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【絵本レビュー】 『あたしもびょうきになりたいな』

作者:フランツ・ブランデンベルク
絵:アリキ・ブランデンベルク
訳:ふくもとゆみこ
出版社:偕成社
発行日:1983年7月

『あたしもびょうきになりたいな』のあらすじ:

病気になった弟がやさしくされているのを見て、自分も病気になりたいエリザベス。うらやましがりやの幼児の気持ちを描いた絵本。

『あたしもびょうきになりたいな』を読んだ感想:

子供の頃はしょっちゅう風邪をひきました。風邪をひくたびに怒られて、おまけに一日中布団の中にいなくてはいけなかったので、病気になりたいと思ったことは一度もありません。特に夏に風邪をひくと父に「夏風邪は馬鹿がひく」と意味もなく怒られて不甲斐ない気がしました。好きで風邪をひいているわけではないのに。

うちの風邪への対処法はオールドファッションです。いつも行っていた小児科の先生は「温かいお茶に蜂蜜を入れてもらって、ゆっくり休みなさいね」と言っていたのにもかかわらず、私が飲まされたのは焦げた梅干しが入ったほうじ茶。「なんでやねん!」と口の周りに張り付いた焦げた梅干しの皮を取りながら思ったものでした。それからヴィックス ベポラップの代わりに焦げたネギが首に巻かれました。私は扁桃腺が弱くいつも腫らせていたので、その対処法だったそうです。私は焼きネギを首に巻いて夏だというのに長袖長ズボンのパジャマを着、分厚い羽布団の上から毛布をかけられ、サウナのような部屋でひたすら汗をかいていました。汗で熱を追い出す、というのが父の手法だったのです。たまにパジャマの濡れ具合をチェックしに来て、あんまり濡れていないと、「布団はいでただろ!」と怒られました。

風邪をひいて優しくしてもらったことは、好きな本を買ってもらえたことでしょうか。父は自分が買い物に行くついでに「何か食いたいもんはあるか」と聞きます。私の身体は熱でカッカとしていますから当然私は「アイス」と答えます。「バカかお前は!」と怒られるのが常でしたが。でもその代わり毎回新しい本を買ってもらいました。普段は買ってくれない漫画を買ってくれるときもあって、私のドラえもんコレクションは風邪で稼いだようなものだと言えます。

アイスの代わりに食べさせられたのはすりりんご。今のように圧縮型のジューサーなんてもちろんありませんから、普通のジューサーで作ったリンゴジュースはつぶつぶ部分と水分が分かれていて、私はそのつぶつぶがどうしても飲めませんでした。でも父は「そこに栄養があるんだ」と言ってスプーンを持って来て食べさせようとします。その間にりんごは酸化して茶色くなり、ますます食欲を減退させました。最後の最後には父に負けて食べる羽目になるのですが、私は今もりんごのすりおろしが大嫌いです。私があんまり嫌がるので一度父はトマトジュースを買って来ました。うちではあまりジュースを飲まなかったので私はとても嬉しかったのですが、飲んで見てびっくり。まずいんです。きっと私は甘いジュースを期待していたんでしょうね。塩味のジュースなんて全く予想外でした。なのでこれも未だに飲めません。

病気になった時のご飯で一番美味しかったのは、母が土鍋で時々作ってくれたおかゆです。父のように残ったご飯に水を足して作るのではなく、お米から時間をかけて作ってくれたものでした。ほっくり、しっとりしたそのおかゆは、喉が痛いのも忘れて食べてしまうほど美味しいものでした。また食べたいです。

みなさんの病気の時の思い出はなんですか。

『あたしもびょうきになりたいな』の作者紹介:

フランツ・ブランデンベルク(Franz Brandenberg)
1932年、スイスに生まれる。欧米各地の出版社や書店で働く。1957年にアリキと結婚。夫婦共作の絵本に『おばあちゃんのたんじょうび』『きょうはおやすみだよ』などがある。


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