるようです。
「これは臭いぞ」
そう思った私はその人からのメッセージを無視しました。何度か送って来ましたが、全部無視。

さらに数時間後。また別の人が購入希望。「あるよ」と答えた後すぐにその人のプロフィールをチェックすると、やはり同じ都市に「チェックイン」しています。この時点で私はもう準備ができていました。

そしてこの人もやっぱり、忙しいから配送会社の人を送ると言って来ました。
「配送会社は高いから、住所を教えてくれたら郵送しますよ。」
そうメッセージしたら、パタリと返事が来なくなってしまいました。そしてそのあとは一度も誰からも連絡がありません。結局は詐欺のグループだったのでしょう。手口もいろいろ変わって来て、真実味のあるものも多いと思います。でも「うまい話には裏がある」ので、皆さんも何か怪しいと思ったら、とりあえず立ち止まってください。

ああ、怖かった。


『キャベツくんのにちようび』の作者紹介:

長新太
1927年東京生まれ。蒲田工業高校卒業。「おしゃべりなたまごやき」(福音館書店刊)で文芸春秋漫画賞、国際アンデルセン賞国内賞、「はるですよふくろうおばさん」(講談社刊)で講談社出版文化賞受賞。「たぬきのじどうしゃ」(偕成社刊)「みみずのオッサン」(童心社刊)などの作品がある。



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