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【絵本レビュー】 『オニじゃないよおにぎりだよ』

作者/絵:シゲタサヤカ
出版社:えほんの杜
発行日:2012年1月

『オニじゃないよおにぎりだよ』のあらすじ:

おにぎり好きのオニたちが、人間の落としたおにぎりを拾って食べて大ショック!「ひどすぎる!こんなまずいおにぎりを食べてるなんて!」「俺達が本当のおにぎりのあじを教えてやる!」


『オニじゃないよおにぎりだよ』を読んだ感想:

発想が面白すぎます。この絵本は私の趣味で購入しました。以前シゲタさんの『おいしいぼうし』という絵本を読んでがっつりハマってしまいました。どれもこれも読んでみたいのですが、この絵本はお勧めです。どこまでもずっこけているオニはもちろん楽しいですが、ここまでおにぎりに情熱を捧げる人を見たことがありません。読んだ後におにぎりを食べたくなってしまいました。

子供の頃、父の作るおにぎりが嫌いでした。大きすぎてどっしりと重く、握りすぎてお米は潰れてしまっているし、おまけに塩気も外側だけで中は味のない白玉状態になっていることが多かったです。オニたちが食べたら絶対にダメ出しが出るようなおにぎりでした。

ご飯が余った時に焼きおにぎりも作ってくれましたが、これもイマイチでした。フランスのペタンクかと思うほど重いおにぎりは、醤油さえ入って行かれないほどぎゅうぎゅうに握られていて、おまけに表面はいつも黒焦げでした。それを「さあ食え、うまいぞ」と言われてもあまり箸が進みません。私は大抵表面のしょうゆ味のカリカリした部分だけを食べていました。もちろん父が許すわけがありませんから、私は味のないほぼペースト状になった団子状の米をもさもさ食べたわけです。

こんな思い出もあってか、私はあまりおにぎりが好きではありませんでした。それどころか、ご飯全般があまり好きではなくなってしまいました。それが変わったのは、割と最近なのです。ヨーロッパに住むようになって不便だなと思うのは、コンビニがないことです。ちょっと小腹が空いた時、ちょっと甘いものが食べたい時、コンビニはとても便利です。いろんな種類の「ちょっとしたもの」があって、どれも美味しいからです。

ヨーロッパでは、パン屋でパンを買うしかありません。でも日本のように惣菜パンの種類がたくさんあるわけではないので、パン屋に入っても「わあ、どれにしよう」と心があまり弾みません。もちろんドイツには美味しいパンがたくさんありますが、軽くちょこっと食べるという感じではないのです。もしくは、スーパーに入ってサラダとかチョコレートスナックを買うのですが、わざわざスーパーに入ってちょこっとしたものを買うのも面倒くさいものなのです。

最後に日本に行ったのは三年前ですが、私と旦那はあちこちで帰るおにぎりに目覚めました。コンビニでもキオスクでも簡単に買えるし、種類も多い。さらに最寄駅の構内におにぎり屋さんを見つけてから、私たちはほぼ毎日そこに立ち寄りました。ベジタリアンでグルテンアレルギーのある旦那に、おにぎりはぴったりです。電車に乗る前に息子の分も買って、小腹が空いた時に食べる。父の作ったソフトボールみたいなものとは違い、口に含んだ途端ほろほろと崩れる米粒と絶妙な塩加減に涙こそ出ないものの感動しました。コンビニのおにぎりだって負けてはいません。変わった具に毎回ドキドキしたものです。ベルリンでもおにぎりが売られるようになってきました。エコスーパーなどのお洒落な場所で売っていますが、日本のコンビニで売っているようなおにぎりが一つ四ユーロ近くするんですよ。今日の為替レートだと五百十五円です。いつからおにぎりがこんな高級品になってしまったのでしょう。だから日本から送ってもらった海苔で家で作るのですけれどね。どこでもおにぎりが手頃な値段で手に入る日本の便利さが、やっぱり懐かしくなります。

今はおにぎり大好きです。雑穀米を入れたり、ふりかけを混ぜたり。ピクニックでも喜ばれますね。日本のように色々な具は楽しめないけれど、ころりとした三角形を見るとやっぱり落ち着きます。私は鮭と昆布が好きですね。皆さんの好きな具はなんですか。


『オニじゃないよおにぎりだよ』の作者紹介:

シゲタサヤカ
1979年生まれ。 短大卒業後、印刷会社勤務を経て、パレットクラブスクールで絵本製作を学ぶ。 第28~30回講談社絵本新人賞で佳作を3年連続授賞する。 2009年、第30回佳作受賞作『まないたにりょうりをあげないこと』(講談社)で絵本作家デビュー。 絵本作品に『りょうりをしてはいけないなべ』『コックのぼうしはしっている』『カッパもやっぱりキュウリでしょ?』(共に講談社)、『キャベツがたべたいのです』(教育画劇)、『オニじゃないよ おにぎりだよ』(えほんの杜)、『いくらなんでもいくらくん』(イースト・プレス)、『わりばしワーリーもういいよ』(鈴木出版)他多数。 オフィシャルHP「アカモチ工場」:http://akamochi.net/


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