多様性尊重のために必要な共通言語化
こんにちは。NPO法人あしおとでつながろうプロジェクトです。
春になってきました。楽しくお過ごしでしょうか?
私たちあしプロでは、知的障害ある若者・アーティスト・多世代スタッフによるアート共通体験の場を開いてきました。
このコロナ禍の2年間に、情報弱者となりやすい障害のある方との情報共有やコミュニケーション、文書様式などを構築してきました!
多様性のある取り組みを始められている方に、ぜひこの情報を共有したいと思い、マガジンに1年間の資料をまとめています。
このマガジンをまとめた動機「多様性尊重のために必要な共通言語化」について、今日は書いて参ります。
少し長いですが、未来への足がかりに、お読みいただけたら嬉しいです。
障害をなくしていくのは誰か
あしプロではこの1年間、さまざまな属性のスタッフが膨大なやり取りを経て、知恵を出し合い、情報の共通言語化をおこなってきました。
障害とは一方にあるものではありません。
二者の間に立ちはだかるバリアなのです。
この認識でバリアに気づき、それを低くできたら障害はなくなり、人の可能性がひらけます。これを行えるのはおそらく“障害のない”マジョリティ側です。
私たちが試行錯誤した情報の共通言語化は、多様性の尊重される社会を迎えるにあたり必要とされていくこと、と感じています。
また、現在、多様性を包括する活動をされている方々も、同じところでつまづきを感じるところではないでしょうか?
みんなで障害のある世の中を変えていきませんか?
あしプロメッセンジャーとは?
福祉施設でタップと出会った100名のうち、コロナ禍の練習会に参加した6名の若者。2021年末より新たな6名も加わっています。
【Messenger メッセンジャー】とは
福祉施設に通うなかで、おどるなつことタップに出会った人たち。 社会から切り離された世界になりがちな福祉の現場から、世界を広げる試みに共にチャレンジし純粋にアートを楽しむ人々。様々な特徴を持ち、個の在り方を私たちに伝えてくれる存在です。
今集まっているメッセンジャー有志は20代~30代の知的・発達障害のある横浜市内の若者です。第一期メンバーに加えて、山形・大阪からのオンライン参加など年齢や地域も少し広がってきました。
外部からのご依頼には、あしプロメッセンジャーズとして有償出演。
毎月2回1年半の稽古を重ね、アート活動から自己認識を高め、施設外でも企業主催ライブなどの自己実現を初めています。
採択:よこはまふれあい助成金・Arts Fund2021/企業メセナ協議会寄付認定
全員に伝わる言葉を探す
「障害の程度が軽いからできるんだ」「特別な才能がある人はいいんだ」というような言葉を聞くことがあります。私は憤りを覚えます。
誰もに能力は眠っているのに、今の社会では年齢の低いうちに平均的にできる人にしかチャンスがないのです。
あしプロメッセンジャーは、一般企業の障害者雇用枠では雇用されず就労支援施設に所属する、20~30代の若者たちが主です。
少しゆっくりめな彼らの成長期はまさに今です!
このフォーメーション、見事に等間隔な逆Vでしょう?
稽古初期の「斜めに並ぼう」は実現しませんでした。
「ナナメって?」「わかったこうでしょ!」「ナナメって何?」
それぞれのナナメが入り乱れたジグザグの混乱は、今ではみんなの笑い話です!
この質問からスタッフは、どんなナナメかを定義し、さらに各々が動けるような言葉遣いを考え、全員でつくるフォーメーションの、意義や効果についても伝えるようにしました。
”わからない”からではなく、”他者や空間認識がとても繊細”という観点がスタッフサイドの伝え方の鍵となっています。
アートによって情報を共通言語化
あしプロ代表おどるなつこ、総合演出・映像ディレクター塩田久人、それぞれにアートが専門、また知的障害ある若者の他、福祉職・公務員・大学生とさまざまな価値観の集う法人内では、制作面でも、言葉が通じているようで意味が通じていない場面が多くありました。
受け取る側面や、同じ言葉の持つ意味あいが異なるのです。
そこで、誰もがどう受け取っても良いアート(タップ・映像)を共通体験として真ん中に置くことにしました。
見れば一目瞭然、受け取り手の状態でちゃんとわかるのがアートです。
否定形ではなく肯定形で話す
活動初期に福祉スタッフからの助言を受け、アーティストサイドが変えたことは言葉遣いでした。
「走らないで」→「歩きましょう」
「まだ入らないで」→「ロビーの椅子に座りましょう」
「こっちこっち」→「Aさんの隣に立とうか」
「危ない!」→「止まろう、後ろに人がいるの」
ね、意外と使ってしまいがちな、こんな言葉遣いが進行を遅らせていたのです!
人は実は、否定形の言葉からネガティブな感情が生まれてしまったり、曖昧な指示で不安が強くなったりしています。
とても細やかな事かもしれませんが、これらへの敏感さを肯定して進めていくうちに、メッセンジャーたちの安心感は大きくなり、連動してアート表現の細やかさが発揮されるようになりました。
メッセンジャーの表現が広がったことが何よりも喜びでしたが、私(おどるなつこ)もこの言葉遣いに慣れ、今は会話の中でも、否定形の言葉を耳にしたときには肯定形に言い直して答えるようにしています。
これまで、強い否定の言葉で誰かの力を奪うことを、気づかずにしてきたのかもしれません。日常からネガティブな言葉遣いを変えることで、ハラスメントも起きにくくなるように思います。
情報の視覚構造化
言葉遣いの次に、連絡メールの構造化を行いました。
当初は一人一人個別対応のメールを送っていたのですが、稽古連絡という情報を、視覚的・構造的に整えることで、さまざまな知的障害あるメッセンジャー・ご家族・スタッフが、同じメールで次の稽古内容を把握できる文書様式を確立したのです!
これ、実は一同とても苦労しました!
メール受信環境もガラケーからパソコンまでと異なる上、漢字の苦手なメッセンジャーと世代をまたぐ人が入り混じり、送信側のデジタル世代でないスタッフは、そもそも“読みやすいメール”の概念がありませんでした。
幅広い属性の人が集うからこその困難でしたが、挑戦した甲斐はあり、1年がかりで確立されました!!!
文書作成ではありますが、字面だけでなく視覚化し、タップダンス練習会というアート共通体験を意識の真ん中に置いたことで、このメール構造化は可能になりました。
稽古場のホワイトボードの板書きも、この構造を利用することで、スムーズに情報共有できるようになっています。
文書雛形をすぐ使われたい方は、ぜひ上の記事からファイルをご利用ください!アート×福祉プログラムの考え方なども併せて記載しています。
応援感謝しています!
あしプロはやっと法人設立から1年を迎えました。
2021年度の活動実績はこちら。コロナ禍で、結構よくやれてきたなあ!と思います。何よりメッセンジャーの才能が開花し始めたことが嬉しい!!!
ひとりひとりの方々からの応援のおかげです!
練習会:毎月2回(4月〜1月)主催オンラインイベント:4回
映像公開:32本
参加:約900名/会場380名・映像470名(3団体 3法人 4地域)
プログラム委託:4件 / 3福祉施設・1文化施設
主催・協力・協賛:3企業
寄付:1企業・41名
YouTube:チャンネル登録+72名 / 計206名・年間視聴 7,000回
しかしながら、収入は事業費のみで、運営費が全く不足しております。
今回書いたような、専門性のある各知見からの試行錯誤は、全て法人スタッフたちのボランティア役務として行われてきました。
「あしプロインクルーシブアーツの実践ノウハウ2021」マガジン
多様性ある豊かで楽しい社会の実現を願い、インクルーシブ活動の記録と構築された実践ノウハウをまとめました。決算が終わりましたら、会計報告と予算組の考え方も併せてマガジンに入れる予定です。
知的財産のシェアとなるこちらのマガジン「あしプロインクルーシブアーツの実践ノウハウ2021」ぜひお読みいただけないでしょうか!
途中までは無料でお読みいただけます。
“障害のない社会”への第一歩は情報共有にあります!
また、記事をご購入いただくことは、ダイレクトに私たちの活動応援になります!
よかったらぜひご購入ください。
また、応援やご寄付、またチャンネル登録やツイッタフォローなどにより、あしプロの今後の挑戦を見守っていただけたら嬉しく思います!
未来へ向けて協働しませんか!!!
最後になりますが、あしプロメッセンジャーズは関西万博EXPO2025にエントリーしております。
2022年より2025年にかけて協働できる出会いをお待ちしています!
・共に活動いただける個人事業主さま
・社会に影響力の大きいインフルエンサーの皆様
・次世代教育へ尽力されている教育関係者
・協働してSDG's実現し、豊かな社会を願う企業の方
ぜひご連絡いただけましたら幸いです。
長い記事を、最後までお読みくださりありがとうございました!
どうぞよい新年度を、そして楽しい毎日をおすごしください!
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NPO法人あしおとでつながろうプロジェクトでは、知的・発達障害のある若者達が、自発的なアート活動を通して社会を元気にする役割を担うためのノ…
NPO立ち上げたばかりで、思いっきり活動していくための活動資金を募っているところです。サポートいただけると、メンバー一同とても嬉しいです!