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【絵本レビュー】 『わたしのいえ』

作者/絵:カーソン・エリス
訳:木坂涼
出版社:偕成社
発行日:2016年1月

『わたしのいえ』のあらすじ:


田舎にある家。あるいは、街中のアパートや、ごうかな宮殿。それから、靴のなかでさえも! この世界でくらす人や動物の、それぞれのいえやくらしが、うつくしい筆致で描かれます。


『わたしのいえ』を読んだ感想:


『なずず このっぺ?』で知ったカーソン・エリスさんの絵本です。開くたびにじっと見入ってしまうイラストが大好きです。うちの四歳児も大好きで、「どの家に住みたいかな」と言いながら味わって読んでいきます。

あなたのいえはどんな家ですか。
裏庭に面した今いるアパートは息子が生まれる前に引っ越して来ました。寝室が一つの小さなアパートで、内装をしていた人が事故で続けられなくなったのを引き受ける条件で借りたので、半年分くらいの家賃はただにしてもらいましたが、壁の漆喰、天井のヤスリ掛け、フローリングの削り直しなど、かかった費用と時間、体力を考えると、六ヶ月分の家賃では割りに合わないような気がしますが、その分このアパートへの気持ちは今まで住んだどの家より深い気がします。

ドイツでは台所が空っぽのまま貸す部屋が多く、ここもその一つでした。幸い大家さんがシンクと冷蔵庫を寄付してくれて、後は旦那が二日ほどのやっつけ仕事で作ってくれました。当初は「臨時」ということだったのですが、もう六年くらい経ちますが、未だに臨時の台所で、食器を入れる棚もなく、なんだか毎日がキャンピングみたいです。食材は全てイケアの透明なプラスティックの箱に入っている始末です。

寝室が一つなので、三人で川の字に寝ています。息子がやたらと動いて私たちは端っこに追い込まれることが続いたので、シングルマットレスを購入し、息子にはそちらで寝てもらうことになったのですが、朝私の枕が占領されていることもしばしばあります。

でもこのアパートは、私が幼稚園に上がる前に住んでいたアパートをどこか思い起こさせるのです。当時の私は三歳くらいで、私たちは雑居ビルの中にあるようなアパートに住んでいました。寝室はやはり一つで、ベッドのそばにテレビがあって、台所兼リビングもあったのですが、私の記憶ではベッドの上で過ごすことがとても多かったように思います。寝室には大きなベッドがあって、そこで三人で寝ていました。

父は毎晩お風呂に入りながら、瓶に入った酢漬けのニンニクを食べました。「にんにく持って来て」と頼まれて父に運ぶのは、私の役目でした。母の話によると、その後医者に胃が荒れていることを指摘され、生ニンニクはストップしたそうで、その代わりに毎日りんご一つと酢漬けのアーモンド5粒になりました。それはかなり続いて、私が中学生になっても食べていたのを覚えています。どこで情報を得てくるのか知りませんが、意外と健康マニアだったのかもしれませんね。そんなことをウコンすりおろし入りレモン湯をすすりながら思い出し、「血は争えないなあ」と考えるのです。

その家の後、私たちはさらに四つの家に住みました。どの家もそれなりに思い出深いのですが、どれも「私の家」という感じはあまりしません。私にとって「家」とは、大切な家族がいて、大切な友達が立ち寄ってくれる、そんな場所なのではないかと思います。


『わたしのいえ』の作者紹介:


カーソン・エリス(Carson Ellis)
1975年、カナダ・バンクーバー生まれ。児童書のさし絵を数多く手がけ、雑誌などでも活躍。おもなさし絵の作品に「The Wildwood Chronicles」シリーズ(コリン・メロイ 作)、『The Composer Is Dead』(レモニー・スニケット 作)など、邦訳されたものに『秘密結社ベネディクト団』(トレントン・スチュワート 作)がある。夫、コリン・メロイのバンド、The Decemberistsのアートワークも担当。本書がはじめての自作の絵本。アメリカ合衆国・オレゴン州の農場にて、夫とふたりの息子、1匹の猫、2頭のリャマ、2頭の山羊、1頭の羊、8羽の鶏、メンフクロウの家族、たくさんのアマガエルとともにくらしている。


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