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これからの伝統工芸 (第5最終話)

-これまで同じ業界団体から反発はありましたか?

西村:「最初は少し言われたような笑。新しいことをやる人、違うことをやる人に反発する人はどの世界にもいると思うので。ただそれは考え方の違いだけで、私は"伝統工芸としてやっていく"、保存会の方は"保存する目的にやっていく"。ここは伝統・伝承の違いと一緒で、全く進む方向も違う。そして伝統的取り組み、伝承的取り組みの両方あることが甘木絞りを含め伝統工芸を未来へ繋げていくために必要なことだと感じています。それがお互い理解されていくと何も言われなくなってきました。」

この甘木絞りの技術を後世に伝えていく大切さ。
この甘木絞りを絶やさず残し発展させていく大切さ。どちらもすごく重要であり、それらをわかりやすく伝えるために彼は絵本にしてそれを表現してくれた。朝倉の子どもにも大人にも見て欲しい。
そしてさらに今、彼は甘木絞り職人をしながら、服飾の専門学校講師もしている。これらのようにいろんなベクトルから彼が感じ取っているリアルな"伝統工芸"についての話を世代問わずたくさん伝えてほしい。

-今後の甘木絞りの進化を教えてください。

西村:「甘木絞り全体のことはわかりませんが、今後はもっと品質をあげていきたい。今までとは少し違ったやり方で付加価値をつけて良いものを提供していきたいと思っています。あと最近、"朝倉市蓼藍栽培プロジェクト"という藍の栽培を始めたんです。朝倉で育った藍を使って朝倉で染める。まさに地産地消。土作りからの農作業。上手くいけば7月中に1回目の収穫ができる予定です。長期的なプロジェクトなので気長に見守って下さい笑。」

歴史と文化のまち"朝倉"にある伝統工芸。

私は彼に会うまで甘木絞りの存在を知らなかった。 
そしてなにより彼も昔から甘木絞りを知っていた訳ではないようだった。
もし彼が甘木絞りと出会ってなかったら、数十年後、この朝倉の伝統工芸は滅びていたかもしれない。今後朝倉市は人口も減少していき、高齢化もさらに進んでいく。このスピードをどう抑えていくか。もちろんそれは国や市の課題になるが、その解決方法はとても難しい。どんどん過疎化していく地方は、今後それでもGDPを上げていく政策を取るか、それとも住民たちが健康的・文化的に豊かな"人生の質"のようなものを上げていく政策を創っていくか。朝倉地区は高齢者が多く、病院・福祉施設も多い。これらは逆に朝倉の資源・ポテンシャルと捉え、歴史と文化・自然と同様に得意分野と考えてみたらいい。今後人口増が難しい私たちの町も、これまで以上に自然や伝統文化に深く目を向けて、それらを丁寧に外へ発信し続けながら"関係人口"をつくっていく。それが後にGDPを押し上げることにも繋がらないだろうか。

ちなみにこの写真、甘木絞りで作った"あずま袋"。

最近オープンした"ららぽーと福岡"の無印良品でも出品されている。朝倉の町で作られた朝倉ブランドの伝統工芸品が、世界に店舗を持つ無印良品で販売されてる。こういう新しいカタチの"伝統"を知るだけでも、私たちの住む朝倉の見方は変わってくると思う。

おわり

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