β-55 ふらんだーすのいぬ

最後が印象に残る作品として挙げられる代表例として、"フランダースの犬"が真っ先に思い浮かぶ。

ただ、どうしてネロは逝かざるを得なくなったのか、その経緯は受動的に得ることは難しくなっている。

気になったので、少し前に読み返してみた、原作のほうを。

アントワープの郊外でミルク運びで最低限の稼ぎを得ながら、画家になることを夢見ていたネロ、アントワープの聖母大聖堂にある17世紀を代表する画家であるルーベンスの祭壇画を見ることを憧れとしていた。

大聖堂の拝観はとても高額で、ネロにとっては届かないものでもあった。

ネロにとっての唯一の親友、アロアと仲良くしていたが、ネロの家柄の低さからアロアの父は、ネロをアロア及び彼等が住む風車小屋から遠ざけようとする。

冬に入って風車小屋の納屋の放火した張本人として名指しされ(もちろん冤罪)、その影響からかミルク運びの仕事を他に取られ、クリスマスイブの直前に祖父を亡くし、その影響もあってか、家賃滞納で追い出され、さらには優勝を勝ち取るべく渾身の力作をコンクールに応募するも落選。

このようなことが重なり、凍えるなかでアントワープの大聖堂に向かい、ルーベンスの祭壇画を月光の明かりで念願叶ってようやく見れたことを嬉しく思いながら、神に祈りを捧げ、生涯を終えていく…。

最期はパトラッシュを抱きしめて…という結末だったね。

完全なるネタバレ、でもアニメとはちょっと違った。

アニメでは、天使が降りてきて、天へと誘う終わり方だったように思えるけれど。

要約すると、こんな感じ。

どうしよう、なんとなくご都合主義な感じもする。

祖父がナポレオン戦争で片足に障碍を持っていたり、アロアがスペイン統治時代の面影を容姿で残していたりという歴史的背景を認知して読んだとしても、時代錯誤なのかなんとなく共感していいものか悩む部分がある。

もちろん職を失って、冤罪をかけられ、時間と手間をかけて描いた絵画が認められず、祖父を亡くして1人にされた挙句、それを見計らったかのように家賃滞納が原因で追い出されてしまう…しかも冬にという状況では凍死と餓死は免れないし、なにより精神的に絶望してしまう気持ちはわからないわけではない、むしろ「あまりにも不憫すぎる」というのが正直な感想。

ただ、貧しくなければこんな事態にはならなかったし、もっと家族や話し合えるひとたちがいれば、あんな最期にはならなかったとは思う。

どうして貧しく、頼れる場所も1~2箇所しかないような環境設定にしてしまったのだろうという疑問はある。

きっと、最期のラストシーンで、なんというか、神秘的な映像を想起させるような展開にしていきたかったのかもしれない。

ただ、あと一晩待ってほしかったんだ、ネロくんには。

ネロの命日となった日に、ネロはパトラッシュが見つけた風車小屋の全財産が入った財布を風車小屋に届けたその行為は、陰険にされてたアロアの父、バースさんに過去にネロに対して行った数多くの仕打ちを反省させ、そのうえで身元を引き受けようと決心させるし、落選してしまったコンクールでは、とある著名な画家にその逸材が認められ、養育させようという運びにはなったんだよね。

いずれも、"あした"に。

つまり、あと一晩堪え忍べば、次のおはなしが始まってたかもしれないということ。

画家としてさらなる高みを目指すのか、アロアと一緒に暮らすのか、という上向きな展開にもできたはず。

ただ、ネロはそんなことを知る由もなく、風車小屋は放火の濡れ衣を背負わされてるし、画家としての才能もないという現実を知ってるからこそ、せめて最期に大聖堂のルーベンスをとなったのやもしれぬ。

どうやって、入ったんだろうね、それにしても。

当時はそんなにセキュリティは綿密に機能してないにせよ、拝観料の高い大聖堂の祭壇まで、よく入れたよなって。。

クリスマスだから一般開放してた?

現代ならありえるけど。。

それとも教会だから礼拝という目的ではセキュリティだの拝観料だのっていう概念はなかったのだろうか。

という、感動よりもその設定に目を向けてしまった時点で、私ももう若くないんだ…と悟るあした・の・β<ベータ>でした。

純真無垢なら、こんな感想にはきっとならない。

でも、"死"というもので、世間のバランス感覚は近親になるほど大きく動き、"濡れ衣"や"仕打ち"などに隠された人々の厭な部分、保身的な行為といったものがここまで顕在化してしまうのかとは、改めて思い知らされたかな。

ほんとは、どんな作品であっても、明るくふんわりとしたものにまとめたかったのだけれども、そんなことはできるはずもなかった。

ということで、初めての読書感想文でした。。

また、こんな歪曲した目線で書いてみようかなと考えはじめてしまう…どうしよっか。

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