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TBMを用いたIT予算と統制

こんにちは、平井です。
前回はTBMタクソノミーについて解説をしました。

今日は可視化の次に行うべきアクションである、「IT予算と統制」について解説していこうと思います。


はじめに

TBMの考え方では保守運用費の継続的な改善と、新規開発投資の最適化を最終的なゴールとして目指します。

今回の範囲

そのために可視化、IT予算と統制、コスト最適化、利用部門との関係性改善、といった4つのやるべきことが存在しています。
「IT予算と統制」の中にも3つの単元が存在し、それぞれ解説していきます。

  1. 予算策定

  2. 予算配賦

  3. 予実分析



1.予算策定

一般的にIT予算は、新規プロジェクト等の開発予算運用予算に分かれており、それぞれ申請と承認プロセスが走り、最終的に予算が策定されます。
予算策定段階では、「最適化された開発予算」「バッファのない運用予算」の実現を目指します。

この段階の課題としてはこのようなものがありますが、それぞれTBMによって解決が可能です。


・予算編成の際のバッファが大きすぎる

日本企業の多くは予算超過を恐れバッファを設けることにより、予算を余らせます。予算が大きく余ると次年度の予算獲得に影響が出るため、年度末に頑張って消化するケースも散見されます。
これを我々は新規投資の機会損失だと捉え、「高頻度かつ多軸による予実比較を実現する」ことにより解決を目指します。
TBMシステムを使用し高度化している欧米企業は、予実差異を1%‐3%まで抑えています。(日本企業は10%ほど予実差異がある場合が多いです)

・組織全体の予算編成方針に左右され、本当に必要な予算が組めない

「去年10億の予算だったから、今年も10億ね」少し乱暴ですが、このような予算の決め方をする企業が今でも多く存在しています。
TBMタクソノミー(https://note.com/asikaze/n/ne142b2fa9b53)によって可視化されたIT予算は、ビジネス部門、IT部門、ファイナンス部門のそれぞれが理解できる形で表現されます。これによって組織全体でIT予算について共通の理解を得ることができ、前年比ベースのみで予算を策定するのではなく、ニーズを反映したIT予算を策定することが可能になります。

・ITに関わる勘定科目が少なく内訳が不明瞭

ITを本業としない企業の場合、IT関連費用を「電算費」といった形でまとめてしまっている場合があります。
このようにITに関する管理会計の体系が未成熟であることに起因し、事業会社の多くが直面している課題です。
勘定科目を増やすとなると大掛かりになるため、TBMタクソノミーのコストプールを用いて分類していくことを推奨しています。IT部員でもわかりやすい言葉で分類がなされているため、早期にIT管理会計を整備することが可能です。

上記によって、「最適化された開発予算」「バッファのない運用予算」の実現を目指します。

2.予算配賦

配賦とは、確定したIT予算を社員数や売上高等の配賦ロジックに基づきそれぞれの利用部門へ割り振る行為のことを指します。

例を挙げると、
営業システムAは営業部のみ使用しているため、全て営業部に配賦します。
顧客管理システムBは営業、マーケ、CS部門が使用しているため、使用人数やトラフィック数、その他組織で決めた配賦ロジックに基づき、配賦を行います。

ここでは「配賦作業の効率化」「配賦ロジックの適切な管理」の2つを目指します。
ここでの課題と課題へのTBMのアプローチは下記の通りです。


配賦作業に労力がかかる

手作業で配賦を行う場合、確定したIT予算を担当者が振り分けていきます。大企業となるとアプリケーションの数は数千となり、それをスプレッドシート上で管理し、配賦ロジックを決め、配賦額を決定していきます。その配賦作業は属人化しており、担当者の不可は大きなものとなります。
TBMを実現するTBMシステムではこの作業を自動化します。
TBMタクソノミーによりサービスやアプリケーションごとに予算を振り分けて管理をし、適用する配賦ロジックを組み合わせ管理を行います。

配賦ロジックの可視化が難しい

配賦ロジック自体はマクロで行うことも可能です。
ただ、最も重要なことは利用部門への納得感のある説明です。
ITシステムは安いものではなく、大きな金額を利用部門=現場へ配賦・課金することにより、時には利用部門の利益を圧迫し、現場の担当者の賞与に影響する場合もあるため、配賦額の決定は影響度の極めて高い行為と言えます。
そのため、利用部門の長は必ず配賦額について納得ある説明を求めます。
TBMシステムは基本的に、この配賦ロジックについて利用部門が理解できる言語やビジュアルでの説明ができる機能を有しているため、利用部門とのコミュニケーションコストを下げ、かつ、関係性をより良くすることが可能になるのです。


3.予実分析

通常は編成された予算に対して、適切に消化されているかを確認するため、実績との比較分析を行います。
多くの日本のお客様は、年度末に予算を使い切るために支出をするケースが多いです。それでも10%ほど予算が余っている場合が多く、ITファイナンス高度化の余地が多分に存在すると考えております。
100億のIT予算がある場合、10%の余りで10億。予実の高度化ができていれば、その10億をより企業を発展させるための投資ができたはずです。

我々は、「高頻度(月次)の予実分析」「多軸での予実分析」によってこれらを解決し、日本企業のIT投資を高度化し、日本経済の発展を目指します。


実績データの収集と分析に膨大な時間がかかる

事前にTBMモデルを通してタクソノミーで管理する可視化の仕組みを構築した上で、TBMシステムとデータソースを連携することにより、自動で予実比較の可視化を行うことが可能になります。
これによって、月次、四半期、半期等高頻度で予実を分析することが可能となります。

持っている比較軸が少なく、有意義な分析が難しい

IT予算を策定しても、予算と実績の粒度が粗く有意義な分析が難しいケースをよく目にします。
例えば総勘定元帳では勘定科目とコストセンターの2軸で見ることができますが、それだけではアプリのインフラ使用料やサービス利用状況などを見ることはできません。
TBMでは総勘定元帳に加えて固定資産台帳、人件費データ、購買データ、IT利用率等様々なデータソースをTBMタクソノミーにて分類をし、マルチな軸を提供します。それにより各部門が見たい粒度で分析をすることが可能となります。

さいごに

今回は可視化IT予算と統制コスト最適化利用部門との関係性改善、といった4つのやるべきことのうち、2つ目の「IT予算と統制」について解説しました。
ご認識の通り、同様のボリュームでまだ2つやるべきことが残っています。
TBMの旅はまだまだ続きます。

・参考書籍