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【絵本レビュー】 『くれよんのくろくん』

作者/絵:なかやみわ
出版社:童心社
発行日:2001年10月

『くれよんのくろくん』のあらすじ:


クレヨン達は画用紙を見つけて大喜び! チョウチョ、お花…と描いていきます。ところがくろくんは仲間に入れてもらえません。でも…。

『くれよんのくろくん』を読んだ感想:


黒いクレヨンって、なかなか減りませんよね。茶色ですら木を描くのに使われるのに、黒いものってあまりあまりありませんよね。と言いつつも、私は仕事で黒のインクばかり使う身。使ってもらえないくれよんのくろくんに深く同情してしまうのです。

私は子供の頃絵を描くのが嫌いでした。いくら描いても頭の中に描いたイメージ通りにはいかず、いつもがっかりさせられたのが、いつしか絵を描くのが嫌いになったのだと思います。工作は大好きだったけど、風景画を描く日は特に嫌いでした。そんな私に絵を少し好きにさせてくれた友達が二人いました。偶然にも二人とも黒を使ったトリックを教えてくれたのです。

一人は幼稚園の友達。ある日彼の家で塗り絵をしている時、「黒でね、銀色が作れるんだよ」と黒鉛筆を出してウルトラマンを見事に塗りあげました。できたウルトラマンの顔は、本物みたいに銀色でした。

もう一人は小学校の同級生。彼はとても絵が上手で想像力もありました。私はよく彼の絵をコピーしてなんとか課題をクリアしていたのですが、ある日彼はせっかく綺麗に塗り上げた紙の上から黒いくれよんで全て塗りつぶしてしまったのです。隣に座っていた私に、黒を塗る「ゴリゴリ」という音が聞こえました。真っ黒になった紙をこの絵本と同じように、削り始めたのです。そこには、見事な花火が現れました。私はまるでマジックを見ているような気分で彼の手元を見ていたのを覚えています。もちろんそのあと私は、家に帰って彼のしたように絵を描いてみました。削れるくれよんの感覚と、下から現れる鮮やかな色にすごく満足感を覚えました。それから私は絵を描くのがあまり苦痛にならなくなりました。私はくろくんの味方ですよ。

『くれよんのくろくん』の作者紹介:


なかやみわ
1971年、埼玉県生まれ。女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室卒業。企業のデザイナーを経て、絵本作家になる。 主な絵本に「そらまめくん」シリーズ(福音館書店・小学館)、「ばすくん」シリーズ(小学館)、「くれよんのくろくん」シリーズ(童心社)、「どんぐりむら」シリーズ(学研)、「こぐまのくうぴい」シリーズ(ミキハウス)など多数ある。愛くるしく魅力的な登場人物を描いた絵本作品は、子どもたちの絶大な支持を受けている。


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