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【絵本レビュー】 『私はネコが嫌いだ。』

作者/絵:よこただいすけ
出版社:新風舎
発行日:2007年9月

『私はネコが嫌いだ。』のあらすじ:

いたずらばかりする黒ネコとお父さんの物語。そんな黒ネコとも、いよいよお別れの日が近づいてきたとき、お父さんは……。


『私はネコが嫌いだ。』を読んだ感想:

「私はネコが嫌いだ」

題名に惹かれて手に取りました。ネコが嫌いってどういうことだろう。猫好きな私には理解しがたいことですが、もちろんネコが好きでない人はたくさんいると思います。でもそれを絵本にするとは、一体どういうことでしょう。興味をそそられました。

ネコというのは不思議な生き物で、絶対わざとしているとしか思えないほどのグッドタイミングで飼い主をわずらわせます。オンラインでの書道クラスの時、生徒さんの飼いネコのしっぽが画面の真ん中でゆらゆらと揺れていました。そして時々半紙の真ん中にドカリと座り込んで、飼い主さんに怒られてもへいっちゃら。今度は筆で遊ぼうとしたりします。私は見ているだけで楽しくて、クラス中くすくす笑いが止まりませんでした。

ベルリンに越してきた最初の二週間、私は知り合いのつてであるアパートに泊まっていました。二匹のネコの世話をする代わりにタダで泊めてもらったのです。初日、ネコたちはうさんくさげに私を観察していて、あまり近くに近寄ってきてはくれませんでした。でも翌日になると、餌をくれるのが私であることに気がつき、だんだん距離が縮まってきたのです。ね〜ん、なんて可愛く甘えてくれるようにもなりました。

最初の夜こそは静かに眠れたものの、二日目になると顔に生暖かい空気がかかってきました。目はつぶっているものの周囲に気を集中させると、ふんふんと私をチェックしている猫の気配がします。目をつぶったまま、寝てますよ〜オーラを漂わせてみます。しかし何せ相手は二匹。もう一匹が布団の上から私の身体の周りを歩き始めました。大きさをチェックしているのでしょうか。嫌な予感、と思った瞬間ドスッと胸に重みが。むふっと鼻から息が漏れてしまいました。すると私の寝具合をチェックしていた最初の猫がよっしゃとばかりに私のお腹の上で団子座りをしました。二匹は重いのです。息もしづらい。しかしこの二匹はすっかり居心地良さそうに、ぐーぐーと喉を鳴らしています。

寝られん。。。浅く息をしながら私は恨めしく天井を眺めました。明日も部屋探しでベルリン中を歩くのだから寝かせてほしい。そう思うもののなぜかイライラしません。しかもなんだか幸せなのです。この辛さが幸せ。きっと猫好きな人はマゾヒストなんですね。意地悪されて、困らされて、でも憎めないしさらにはそこが可愛くさえ感じてしまう。

「私は猫が嫌いだ」そう言い続けていたのは、こんな面倒くさい猫に気持ちが動いていることを認めたくなかったからに違いありません。猫がこのお父さんにちょっかいを出していたのも、お父さんが大好きだったから。猫も人間も素直になるのはなかなか大変です。

この絵本を読んでいたら、また猫を胸に乗せて寝たくなってきました。


『私はネコが嫌いだ。』の作者紹介:

よこただいすけ
1973年東京都生まれ、武蔵野美術大学、Art Center College of Design 卒業。グラフィックデザイナーを経て、現在はイラストレーションを中心に活動中。絵本著書に『私はネコが嫌いだ。』(つちや書店)、『ニャンコどこいった?』(少年写真新聞社)がある。



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