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#7.漫画「SLAM DUNK」がバイブルだったバスケ少年は、如何にして映画『THE FIRST SLAM DUNK』の作画監督になったか 〜またはアしやの異常な愛情〜

細かすぎて伝わらない『THE FIRST SLAM DUNK』の「ここ」最高!選手権!〜その2〜


前回から始まり大好評のこの企画(嘘です、特に反響はありません笑)。
実は、前回には挙げなかった重要なポイントを飛ばしていました。敢えて。


今回の、このブログ第7回(#7)にどうしても語りたかったので、こちらに持ってきました。
先の展開を考えていないようで考えているんですよ、たまにですが。

話はまた、映画冒頭の沖縄の宮城兄弟のシーンに戻ります。このペースで、一体いつ語るべきことを語り終えられるのでしょう?このブログ。
でも、今回はこの映画の冒頭にして最大の「THE FIRST」ポイントを語ります。



〜ここから先は、映画本編の内容にも触れます。今更ネタバレもないと思いますが、映画未見でこれからBlu-rayやDVDで初めて、THE FIRSTでご覧になりたい方は、映画本編のある程度のネタバレも含みますので、ご了承をお願いします。〜


ソータ・リョータの1on1に垣間見られる、この映画のテーマ

・未熟な弟へ、厳しくも愛情込めてアドバイスする兄、ソータ。その熱い指導へのリョータのリアクション。
「(今の)ファウル(だろ)!」とキレる。「No, No!!」と軽くいなすソータ。
「向かってこい!」「退くな!」「圧をかけろ、圧を!」と前を向きゴールに挑む意志の大切さを教えるソータ。
リョータが転んでしまっても、自分から立ち上がるのを待って、時に闘争心を煽り、時に優しく諭して、何度でも挑戦させます。
これ、バスケでもスポーツ全般でも、いやもしかすると仕事でも人生においても、大事なことなんですよ。
こいつビビってるな、打つ気ないな、とかディフェンスに見透かされると、守る方は非常に楽だし、まして山王のキャプテン深津になんか、そんなの見透かされた瞬間にボール取られて速攻食らわせられます。
プレイヤーとしては、シュート打ったら外れるかな、パスが通らなかったらどうしよう、ドリブルでカットイン止められたらどうしよう…という迷いや気弱な気持ちを持ってしまいがちなんです、特に目上や格上の相手に対しては。
それはプレー中、絶対に悟られてはいけない。スキルよりも、フィジカルよりも、まず持たなければならないのは、強い気持ち。前に向かう意志なんです。

・後の、劇中でも重要なキーワードの一つになる「キツくても、心臓バクバクでも、めいっぱい平気なフリをする」
特に試合だとチームのプレーの起点となる、リョーちんのポジション・PGは、5人の中でも最も強気で攻撃的か、あるいは深津や海南の牧のように、どっしりとした安定感や冷静さが必要不可欠です。出だしが気弱でつけいられて仕舞えば最後、その後のプレー全てに響いてしまうからです。

この後、永遠の別れという、誰も予期せぬ悲劇に見舞われる宮城兄弟。
でもその最後の1on1でも、いずれレギュラーになりPGを担うことになるだろう弟に、司令塔が持つべき最も重要な気持ちを、教えを授けたソータ。本当に3歳しか違わない兄ちゃんなんでしょうか。
1on1をやり切った後、弟をギュッと抱きしめてしっかり褒めてあげる。
素晴らしい行動です。我々大人が、子供達に日々ここまでの愛情深い行動を本当に取れているかどうか、自分を思わず省みてしまうほどの慈愛の精神です。
父親の死という辛すぎる現実に直面し、おそらく漁船の船長であった亡き父の代わりに自分が家のキャプテン(家族という船の船長であり、バスケチームの司令塔でもある)になる、と決意したソータの、意志と責任感の表れでしょう。

私は3兄弟の長男で、二番目の弟は宮城家と同じように3歳下ですが、自分がこんな優しい兄貴だった記憶は残念ながらありません。一般的に見れば仲良い兄弟の方ではある(お互いおっさんになった今でもたまに二人で飲んだりするし)、と思いますが、子供の頃は喧嘩ばかりしていたようにも思います。

ましてや、幼い弟の頑張りを労うために、強くしっかり抱きしめて「頑張った、元気あった」なんて褒めてあげたられたことがあったでしょうか。
兄であると同時に、亡き父の背中もしっかりと見ていて、父の分まで弟たちへの愛情も注ごうと健気に努力している、また本人にもこの歳ですでに、生まれ持った太陽のような素養のある、ソータにしかできない行動です。

まだ映画の冒頭の冒頭、プロローグの回想シーンですが、もうこの時点で情緒がやばいです。映画をなん度も鑑賞した今となっては、このシーンでもう泣けます。


心折れそうな時

さて、この1on1のシーンで特に印象的だった「細かすぎるポイント」は、兄に叱咤激励される中での、幼いリョータのリアクションです。(ようやく本題に戻りました)

上記に述べたまま熱い思いで少し本題から脱線してしまったのですが、例えば、ソーちゃんの厳しいチェックに対し、ドライブで攻めきれずリョータが思わず転んでしまったところ。
ドリブル失敗で地べたに転けてしまった時、そのまま膝を抱えて「…っつー…」と声にならない声で、うずくまってしまう仕草。

これ、スポーツのプロの試合でもよくやるテクニックとしてみられる部分でもありますが、相手のプレーに非があったと見せるために少し大袈裟に痛がるんですよね。プロの試合現場ではパフォーマンスなパターンも多々あるかと思いますが、ここでの幼リョータの場合はもっと衝動的で素直な、折れかけた心を悟られまいとするアピールでしょうか。勿論、まだ子供ですし本当に痛いから痛がっている部分もあるとは思います。

でも、気持ちが続きそうにない、もう抜けない、勝てないからやめたい。膝を擦りむいたから確かに痛みはあるけど、大した怪我じゃないが、これ幸いと痛がって少しでも長く休みたい。スポーツをやっていて、気持ちが折れかけてくると、何か自分に言い訳を探して楽な道への誘惑に流されてしまいがちです。
幼いリョータのような子供なら尚更です。
ソーちゃんが、膝を擦りむいたくらいで同情して手加減してくれるような相手ではないことは百も承知ですが、弱い気持ちが少しでもずるい気持ちに向かいかけてしまう。
どう考えても実力差があるのに、素直に負けを認めたくない、負けを認めた弱い気持ちを悟られたくない。だから転んで怪我のせいにしたい…
自分もバスケ部でスポーツを真剣にやっていた経験があるからこそ、このリョータの気持ちも、文字通り痛いほどわかります。
また、劇中でストーリーが進んだ試合シーンで、実は湘北キャプテン・赤木もこういう自分との戦いの場面に遭遇します。どんなに優れた選手でも、誰もが通る道なんだと思います。

でもそこは、流石な兄・ソータ。そんな弟の弱い気持ちも全て理解した上で、すぐさまリカバーに入ります。
「俺だっていつもそうよ、心臓バクバク。」
リョータの気持ちに共感で寄り添いつつ、打開策を授ける!コーチとしても最早一級品のメンタルコントロールではないでしょうか。
「だから…めいっぱい平気なフリをする!」

家族思い・弟思いの権化、「キャプテン」ソーちゃん😭


めいっぱい平気なフリをする

バスケは時に「騙し合いのスポーツ」とも言われます。サッカーもそうですね。
いかに相手の裏を取るか、逆を突くか。意表をついて騙すか。
そこで生まれたわずかな隙やスペースをついて、ゴールに繋げます。
故にバスケの試合では、スキルとしての「フェイク」「ノールックパス」「ビハインド・ザ・バックパス」「スクリーンフェイク」など様々な騙しのテクニックが使われます。
原作では、やがて成長したリョータが、かつて兄に教わったように自分の後輩で初心者である桜木花道に、直伝の「フェイク」を教えていました。
かつての兄の身長に届き、年齢ではとっくに追い越してしまっているリョータ。故郷沖縄で、亡き兄と沢山バスケの練習していた日々を思い出し、今自分が兄の立場になった時に、ちょうどかつての自分のような弟分、花道の姿を重ねていたのかもしれませんね。
かつてのリョーちんと重ねるにはデカすぎる弟ですが。笑

山王戦では、合宿シュートとそのフェイクを組み合わせて自ら編み出した必殺技で、花道は大活躍していました。原作ではさらに、試合前の自主練で、フェイクを2度連続で繋げて編み出した必殺技は、「ダブルドリブルだよ」と安西先生に突っ込まれていて、大爆笑しました。
しかも試合で湘北がうまく噛み合わず大苦戦する場面では、うっかりこのダブルフェイク必殺技を披露してしまい、あえなくダブルドリブル・バイオレーション(反則)に…。

ここまで山王戦で描かれていたのでついつい花道のプレーまで話が及んでしまいましたが、後半のクライマックスの場面でも、フェイクがいかに重要なテクニックであるか、思い知らされる「ある超絶名シーン」もありましたね。ここでは、それはさておき。

そして、ここで述べたいのは、プレー中のテクニックとしても勿論ですが、ソーちゃんが教えたのはそれ以前の、試合に臨む気持ちや姿勢の面での「騙し」という点です。
プレー中も、いや試合前から、騙し合いや駆け引きは始まっているのです。
ましてやチームの攻撃の起点となる司令塔がビビってちゃ、取れる点も取れなくなります。
そういう意味では、どんな場面でも冷静で、プレッシャーをおくびにも出さない山王のキャプテン・深津はやはり理想的なプレースタイルを確立している名選手ですし、日本一のガードにふさわしい存在です。
また、だからこそその動じない深津を唯一と言っていいくらい怯ませたあるタイミングが、そのまま試合のターニングポイントにもなったのでした。そのお話も、またいつか。

そして、かつて亡き兄からその前を向く姿勢を身体で、魂で教わったリョータもまた、普段からプレッシャーを相手に感じさせず、時に飄々と、時に「えらそーに」(彩子さん評)プレーを体現できていました。本人が思っていたよりもずっと。

少なくとも、我々が原作で知っていたリョータはまさにそんなキャラでしたし、彩子さんもリョーちんを励ますためにわざと知らないふりをしていた可能性もありますが、リョータの実は「緊張で心臓バクバクだ」、なんて告白に「ウソ!?知らなかった…」と返しています。
あの日のソータの教えを常に胸に、ずっと懸命にプレーし続けていたんですね。
兄が最後の日に抱きしめながらかけてくれた言葉、
「忘れるな」という約束を、ずっと心に刻み守りながら。


「いつも余裕に」見えていた切り込み隊長・宮城リョータが、実は緊張しいで、試合前のプレッシャーを飲み込むためにいつも兄ソータの教えを胸に、めいっぱい平気なフリをしていたなんて…。
まさに今作『THE FIRST SLAM DUNK』で初めて明かされたリョータの内面と言えますが、こんなのもっとリョーちんを好きになるに決まってるじゃないか!!


湘北#7・PG(ポイントガード)宮城リョータ

二人の7番

原作で知るだけの頃のリョータは、私にとっては湘北一・クールで(クールと言えば流川の代名詞のように思えますが、流川は無口なだけで内面は実はめちゃくちゃ負けず嫌いの、熱いバスケ愛と情熱の塊野郎ですよね)、オシャレで(髪型も、時折巻頭カラーとかで垣間見える私服のセンスも湘北一です)、軽妙だけど一途で(決して軽薄ではないとこがまた良い)、何より仲間思いで面倒見もいい、顔もいいから(湘北スタメンみんな顔いいですが、)実はリョーちんが実際一番のイケメンではないかと思っていました。
まあ、一途すぎて彩子さんは全然振り向いてくれない、というギャグ要素もありますが、彩子さんとも恋愛を超えた絆は充分に感じられるし(少なくとも花道の晴子さんよりは脈ありに見える)、ケンカっ早いとはいえ花道や流川、そしてかつてのミッチーほどぶっ飛んではいないし、はっきり言って全体的に完璧人間に見えていました。カッコつけだけど本当に格好良いからしょうがない、みたいな。

原作のリアルタイムの頃は自分より年上の大先輩だった、というのもあるでしょう。なので、特に10代の頃は、一番自分とは遠いキャラだ、と感じていたこともあるんです。
元バスケットマンとしては、ガード系のポジションは近いけど自分はスピードなどを武器にする司令塔系では全くなかったですし、どちらかというとSG〜SFあたりのポジションだったので自ずとミッチーなんかに親近感が湧いてしまっていました。ミッチーはある意味バケモンですが、人としての弱点も多いですからね。
でも、今回の「THE FIRST」で、リョーちんの過去や家庭が明らかになり、なぜ才能もセンスも抜群のはずのリョータが、一時期ヤンキー崩れになったりしたのか、という謎も解けました。
さらに、悲しみや不甲斐なさをたくさん乗り越えて、あれだけの大きな決意と亡き兄の思いを背負って山王戦にまで臨んだのか、というドラマも観られて、改めて一番等身大の高校生なのは宮城リョータだった、という事に気付かされました。

いつも余裕に見えてるよ。


ある意味、これがリョーちんが仕掛けていた一番壮大なフェイクだったかもしれませんね。

バスケット界のセオリーでいえば、確かに上背がないからフィジカルにも恵まれていない、パスやクイックネスなど抜群のスキルも持っているけれど、天から恵まれたバスケットのためだけの存在だとは、到底自分じゃ思えなかったと思います。まして周りには、赤木や牧や仙道クラスがゴロゴロしている高校バスケ界。
1年生の頃は、先輩(で絶賛道を踏み外し中)のミッチーには、「誰が期待してるって?このチビを」と言われる始末。

そんなリョータが、様々な辛い苦難を乗り越えて、自分にないものではなく、あるもの(パス・スピード・クイックネス)で全力勝負を挑むと決意した復帰前の沖縄帰省。
三井だけじゃない。宮城リョータも、バスケに賭ける思いが深いが故の、心の底からの悔恨と決意の涙を流していたんですね。
「何事も飄々と風のようにこなす、湘北のオシャレ番長」と10代の頃の私に思われていたPGは、圧倒的な熱量を持って人間・宮城リョータとして令和の私の前に顕現しました。
亡き兄の「背番号・7番」と、「打倒・山王」の想いを背負った、新たな主人公の姿で。

もしかすると、私が過去に「飄々と風のように」感じていたリョーちんの側面は、実は風となったソーちゃんが常に弟のことをそばで見守ってくれていたから、なのかも知れないです。


天を仰ぐリョータ、その視線の先には…


まだまだ試合冒頭ですが、今回はブログを続けて7回目、#7.ということで、ソーちゃんとリョーちん兄弟のことを中心に触れました。
また今後も「細かすぎてポイント」を随所で語っていけたらと思います。

そして、なかなか本題に行きそうで行かないでご迷惑?をおかけしておりますが、どうやってスタッフになったか、という経緯にもまた少しずつ語っていければ幸いです。


#バスケ部 #THEFIRSTSLAMDUNK #SLAMDUNKMOVIE #最後まであきらめない男 #あきらめたらそこで試合終了ですよ

いつまで続くのか、どんな形で終われるのかまだ決めてはいないのですが、先日発表されたBlu-ray・DVDの円盤発売に向け、少しでも盛り上がっていければ良いかなあと思っています。2月に突入し、いよいよ発売まで1ヶ月を切りました!💽✨
リアルバスケ界でも、日本代表のFIBAアジアカップ2025の予選が始まります!有明コロシアムで開催される対グアム戦のチケットがGETできたので、観戦するのが今から楽しみです!🏀🇯🇵

ここまでご覧いただき有り難うございました。ご興味がありましたら、是非続きをお待ちいただければ幸いです。🏀🤜🤛🟥


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