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【絵本レビュー】 『しあわせのバケツ』

作者:キャロル・マックラウド
絵:デヴィッド・メッシング
出版社:TOブックス
発行日:2019年3月

『しあわせのバケツ』のあらすじ:

世界中のどんな人も、心に「しあわせのバケツ」を持っています。そのバケツは、人が喜ぶことをすると一杯になり、逆に嫌がることをすると空になってしまいます。人同士が思いやり、親切にすれば、みんなが幸せになれることを、バケツを例えに優しく説いた絵本です。


『しあわせのバケツ』を読んだ感想:

誰もがしあわせのバケツを持っていると教えると子供でも理解しやすいとのことですが、いえいえ、大人にも十分わかりやすいです。なぜって、大人の私たちはしあわせを忘れがちだからです。自分のバケツが空っぽであっても気づかないし、他の人のバケツがいっぱいかどうかということにすら注意を払わなくなってしまうこともあります。

子供はいつだって周りの人のバケツをいっぱいにしようとしていると思います。私よりはるかにたくさん笑顔を見せていることから始めましょうか。私よりはるかにたくさん「大好きだよ」って言うし、そういう仕草も見せてくれます。私よりはるかにたくさんプレゼントをくれるし(いつも私が嬉しいと思うものとは限りませんが)、私よりたくさん話しかけてくれます。

この絵本を読んでいたら、しばらく前に読んだある本を思い出しました。ゲーリー・チャップマンの『愛を伝える5つの方法』です。彼はバケツではなく、タンクという言葉を使っていますが、それがカラになると愛が感じられず心がパサパサになり、人間関係、特に夫婦や恋人関係もうまくいかなくなるという理論です。

チャップマンによると私たちには、愛を表現し、感じるために五つのタイプの言語を話しているのだそうです。それは、

肯定的な言葉
クオリティ・タイム
贈り物
サービス行為
身体的なタッチ

誰もがこのうち少なくとも一つの言語を話すのですが、厄介なのは各言語には方言があるそうで、たとえ同じ言語を話したとしても方言が違うので細かいところがわかりあえず不満を感じてしまうこともあるのだとか。また、二人が全く違う言語を話している場合は、どんなに誠意をもって話しても伝わらないので、愛のタンクは満たされず、関係は崩れてしまうのです。知り合った当初はとてもウキウキでハッピーだったのに、恋愛関係になったらまたは結婚したら価値観が合わず、「こんな人だとは思わなかった」と別れてしまう。これは相互の愛の言語が違うことに気づかず通じあえなかったということなのです。では、相手の愛の言語を知って愛のタンクを満たし合いましょう、というのがこの本の目的です。

ちなみに自分がどの言語を話すのか知りたい人は、オンラインにいくつかテストもあるので試してみてください。たとえば、これ。

オーストラリアに住んでいた時ハウスメイトを連れて日本に里帰りしたことがあります。彼女は大の日本好きで、チャンスがあればその滞在中に日本人のボーイフレンドをゲット、なんていう淡い期待も抱いていました。ところが私の同級生たちと会った夜、その夢は儚く海の塵となったのです。

決め手となったのは、その時いた日本人男性の誰も奥さんの話をしなかったこと。子供の話は嬉しそうにしていたのに、奥さんの話は一切出てきませんでした。友人が男子諸君に聞きました。
「仕事から帰ってきて、まず奥さんになんて言う?」
その答えは、
「お風呂湧いている?」
「ご飯ある?」
それを聞いて目を丸くする友人。
「愛してるよ〜って言わないの?」
クスクス笑う男子。そして、
「好きじゃなかったら結婚してないでしょ。言わなくてもわかるでしょそれくらい。」
ショックに口をあんぐりな友人。
「でも、何かプレゼントしたりとか?」
「誕生日ならね。」

私たちはいつの間にか相手のバケツを空っぽにする名人になってしまって、バケツの満たし方を忘れてしまったようです。「釣った魚に餌はやらない」とはよく言ったものですが、手に入れることよりもそれを世話することの方が大切ですよね。友達のことは褒められるのに、家族となるとなかなか。。。ということよくありますよね。本当は近くにいる人から満たしていかなくちゃいけないのに。

最後に旦那さんを褒めたのはいつですか。また褒められたのはいつですか。仕事を持ちつつ家事や子育てもこなすスーパーお母さんもいると思います。「よくやってるね」
こんな一言で三日くらいはまた頑張れるというかた多いのではないでしょうか。私はそれで月〜金は突っ走れると思います。プレゼントをもらうよりずっと嬉しいです。

このような言葉も得られず「俺は仕事してる」的な態度を取られたら、スーパーお母さんでいるエネルギーも消耗しますが、旦那を褒める気もしなくなってしまいますよね。まさに卵が先か鶏が先か、です。

でもある日、心の中で腕まくりをし、「一丁やったるか」と私は意を決しました。仕事のストレスでピリピリしている旦那をぎゅっと抱きしめて、「大好きだよ」と言ったのです。すると、なんとなく旦那の身体から力が抜けた感じがしました。上を見るとニヤニヤ顔。どうやら彼のバケツが少し満たされたようです。そのあとは彼の言葉尻も少し柔らかくなり、笑顔も増えました。しあわせのバケツ、なかなか優れものだと思います。

みなさんのバケツはどのくらい満たされていますか。


『しあわせのバケツ』の作者紹介:

キャロル・マックラウド(Carol McCloud)
米ミシガン州、デトロイト生まれ。学校や教会などで、バケツを使った教育指導を行う専門家であり教育者。ミシガン州ブライトン市にある教育組織Bucket Fillers,Inc.社の代表として、人々が幸せに暮らす方法を研究、指導している。フロリダのベニスで夫のジャックと共に暮らしている。


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