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香月泰男の回顧展を観て

2022/02/08、香月泰男展@練馬区美術館。回顧展だったので、香月の一生を通した様々な作品が展示されていたが、最も心に残ったのは代名詞ともなっているシベリアシリーズであった。香月は戦時下でシベリアに連行され、1945年11月から1947年5月まで収容所で強制労働を課された。心に深く深く刻まれた戦争経験。それがどんな過酷で悲惨な事なのか、想像する事も難しい。

わたしにとって香月泰男は今まで、シベリア抑留されたことのある画家。そこで味わった苦しみや辛さが作品にも表れている。作品によってピンキリではあるが、今なお高値で売買されている、という知識や印象がある程度だった。

けれど、今回の展覧会を観て、絵からシベリア抑留、捕虜経験の苛烈さが体感として伝わってきた。説明が難しいが、今までは香月泰男がそういう過去、歴史、背景を持っていると『知識として』自分の中にあるだけだった。ただ頭の中だけの知識。これが、今展を観たことで、香月が味わった辛さや見た光景が自分の一部となった気がした。いわば、『生きた知識』。これがこの日に得た最も大きな収穫だった。美術というものの偉大さを感じた。それだけの力が、香月の絵画にはあった。

会場には、年配の方々が多く来ていた。戦争への並々ならぬ思いを抱えた方も多いと思う。香月泰男の絵画には、戦争の残酷さ、愚かさを伝え、考えさせるものが、問題提起する力が確かにありました。

行って良かった。


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